- Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167914554
感想・レビュー・書評
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江戸もの+老人介護という新しい視点も面白いし、その介護への著者の眼差しがとても深い。現代的なテーマでありつつ、舞台を江戸にすることで、読者に素直に介護のテーマに向き合わせる。著者が主張するように、誰も追い詰めない、風通しの良い介護を皆で考えたいもの。
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介護のことなんかがサラッと書かれているけど、じっくり読むとなるほどーということも多くて楽しめた。母親との確執もそれほどきわどくなくて読みやすい。
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2022.8.3読了
嫁ぎ先を離縁されたお咲は、借金を返すため、介抱人という仕事に就く。
最初はちょっと暗い感じだなと、思っていたのですが、中盤から印象がどんどん変わっていきます。
お咲さんが介抱しているいとだけでなく、周りの人々を巻き込んで、話が次々と展開していくので、ページを捲る手が止まりません -
母が婚家にした借金を咎められ、離縁されたお咲。
介抱人として働くことになる。
丁寧な仕事ぶりが認められ、差配する口入屋の鳩屋主夫妻にも一目置かれるようになる。
介抱した老人たちは、みなそれぞれの過去を思わせる、一癖ありそうな人物ばかり。
どうやって人間関係を作って、介抱させてもらえるか。
そこが一つの読みどころでもある。
しかし、このお話には、もう一つの筋がある。
母親との相克だ。
母の佐和は器量自慢で、長年妾奉公をしてきた。
お咲は幼時から養い親の下で育ち、たまに来る佐和に抱かれた思い出もない。
離縁された後、母と二人暮らしをはじめるが、派手で金遣いも荒く、家事を一切しない母にイライラを募らせる。
お咲がどんなに疲れて帰ってきても、ねぎらいの一言もない。
おまけに、新しい恋人を作り、祝言を上げようという。
この二人の関係がどう変わっていくのかも、もう一つの関心の焦点になる。
母子関係の難しさは、現代の小説にそのまま置き換えても通用しそうな気がする。
最終的には良い方向へ向かっていくが、読んでいてつらい場面もある。
ただし、全体としてはユーモアも感じられる作品だったことも書き添えておく。
積年の姉妹間の恨みを、老境に至ってぶつけ合う、元奥女中のお松と、その妹のお梅。
相手の攻撃を、狸寝入りでかわす、年輪を重ねた人でないとできない「技」を繰り出す。
商売に抜かりがないお徳と、その尻に敷かれっぱなしの亭主五郎蔵夫婦のやりとり。
軽妙な場面もそれなりにあり、深刻になりすぎずにすむ。
時代小説なので、孝の思想や、跡取り息子が介護するという、江戸時代特有の設定はある。
しかし、描かれている問題のおおよそは、まったく現代の私たちに置き換えられる。
介護が、介護を担う若い家族の人生を食いつぶすこと。
介護には、その家庭の問題が集約的に表れてしまうこと。
介護を受ける人が、家族であれ、外部の人であれ、相手を受け入れられるかということ。
ぽっくり死を称揚するあまり、ほかの死に方を忌避するような風潮ができてしまうこと。
こんな、新聞や論文で読んだような内容が、物語として形象化されている。
しあわせな往生を遂げる、おきんが登場するのは救いだ。
お咲親子の近所の菊作りの職人、庄助の母親だ。
お咲がかつて介抱した干鰯問屋の隠居、おぶんが「道楽」として、おきんの介抱を引き受ける。
最初第三者の介入を拒んだ庄助も、やがて人間らしさを取り戻していく。
やがて、おきんはゆっくりと、枯れるように最後の時を迎えたが、庄助もその最期に納得し、穏やかに母を見送ることができたのだ。
介護がエンタメ小説になるとは。
まったく驚きの一冊だった。 -
江戸時代の老人介護の様子が、生き生きと描かれいて、面白かったです。
いつの時代も、お金なんだなぁー。
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長寿の街、江戸で介抱人をつとめる咲の話。
良くも悪くも、すっきり解決とはいかない、それが人間。
という感じの連作だった。 -
「介抱人」として身も心も削りながら働く主人公のお咲。
心底ウンザリする、だらしのない母親との暮らしを支えるために誠心誠意、老人たちのために尽くす
江戸の人たちの人情たっぷりの作品。 -
江戸時代の介護のお話。当時は長男が親の世話を最後までみるから家督を譲られるということを知った。お金持ちは介護を今でいうヘルパーさんに頼み、彼女がやさしく対処するなかでのお話。人に優しくできる人は何らかの痛みを知っている人だということも描かれている。
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朝井まかてさんの本を読むのは初めてだったけど、好き過ぎて、続編を探してしまった。