あしたの君へ (文春文庫 ゆ 13-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167913779

感想・レビュー・書評

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  • 家庭裁判所の調査官というお仕事。知らなかったけれど、めちゃめちゃ大変。
    本当の気持ちを話してくれない人や、事実を隠してる人、自分でもどうしたいのかわからない子供等、短編だから、割りとあっさり解決してたけど、実際はもっと色んな苦悩があるんだろうなぁという感想。

  • 家庭裁判所調査官補
    耳慣れない職業。読んで字の如く、家庭裁判所で扱われる物事を調査するお仕事になるようだ。

    主人公が少年犯罪や離婚調停の背景について調査する。
    窃盗などに手を染めた少年の背景に何があるのか。
    親権を争われる子の気持ちはどうなのか。
    どのケースも一筋縄ではいかない。
    よくある多数例と同じケースでも、背後をきちんと調べると意外な事実が浮かんでくることもある。
    主人公は、迷いながらもそれぞれのケースに真摯に対峙していく。自分はこの仕事に向いていないのでは…?と思うことも。
    もしかしたらその疑いがあるからこそ、丹念に、公平に物事に向き合えているのではないかと感じた。

    犯罪ではない事件にも、関わる人たちの心にはさまざまの葛藤がある。
    そんなことを丹念に拾い上げた作品だと思った。

  • 小説や映画の中では絶対的な正義が存在し、多くは物事を解決に導いてくれるが、現実世界では使命感だとか正義感という真っ直ぐな志が日常に埋もれてしまいがちだ。
    こんな世の中であってほしい、こんな人達がいてほしいと願いながらいつも読み進めている。

    家裁調査官とは、
    一人の人生に深く関わり、明日からの生活を左右する選択をしなければならないという責任がある仕事。
    その為には判断を誤る事は許されない。
    何を感じ、何を求めているのか、救いは何処にあるのか。
    多角的に物事を見定める必要があり、悩んで悩んで苦しんで、上辺だけでは到底分かりようのない本音に寄り添う。

    一人一人のケースをもっと掘り下げてじっくり読みたいものばかりだった。

  • おもしろかった!
    どなたかの本棚にあって、おもしろそうだと思っていたのですが、期待通りでした
    研修中の大地くんが、力のなさに悩みながらもその時々の担当した方たちに向き合う姿がよかったです
    最後にどんでん返しのようなこともあって、ちょっぴりミステリー要素も感じられ、推理しながら読みました

  • 家庭裁判所調査官の見習い、家裁調査官補の話。家裁調査官補の活躍から明らかになるヒューマンドラマ。見習いさんが活躍しすぎという気はしますが、こういう仕事もあるんだと勉強になりました。さすが柚月さん、読みやすかったです。

  • 柚月裕子の小説、2016年に単行本、2019年11月文庫本。
    家庭裁判所調査官補の望月大地23才が主人公。九州の家庭裁判所で2年間の研修中に担当する少年事件、家事事件を通して成長していく様が描かれた物語。
    17才の少女の窃盗事件、16才の少年のストーカー事件、大地の中学の同級生で23才の女性の離婚問題、35才の女性の夫からのモラハラ離婚案件、 10才の男児の両親の複雑な事情の離婚案件。以上の5話からなる物語で、いづれもまだ未熟な大地が5つの案件を通してもがき、調査し、考え、そして真実を探して家裁調査官として成長していく。
    今までの柚月裕子の小説の主人公と違って、この小説の主人公大地は未熟で頼りないところがあるが、周りに助けられながら真実を追求していく。きっと何年かのちには素晴らしい家裁調査官になるだろうと予感させられる。シリーズ化されて続編が近日中に出ることを期待する。

  • 検事シリーズに次ぐ著者の代名詞になりそうな予感のする本作。新人家庭裁判所調査官補の成長記録の短編連作。主人公のダメダメな設定は、今後、続編があることを期待させる。長期に亘って見守っていきたい。彼の成長記録を...。著者流の支援者としてのあるべき姿の提示本といったところか。理沙との今後の展開を勝手に夢想し、続編を頭の中で書いているのが楽しい。

  • 若手職員の奮闘ぶりがフレッシュで微笑ましいストーリー。自分の若手時代はどんな感じだったのか、今となっては思い出せないくらい年月が経ってしまったことに唖然となる。

  • 家庭裁判所調査官補として研修の間、九州の福森地裁に配属された望月大地。一筋縄ではいかない少年事件や離婚調停などの案件を通して、彼は一人前の家裁調査官になれるのか?!

