- Amazon.co.jp ・本 (579ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167900021
作品紹介・あらすじ
震災後の日本を描く異色の政治ドラマ震災後の日本の命運を、原発輸出という“禁じ手”に託したカリスマ総理・宮藤。だが独裁色を強める政権の闇にメディアが迫っていく。
感想・レビュー・書評
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挫けたまま立ち上がれないでいる震災後の日本で、巧みな弁舌を駆使し国民の心を捉え、総理に登り詰めた登り詰めた宮藤隼人。
彼の政治信条に共感し、側近として支える白石望。
白石と同期で、政治の闇を追いかける新聞記者の神林裕太。
この3人を中心に、内閣官房長官、総理主席秘書官、事務秘書官、さらに敏腕記者等により、それぞれの思惑を秘めた虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。
題名の「コラプティオ」とは、どういう意味か不明のまま読み続けたが、ラテン語で「汚職・腐敗」を意味すると巻末で明かされる。
原発産業による日本復興という大事業を計画する宮藤総理。日本フェニックス計画と銘打った政策は、震災で落ち込んだ日本人に希望を持たせる。
しかし、ウラン鉱脈が見つかった国の軍事クーデターへの関与が疑われたあたりから、カリスマ総理の暴走が始まる。独裁者として変容していく総理の暴走を、誰が止めることが出来るのか。
権謀術数が渦巻く政治の世界を、スリリングに描き出した政治小説エンターテイメントの手に汗握る展開は、頁を繰るのももどかしく、読みふけるばかり。
「多くの場合、権力を行使する者は、その目的が正しいと思い込んでいる。さらに、正しい目的のためなら、多少プロセスに問題があっても許されると考えてしまう。しかし世界の歴史を振り返ると明らかなように、ほとんどの不幸は、それが正しいと思い込んだ人びとによって引き起こされている。権力者が権力を行使する快感に溺れ、正しいことを行っているという満足感に溺れ、人びとは不幸に巻き込まれていく」
著者が綴るこの言葉は、現在のロシアによるウクライナ侵略に、見事当てはまるではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
震災による原発事故により低迷する日本経済。再び強い日本を取り戻す為、首相の宮藤は破産寸前の原発メーカーに公的資金を投入し政府主導での再建を進めようとする。その背景には、日本の技術力の象徴としての原発を中国、アメリカに販売すること。受注をめぐり必要となるアフリカでのウランの利権をめぐり腐敗に手を染めていく。。。。
苦学しながら東大に入学し首相秘書官になった正義感の溢れる青年白石。その同級生で新聞記者になった神林の二人の目線からストーリーは展開される。正義とは何か、真実とは、必要悪とはを主人公の心境描写を通して何度も問われる作品だ。 -
東日本大地震、並びに福島第一原発事故後の停滞感漂う日本に現れたカリスマ的総理大臣である宮藤隼人、その総理を官邸スタッフとして支える白石、総理の闇に迫る記者神林、それぞれの視点から物語が展開していきます
宮藤総理は、あえて原発を日本経済復興のシンボルとして掲げ邁進し、巧みな演説で国民の心を掴んでいきます。しかし、成果を出したい焦りから、独裁色を濃くしていきながら、よろしくない方向に…
官邸スタッフの助言も聞かなくたり、まさにプーチンが頭に浮かびました
日本でも独裁者が現れないとは限らないですよ、と思わせるような内容で考えさせられました
官邸内部や外交、官僚との攻防はなかなかイメージありませんでしたが、リアルで面白かったです
新聞記者のネタ取り、裏取りの過酷さ、ジャーナリズムの大切さ、重要さも身に染みました。
現状のウクライナ侵攻において、プーチンが必死にロシア国内の報道規制を張る行動も頷けました。 -
友人に勧められた一冊。
真山作品はこれが初かな?
面白かったです。
震災復興を機にカリスマ的人気を集める総理大臣・宮藤。
物語は宮藤を支える側近の白石と新聞記者の神林、二人の視線で描かれています。
アフリカの途上国で起きたジェノサイドを伝える小さな記事からすべてが始まり、二人は政権の闇の部分を知ることになるー。
別の作家さんで私がとても好きな作品があるのですが
それもカリスマ的人気政治家が独裁者に変わる危うさ、流れに任せるのではなく「考える」ことの重要性を描いていたので私はこういったテーマが好きなのかもしれません。
ただし薄っぺらい内容になることは許されないテーマゆえ、作家さんの力量が問われると思います。
その点、この作品は最後まで読み応えのあるもので大変面白かったです。
また、権力欲について書かれた巻末の解説もとても興味深く、改めて考えることの重要性を痛感しました。
2017年13冊目。 -
最後前まで飽きずに読めた。
でも結末の描き方が少し薄い気がした。 -
出版年を見てから買ったので、「東日本大震災後に書かれた、現代日本の本だな」と思って読んだら、なんとその前からの連載だったとのこと。さすがは真山さん、先見眼が鋭すぎていらっしゃる、、、
統率力のあるリーダーに、人間はついつい流されるようについていってしまうけれど、本当にそれは自分の意思なのか?と問うことの大切さ、そしてそのリーダーは、権力を手にしたことによって、当初の目標をおざなりにして、自らの私利私欲に走ってしまってはいないか?と冷静に見つめることの大切さがひしひしと伝わってきた。
メディアの発信力も相まって、とても読み応えのある作品。 -
カリスマ総理と言われる総理大臣に仕える官邸秘書官が活躍する話。
アフリカの国のウランを採掘する権利、原発事故、大手電機メーカーの国有化など、色々とリアルさを感じさせながらドキドキしながら楽しめました。
一方で、新聞記者のタイヘンさも垣間見ることができ、秘書官ともどもたいへんな仕事だと感じました。