その女アレックス (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (457ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167901967

感想・レビュー・書評

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  • 悲しみのイレーヌを先に読んだことによって、この作品の造詣がより深く詳細に見ることが出来た。文句なしに星5つの価値があると思う。

    一部、二部、三部の構成で、その都度、アレックスという女性に対する読者の感情が激変する。これだけ主人公格に対する思いれがくるくる変わる作品はそうそうない。筆者の巧妙なプロットのなせる業だ。

    そしてなによりも、凄惨な殺人事件の背景においても、ちゃんと人の血の流れた温かみがあるという事だ。それに尽きる。ミステリーとしても至高の出来だが、ラストの、刑事たちの思いがなによりも胸を打った。

    ただ、悲しみのイレーヌを読まずに本書をを手に取ると、カミーユ刑事がただのおっさんにしか見えないかも。そうなると魅力半分になってしまうか。

  • 第1部、第2部、第3部と話の展開が大きく変わり驚かされる。
    訳者の人が上手いのか、翻訳物にありがちな読みにくさというのも感じられない。

    第3部は取調べがメインで動きが少ないので、それまでに比べると少し退屈。
    「真実よりも正義」という結論は日本ではあまり見られない気がした。

  • ちょっと前、非常に評判が高くて、なおかつ店頭の帯でも気になっていた。いわゆる「衝撃のラスト」系だと思って読み始めてしまったので、ストーリーとしてはちょっと拍子抜け。もちろん、話の校正やストーリー、描き方はすごい楽しめました。

    とはいえ、シリーズものだったらしく、ちゃんと前作から読まなかったのは反省点です。

  • 拷問を受けているところでの「なぜわたしなの」っていうアレックスのシンプルな問が読後見返すと違った意味で深まった。一応物語としてはスッキリと終わる?しアレックスもそれを望んでたんやろうけど、そんなやり方でしかもがけなかったアレックスを思うとつらい

  • ヴェルーヴェン警部シリーズ第2作
    誘拐された女は被害者なのか加害者なのか。
    反転する立場に何度も驚かされる。
    壮絶な人生を歩むアレックスを待ってる結末は残酷なものだったけど、彼女の意思を汲み取った結末には賛否があって当然なのかもしれない。
    ルイがかっこいいなぁ。

  • お前が死ぬのを見たいー男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。

    ミステリ好きな方の勧めから手にとった作品で、本屋さんでも大きく紹介されていたそうですね。海外の作品は文化の違いからなのか、物語がすんなり入ってこないので、敬遠しがちなのですが、知人からの勧めだったので読んでみました。

    物語は二つの視点から進んでいきます。

    一つは誘拐されたアレックスの視点。
    もう一つは彼女を探すカミーユ警部の視点。

    「拉致される女を見た」という男の通報から警察の捜査が始まるのですが、まずその女が何者なのか分からない。それでも色々な情報から容疑者を探っていくわけです。そうして追いかけていくと、彼女の素性というものが読者にも気になってきます。あまり書くとネタバレになってしまうので控えますが、誘拐された後に救出されてハッピーエンドではなく、ある計画を実行していくんですね。

    その結末は読んでいただくしかありません。

    本作品は、イギリス推理作家協会賞を受賞しているそうで、日本でもミステリとして評価されているようです。私もその煽りもあって読んでみたのですが、どちらかというと捜査小説というか犯罪小説であって、推理小説ではないかなと思います。

    確かにアレックスの行動は不可解で、その疑問はラストに解けるのですが、伏線を拾っていって問題を推理できるというものでもなく、登場人物たちのやり取りや心情の変化を読んでいくもの、なんですね。

    ですので、推理小説ー特にトリック云々という作品を読みたいと思っている方にはお勧めしません。普通の、というのもおかしな話ですけど、人物の心情を捉えた犯罪小説を読みたい、という方にはお勧めです。少しグロテスクな描写があるので、そこは注意。

    最後に疑問に思った点だけ追記。

    男の通報から誘拐事件として始まるんですが、警察というのはそれだけで動くものなんですかね?身代金の要求があったとか、死体として発見されたとか、あくまで事後に動くものじゃないかと思うんですけど。フランスは違うのかな?