    望月が配属されてから研修期間終了までに担当する内の、五つの案件が描かれる連作短編集。重いテーマを軽やかに描いていて読みやすい。家裁の調査官という仕事は初めて知った。人生を左右する岐路に立ち会う仕事。自分だったらどういう見方をするだろうと読後に考えさせられる。

    解説は実際に家庭裁判所調査官として働かれている益田さんが書かれている。仕事の上で「曖昧さに耐えること」を大切にしているという話はとても勉強になった。割り切れないものまで割り切って解決しようとせず、一緒に悩み抜く。曖昧な状況に耐え続ける覚悟は人生においても大事だなと感じた。

    第一話『背負う者(十七歳 友里)』
    望月が家裁調査官補として初めて担当した少女・友里(ゆり)。警察では遊ぶお金欲しさに盗んだと言ったものの、家裁での面接では何も答える様子がなかった。同居する妹・杏奈に話を聞こうと向かった住所にあったのは、思いも寄らないもので──。

    登場人物がみんなやさしいからこそ、袋小路へと追い詰められてしまうのが悲しかった。「人様に迷惑をかけないように」という言葉が背中に重くのしかかる。これは正しいように見えて、人に頼れなくする呪いの言葉でもある。迷惑をかけるなと言えば問題が解決するわけじゃない。人や社会資源を頼ることは迷惑ではないし、どういう方法があるのかを伝える事こそ、迷惑を解決するために必要なことなんだよね。

    第二話『抱かれる者(十六歳 潤)』
    ストーカー事案で家裁へ送られてきた高校生・星野潤。彼は友里とはうって変わって面接では礼儀正しく、反省の言葉を述べていた。その一方で、母・良子(よしこ)は被害者に謝罪へ行った際、なぜ息子を嫌いになったのかと相手に詰問していて──。

    潤の行動に加えて、別れた相手の親がその理由を訊くために詰め寄ってくるとか恐怖でしかない。そういうとこだぞ!としか言えないよね…。
    「完璧主義の裏にあるものは、自己批判と劣等感」
    望月の同期・美由紀の鋭い洞察力が発揮される。人間は完璧な生き物じゃない。完璧を目指すことは悪ではないけれど、行き過ぎれば自己肯定感を失い、間違えないことにだけ神経を尖らせることになる。そこに他人への思いやりが入るスペースはない。誰もがどこか欠けているからこそ、感謝し合えるとも言えるのではないだろうか。

    第三話『縋る者(二十三歳 理沙)』
    年末年始に静岡へ帰省した望月。家族や友人たちと久し振りの再会を果たす。家裁調査官の仕事へ自信を失いかけていた望月が、初恋の人・理沙との会話で気づいたものは──。

    家裁調査官と関わったことで人生を踏み出す勇気を得た人もいる。当事者が最も悩み、助けを求めてもがいている。望月も家裁調査官として悩みながら仕事をしていくだろう。でも、悩むことのつらさを知っているからこそ寄り添えるし、助けようと真剣に思っている証でもあるのかなと。家裁調査官が理沙を救い、その理沙の言葉が望月を救うという循環が素敵だった。

    第四話『責める者(三十五歳 可南子)』
    望月は少年事件から家事事件担当へ移って、新たな実務の修習に取り組み始める。最初の案件は離婚調停。申立書上では朝井夫婦の関係性はそこまで悪くないように見えた。しかし、妻の可南子には頑なに離婚したい理由があるようで──。

    夫婦間には目には見えない問題も、口には出せない問題もある。ただ、行動のどこかにはその理由が表れている。家という密室で何があったのか。理解したと満足せずに、耳を澄ませること。大声にかき消される小さき声。見えているところだけで判断してしまいがちだけど、他人の生活なんてほとんど目に見えないところで行われているんだよね。

