あるキング

著者 :
  • 徳間書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784198627799

感想・レビュー・書評

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  • 不思議なことにこの本の登場人物たちには顔がなかった。
    私には顔が思い浮かべられなかった。
    情景、音、感触はありありと伝わってくるのに、登場人物たちの顔だけは思い浮かべられなかった。

    伊坂幸太郎の小説はほとんど読んでいるが、これだけ登場人物の顔が思い浮かべられなかったのは初めてだ。
    いつもは登場人物たちが愛すべき形を持って、個性豊かに生き生きとしているのに。

    それはこの本がある男の伝記のような語り口で書かれているからなのだろうか。
    語り部の語りで進められるから、語り部の介入があるから顔が思い浮かべられなかったのだろうか。

    他の伊坂幸太郎の作品のテイストはそのままに、また異質な小説だと思った。
    私は伊坂幸太郎好きなので伊坂作品には贔屓目だが、これは伊坂好きも賛否があるのも納得な気がした。
    私はつまらないとは思えない。
    ただ今までのような、どきどきはらはらのストーリー性はない。
    比較するなら『陽気なギャングが地球を回す』のようなものとは真逆。
    『魔王』『モダンタイムス』とも違う。
    伊坂幸太郎特有の洒落たセリフはない。
    ただ淡々としている。
    それはこれが伝記調なのだからだろうか。
    とにかく異質。



    いっきに読めるという点では小説を普段読まないという人にはおすすめだけど、初伊坂幸太郎という人にはあんまり読んでほしくないと思う。
    なぜだか。
    おすすめの難しい本。
    でも伊坂好きには外さず読んでおいてほしいと思う本。

  • 面白かったかつまらなかったか、と聞かれたらつまらない、と答えるかもしれない。
    でも何か語りたい、読んだ方の感想が知りたい、と思わせてしまう読後にものすごく「残る」一冊。
    超常現象並みの野球の能力を持った少年の人生。

    作者はものすごく普通ならざる題材を使ってものすごく普通のを書きたかったのかなあ、と思ったりしました。

  • 普通にストーリーをなぞるだけならなかなかの悲劇だったのではないか、そう思えて仕方ない。
    王として生まれ、王として育てられ、王としてあり続ける。頂点として誰からも認められる実力を持っている者の宿命とはいえ、過酷すぎる。
    本当に王は求められているのか。それすらもわからず話は巡り巡る。

  • 天才が同時代、同空間に存在する時、周りの人間に何をもたらすのか?野球選手になるべく運命づけられたある天才の物語。

    一気に読破しまいたが、賛否評価がわかれる作品だと思います。若干、いつもの伊坂幸太郎とは違った印象をうけた。あくまでも一個人の印象の感じかた・・・ファンの方は、ぜひ読んでみて感想を!!

  • 「あるキング」
    野球選手になるべく運命づけられたある山田王求はプロ野球仙醍キングスの熱烈ファンの両親のもとで、生まれた時から野球選手になるべく育てられ、とてつもない才能と力が備わった凄い選手になった。彼はいわゆる天才であった。しかし、その天才の運命は少しずつ歯車が狂いだす。


    天才野球選手・山田王求の生まれる瞬間から幼児期、少年期、青年期のそれぞれのストーリーが、王求の周囲の者によって語られる形で進んでいく「あるキング」ですが、やはり気になる要素は「黒尽くめの3人の女性」と「緑色の獣」です。どうやら「マクベス」も取り込まれているようですけど、肝心のそれを私は詳しく知らないのでなんとも言えませんw


    黒尽くめの3人の女性は常に王求の周りに登場し、当たり前のようにその場に存在し、じわじわと周りを侵食していきます。そして、緑色の獣ですが、私は最初狂った人間の描写表現であると思ったのですが、どうやら違うようです。


    そんな2つの未知に加え、天才を超える才能を身に付けた王求には苦難ばかりが襲い掛かります(少なくとも父親の言う名前でからかわれる試練などとうに超えた)。凄すぎてすぐに日本の野球界から異質扱いされる王求ですが、これが王なのか?とも思えます。


    勿論、「王は何でも出来る」という描写と「マクベス」の要素から、人から信頼と尊敬を集める偉大な王ではないより特別で且つ孤独な王ということは分かるのですが、どうしても王求の人生には悲しみを覚えます。


    果たして彼は野球をしていて幸せだったのか?私は物語の終盤で王求はそれでも野球が好きであるということを知ることが出来ますが、それでも幸せなのか?と思ってしまいます。


    凄いを超えることでより凄くなれるのではなく、より孤独になり、それでも王は前を進まなければいけない。そんな王求の王の道はあまりにも悲しすぎます。

  • 伊坂幸太郎さんの作品だったので読んでみたんですが、ドキドキする展開を期待しすぎたのかな?それほど面白いと感じなかったです。
    それがみんなの評価と一緒なのかな。

  • 卓越した能力がある人は、人から尊敬、羨望される一方で知らずに妬みや反感を買ってしまう、一般人であることは幸せであると感じた作品でした。

  • 仙醍キングスは、地元仙醍市の製菓会社服部製菓が運営しているプロ野球球団だ。負けて当たり前、連勝すればよくやったと感心されるチームだった
    書かれた内容に無理があると思う
    これまでのスーパースターは存在しない

  • “王が求め、王に求められる”ようにと名付けられた王求の伝記。
    さくさく読めたけど、盛り上がりにかける。
    淡々と、とある人物目線で事実が語られている。
    伝記だからわざとそういう風にしているのか。

  • 野球の王になるために生まれてきた王求。
    あらすじ読んだときは、まさかこんな話とは思ってなかった…。結局、彼は何のために生まれてきたんでしょうか??、よくわからない。どうやっても、『王』にしかなれないのかもしれないけども、それ以外の道に進んだほうが幸せなんじゃなかろうかと思うのは私だけでしょうか。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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