    夜、誰も知らない女性が無理やり(に見える)車に乗せられて走って行った、というのは確かに事件性を感じるかもしれません。

    でも、通報した男にしたってその女性とは面識がないわけですし、なんだか不思議だなあと感じました。

  • 【感情が二転三転するし、最後まで気が抜けない】

    面白かった!
    何年か前の本屋大賞・翻訳小説部門で1位をとり、気になっていた本です。

    物語は美人のアレックスが誘拐されるところから始まります。

    誘拐されたアレックスを助けるためカミーユをはじめ多くの警官が捜索にあたりますが、その事件を追いかけるうちに…。

    ネタバレしたくないので、あまりあらすじは書きませんが、事件の真相が少しずつ明らかになるにつれてアレックスに同情したり、恐怖を感じたり。感情が二転三転して、なかなかこういう本って無いんじゃないかなと思いました。

    ひょっとしたら事件の収束の仕方に賛否両論あるかもしれませんが、私は良かったと思いました。

    あとがきを読んでみると、カミーユが出てくるシリーズは『その女、アレックス』以外に3作出ているらしいのでぜひ読みたい!翻訳されてないのかしら。

    まだなら、とても読みやすかったので、同じ人に翻訳してもらいたい。

    映画化の話も出ているらしいので、それも楽しみです。

  • 導入部はアレックスお気に入りのヘアウィッグ店の話等。ミステリーには珍しい親しみやすさで入っていける。そして文学、絵画の話がさらっと出てくる。ここら辺はフレンチミステリーらしさなのだろうか?
    小柄な刑事カミーユはロートレックとユトリロを混ぜたようなキャラクターを想像した。
    アレックスがどうなるのか知りたくて読んでいたら、途中からアレックスという女性の正体に対する興味に切り替わり、ぐいぐいと読んでいける。
    明らかにされた事実はかなり陰惨。
    誰一人救えなかった警察は余り有能な感じではないが、実際はこんな感じだと思う。
    本筋とはあまり関係はないが、カミーユの母の自画像を誰が落札したか早々に気が付いた。

  • 最後まで展開が読めませんでした。面白かったです。特にアレックス(表題にもなっているこの物語の最重要人物)に対する見方は、こちらの予想を何度も覆すかの様に変容していきます。トリックや謎解きではなく、人物ありきのミステリーといった感じです。
    作中、しばしば凄惨な場面が出てきますが、それを緩和するかの様に所々で作者のユーモアが光り、重苦しい気分になることなく読み終えることが出来ました。

  • ある晩、パリの路上で若い女が誘拐された。
    通報を受けた警察が捜査に乗り出すが、追い詰められた犯人は自殺してしまう。ようやく監禁場所を探し当て向かうが、女は自力で脱出した後だった。
    その後女の身元が分からないまま捜査を続けていたのだが、事件は意外な展開を見せる。

    初めに描かれる誘拐事件で、被害者『アレックス』へのひどい仕打ちに犯人への強い怒りを覚え、早く助けてほしいと願いたくなる。だがこれは、物語の序章に過ぎなかった。
    その後アレックスは、被害者から猟奇的連続殺人犯へとの姿を見せる。なぜアレックスは、次々と惨たらしい方法で男を殺していくのか?やがて彼女の素顔が晒されたとき、さらなる惨劇を見せつけられる。
    あまりに凄惨な暴力のの連続に、読み手側も心身が痛みを感じるほど。激しい憎悪と痛み、そして悲しみ…アレックスが何を想っていたのかは、その素性のように掴みきれないが、すべてはこのセリフで締められるのだろう。「われわれにとって大事なのは、真実ではなく正義です」

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