    第五話『迷う者(十歳 悠真)』
    望月が担当することになった新たな案件。それは親権を争う離婚調停だった。夫婦ともに絶対に親権を譲らないと主張する。子どもへの愛情は確かなようではあるが、10歳の悠真自身は答えを出せていないようで──。

    望月の同期・志水との会話が熱かった。子どもを子ども扱いすることは、相手を馬鹿にすることと同じなのだ。生活を共にする子どもだからこそ、両親の関係性を敏感に感じ取る。ただ、それをどう表現すればいいかわからないだけかもしれない。志水が言い残した「彼のこと、頼むよ」という一言が切実で胸に突き刺さる。悠真から問われる「親って何?」という言葉も痛切だった。

  • 柚月裕子さんの小説って事だけで買った一冊。

    家庭裁判所調査官補の話

    見習いの主人公が担当した事案を通して家庭裁判所調査官として成長していく内容だった

    主人公が特別頭の切れたり、できる人物でなく、一般的な何処にでもいる様な人物なのがよかった。

    上司や同僚、友人などの意見や助言励ましの言葉を素直に受け入れて事案に向かう姿は主人公に好感が持てた。

    それぞれの事案もいろいろな助言があり、それを受け入れていい方向に向かったんだと思う。

    家庭裁判所調査官って仕事の事は初めて聞いた。

    ちゃんと相手の事を観察しないと本当の事がわからない大変な仕事だ
    相手のこれからの人生にも関わってくるし

    この小説がシリーズ物なら主人公のこれからの成長も読んでみたいなと思った小説でした。

    どうもシリーズ物ではないみたい

    • naonaonao16gさん
      ゴンさん、こんばんは!

      わたし以前、目指してたんです、家庭裁判所調査官!
      全国転勤は不安だったけど、研修所でしっかり研修を受けられるってい...
      ゴンさん、こんばんは!

      わたし以前、目指してたんです、家庭裁判所調査官!
      全国転勤は不安だったけど、研修所でしっかり研修を受けられるっていうので安心してできる仕事かなー、なんて思って、必死で勉強して筆記は受かったのですが、面接は惨敗…
      浪人も考えましたが、結局モチベーションを維持できませんでした…
      今思うと、自分にはハードル高すぎる職業で、あの時落ちてよかったと思うくらい!

      わたしの好きな作家さん、伊坂幸太郎さんの『チルドレン』に、ユニークな家裁調査官が出てくるので、よかったら読んでみてください^^
      2023/03/10
    • ゴンさん
      nannaonao16gさん
      コメントありがとうございます。

      家庭裁判所調査官めざしてたんですね。

      やっぱり難しい職業なんですね
      この小...
      nannaonao16gさん
      コメントありがとうございます。

      家庭裁判所調査官めざしてたんですね。

      やっぱり難しい職業なんですね
      この小説読むと公務員になれるなら簡単になれるのかなと失礼なんですが思ってました。

      人の人生に関わることはどんな事でもプレッシャーかかるし、これでいいのか悩む事だから難しいですね。

      紹介の小説「チルドレン」読んでました。
      家庭裁判所調査官の職業初めて聞いたとか書いていましたが一度聞いてました。

      多分架空の職業とかと思いすぐ忘れたのんだと思います。

      チルドレンに連なる作品のサブマリンも買いました。
      しっかり読んでみます

      小説の紹介ありがとうございました。
      2023/03/10
    • naonaonao16gさん
      ゴンさん

      こんばんは!
      ご返信ありがとうございます^^

      そうですね、公務員とはいえ国家公務員で、内容もなかなかに難しかったです…

      今は...
      ゴンさん

      こんばんは!
      ご返信ありがとうございます^^

      そうですね、公務員とはいえ国家公務員で、内容もなかなかに難しかったです…

      今は別の立場で、他人の人生に大きく関わる仕事をしていますが、それなりに楽しくやっています。
      もし家庭裁判所調査官として働いていたら、関わることはない人たちだと思いますが、満足しています。

      チルドレン、サブマリンとお読みでしたか!
      あれ、もっと続編ほしいですよね!!
      またレビュー楽しみにしています^^
      ありがとうございました!
      2023/03/11
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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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