- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167849016
感想・レビュー・書評
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思い出話で終わらんのがこの本のすごさやなと思った。タキ目線おもしろくてスイスイ読んでたら、健史目線でフイって違うもの見せられる感じ。ただじゃ終わらん構成。よかった。
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mac.dancoさんBSプレミアム鑑賞BSプレミアム鑑賞2021/03/26
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面白かった。映画を先に観たのでちょっと引きずられてしまったけど、原作の方が深い。映画の美しさはそれはそれで良いのだけれど。
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久々に直木賞受賞作を読む。非常に面白かった。文章も分かり易く、無駄なくユーモアがある。“原稿を燃やした女中”のエピソードが主筋のモチーフとして効果的に用いられ、多くの仕掛もスマートに最終章で収束されており上手に書かれた小説だと思う。時子とタキの主従関係もよかったし、各脇役が生き生きと人間らしく創られていた。昭和10年代から敗戦迄うまく描かれその世相が反映されているが、よく資料を調査したことと当時を生きた谷崎、太宰等文豪の著作からの影響が垣間見られる。
特にだが、石井桃子先生の自叙伝的小説『幻の赤い実』の影響が大きいと感じる。時子と睦子の関係は石井先生と同じ出版社で働いた親友がイメージされる。そもそもこの作品が、作:バートン 訳:石井桃子 のオマージュであり、石井先生の没年(2008)に連載が始まっていることからも執筆のきっかけになったのだと思う。コアな感想だが “ビフテキをバターで焼く”など無作為な単語のイメージで繋がっていたのも興味深かった。
手紙の扱いと手記に関して “?” となる読者もいると思うが、タキが老婦人にありがちな“信頼できない語り手”ということだろう。その視点で最後に作品全体を見直すという意味でもよくできた演出だと思う。 -
太平洋戦争の前夜から物語が始まる。女中として裕福な家に住み込みで働いていた女性が、晩年になって昔を振りかえってノートに書きつけてゆく形式。なんでもないような日常生活の描写が続く。戦争に巻き込まれながらもそれほど劇的なことが起きるわけでもなく、淡々と物語は進むのだが、それでも最後にはじんわりとした感傷が沸き起こってくるようなストーリー。
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タキさん本人の手記ではないかと思うくらい、戦前の暮らしをリアルに感じた気がします。
作者さんの筆力がすごいのでしょう。
淡々と日常を描写しながら、当時の暮らしや、その暮らしの中で戦争が始まって変化していく人々の暮らしと気持ち。当時を「歴史」として見てしまう現代人にはわからない気持ちかと。
作中の事件より、戦前の、ちょっといいお家の暮らしぶりに心奪われました。 -
おばあさんが戦前から戦時中にかけて女中をしていた体験を綴っていく話。その頃の時代の感じが知れた。最後に全てがつながって面白かった。久しぶりに出会えた良い本。
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なんとなく後回しにしてしまっていたけれど、読んで大正解。唸らせる直木賞作品。単なる女中さんの回想録に留まっていないところが素晴らしい。まさあんな展開で結末を迎えるとは。昭和初期の市井の生活がよく分かるのもさることながら、世間がだんだん戦争へ向かって行くときの国民の昂揚感がよく伝わる。過去から眺めれば地獄の始まりなのかもしれないが、当時はやはり「もっと良くなる」かもしれないという希望はあったろう。そういう時代。時々挟まる甥っ子の指摘、それは後の歴史観。そのずれをきちんと盛り込んでいるのが秀逸。映画必見だな。
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第143回直木賞受賞作品、知り合いが「とてもいいよ」というので遅ればせながら手に取りました。
時代は昭和初期、主人公少女タキの女中奉公先で起きた様々な出来事を綴った作品。
人を思う気持ちの強さ、戦争の悲惨さ、亡くなった人の無念さ、思いを知った若者の行動、何十年も経って甦る記憶等々、作品の中にはたくさんの生きざまがあり、いろいろと思い考えされられました。
同じパターンで構成する展開かと思ったら、突然の変化に驚きながらクライマックス。文章に込められた鼓動やリズムが、ぐっと胸に迫ってくる感じがすごくよかったです。装丁も可愛く、ふと手に取ってみたくなる感じです。
原作は、山田洋次監督によって映画化もされていました(恥ずかしながら知りませんでした)。今度、じっくり観たいと思います。
ぜひ多くの方に読んでほしい作品ですね。 -
映画観たい。
赤屋根の小さなおうちが観たい。
映画観たら、少しはこのモヤモヤ
消化されるかなぁ‥。
タキさんの涙、
タキさんの家族、
タキさんの愛したひと‥、
なんとなく、
そっちかなぁぁ‥と思った。
ワタシも。
2017.05