- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167849016
感想・レビュー・書評
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読み終わってからあらためて表紙を見て、この絵の意味がすとんと落ちてきた。
渦中の人は「まあこんなもの?」という感覚で日々の暮らしに追われているけれど、ズームアウトした世界では、実は大変なことが起きているのかもしれない。
知らず知らずのうちに、大きなうねりに巻き込まれていく怖さを感じる。
「だいじなことを、何も知らずに、わたしの日々は続いた。いつのまにか、わたしの毎日は、たいせつなことを追い越した。」
日々、仕事や家庭に追われて、あっという間に一週間が、一か月が、一年が過ぎていく。
でも、大事なことを見落としていないかどうか、ときどきちょっと立ち止まって確認してみたいものだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦前の人々の暮らしと町の様子、女中の生き方、人間の生き方など。
女中さんや、戦争の、例えば原爆や空襲とは違う恐ろしさなど、知らないことぼんやりとしか把握できてなかったことを知ることができた。
小説としても色々な読み方ができると思うので、タキちゃん以外の人の視点でも読んでみたいな。
映画も見たい。映画も見たくなる小説は久しぶり。 -
戦前、戦中と小さなお屋敷を女中として切り盛りしていたタキ。楽しかった東京での生活、大好きだった奥様、お坊ちゃんの事を老境に差し掛かった彼女は、噛みしめるように書き連ねる。タキの独白には在りし日の日本の風景がふんだんに描かれているが、ふんわりと楽しく、悲壮感や戦争に対する思いなども特になく、ひたすら女中としていかに美味しい料理を作るか、出入りの業者をなだめすかし食料を確保するかなどひたすらプロフェッショナル。一生この家にお使えしたいというタキの気持ちが溢れんばかりに感じられる。
その中で、書生さんのような男性と美しい奥様の恋にふと気づいてしまうタキ・・・
彼女の手記は完成せずに終わってしまった。タキは何を書き記そうとしたのだろうか。語られない秘密と、ずっと眠り続けていた手紙。小さいおうちという題名と表紙の絵。色々な事が繋がりあってとても味わい深い本です。
読み終わった時には釈然とせず、またパラパラ読んだり考え込んでいたりしたらば、意外なほど心に染み込んで来ました。
全部語り尽くして終わるのも悪くありませんが、語らないで手綱を引き締めて、尚且つ余韻を残すのは難しい。この本にはそれがあります。つまらないひとが形だけそれをすると、余韻ではなく単なる尻切れとんぼになってしまうから。 -
『小さいおうち』
中島 京子 文藝春秋
自分がこんなにもこの物語の中に没頭できるとは思いませんでした。14歳で山形の親元を離れ、女中奉公の為に上京したタキが、東京の山の手の暮らしと、赤い屋根の家に魅せられる気持ちが、自分には痛いほど良くわかる、と言ったら可笑しいでしょうか?美しい奥様への憧れも。
この作家さんの『妻が椎茸だったころ』を以前読んで、不思議な魅力の「偏愛」短編集としてこちらにも投稿した事が有ります。が、この『小さいおうち』は、「愛着」の容(かたち)をこれ以上無いぐらいに私の前に映し出してくれました。眼をつぶると浮かぶ幾つもの思い出の情景。ここが自分の居場所だ、と感じる場所。戦争を挟んで激動の昭和の日本が舞台で有りながら、読んでいると、まるで大正時代のモダンで楽しく美しい暮らしが変わらずそこにある様な気がしてならないのは、自分の「愛着」がタキと、タキから見た奥様に重なるからかも知れません。読み終わって、深い満足のため息が出るお話でした。 -
第143回直木賞受賞作。
まず装丁が素敵。
古き良き時代の美しい人とその家族のことを、「お手伝いさん、家政婦」というと怒る、「女中奉公」のタキさんが物語る。
よい女中なくしてよい家庭はない。
当時のお料理の語りが興味深い。
まあみんにおすすめw
ラストの手紙とタキさんの涙の謎が私には解けず。
再読時に私なりの答えが解せるといいな。 -
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「映画も気になりマス!」
私も、、、でも観に行けずDVD化待ちです。
最初、バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」が好き過ぎて、...「映画も気になりマス!」
私も、、、でも観に行けずDVD化待ちです。
最初、バージニア・リー・バートンの「ちいさいおうち」が好き過ぎて、「う~ん」と思っていたら、、、、2014/04/07 -
nyancomaruさん。
私も結局観にいっておりません。。
でも、昭和レトロにハマってソレっぽい喫茶店行ったりして気分を盛り上げており...nyancomaruさん。
私も結局観にいっておりません。。
でも、昭和レトロにハマってソレっぽい喫茶店行ったりして気分を盛り上げておりました。笑。
松たか子さん、似合いそうですよね~。2014/04/20
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映画の予告を見て、面白そう、映画で見る前に原作を
と、手にとったこの本。
これ、とても好き。
世の中の流れと、日常と、
どことなく隔離されたこの感じ、なんだかよくわかる。
戦争が絡んでくるのでどうなるんだろう?と思いながらの
最終章、入り口で、ん?
さらに読み進めて気づく入れ子方式。
この時代のこういうことを
自分と直接関わった人から聞くということが
もう今後はどんどんできなくなるんだよな、と
最近よく思う。
それはとても大きな喪失だ。 -
読んでいる最中、この作者は戦争の時の日本の姿の他に何が伝えたいのか、どうして直木賞なのかと考え続けた
それくらい山はない
だけど、最後でやっとわかった
文章だけでないビィジュアルもキーだった
ちょいホロリ。 -
143回 2010年(平成22)上直木賞受賞作。昭和初期のお手伝いさんの物語。東京郊外の赤い三角屋根の洋館に住む若奥様とお手伝いさんは姉妹のように仲がよく暮らしていた。しかし日本は戦争の色が濃くなり、家族にも影がおちてくる。まるで実在したかのような主人公の語り口が心地よい。おすすめ。若くて魅力的でかしこいお手伝いさんといえば『家族八景』の七瀬を思い出した。