ふりさけ見れば 上

著者 :
  • 日経BP 日本経済新聞出版
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296117482

作品紹介・あらすじ

遣唐使は日本の朝廷からどのような命を受けて派遣され、中国で何をしていたのか――
2012年の直木賞受賞作『等伯』に続く、安部龍太郎氏の日本経済新聞連載小説は、対外的に「国家」としての土台を築き上げた8世紀・奈良時代の日本を、ユーラシア大陸・東アジアの中に位置づけて描いたスケールの大きな作品。安部氏の新たな代表作といっても過言ではない。

日本とユーラシアを結びつけるのは、唐で科挙に合格し玄宗皇帝の側近にまで出世したたぐいまれなる日本人・阿倍仲麻呂、そして仲麻呂とともに唐に渡り当時の大唐帝国のすぐれた文化・政治制度を内政に移植した学者にして政治家の吉備真備。唐からは、玄宗皇帝と楊貴妃、安史の乱を起こした安禄山、大詩人の李白や杜甫など、日本でも多くの逸話が知られる人物が続々と登場する。ついに帰国できなかった阿倍仲麻呂が日本の朝廷から帯びていた重大な密命とははたして……

唐の宮廷では周辺の遊牧騎馬民族国家との間の摩擦により、また日本の朝廷では壬申の乱や白村江の敗戦以来の皇統の対立により、どちらの国にも常に一触即発の権謀術数がうごめく。国や民族を越えて複雑に利害がからみあった権力闘争は時に内乱を引き起こし、昨日の友はきょうの敵となる。

タイトルは古今和歌集にとられ百人一首でもおなじみの「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山にいでし月かも」から。この和歌のたおやかで優美なイメージで阿倍仲麻呂と遣唐使を捉えるとさにあらず。謀略に次ぐ謀略、007のジェームス・ボンドばりのスパイアクション映画を思わせる息もつかせぬ展開に、一度手に取ると、上下巻900ページも一気読み必至である。

当時、吉備真備らが持ち込み移植した律令制度はその後いまに続く日本の法律の中に色濃く残る。日本の皇室の儀礼にもこの頃移植したものが少なからず存在し、鑑真和上の招聘による仏教の興隆など、「国家」としての土台はまさにこの頃に築かれたものである。チベット、新疆ウイグルなどとの中国の緊張関係は1300年前から連綿と存在していた。日本と中国の関係、日本と朝鮮半島の関係、中国と朝鮮半島の関係は古代から幾多の戦乱を経て、連綿と今に続くものである。歴史時代区分としては日本の古代を描いた小説ではあるが、ここが「東アジアの中の日本」の視座の原点かもしれない。

感想・レビュー・書評

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  • 奈良時代について、予備知識はあまりないが、当時の日本の立ち位置を考えると、なるほどと思えるストーリー。戦国モノや幕末モノとは一味違う面白さがある。

  •  遣唐使、阿倍仲麻呂と吉備真備が日本へ帰国する話から始まる歴史小説。

     日本に帰った吉備真備、唐に残ることにした阿倍仲麻呂の2人を軸に描かれる唐と奈良平城京のお話。

     私は日本史でもこの辺りの歴史が歴史が得意だったということもあり、タイトル読んだ瞬間、読みたい欲が凄かったです。

     ただ、読んでみて思ったのは、この辺りの日本の歴史で平城京を作ったり、律令制を整えたり、古事記や日本書紀を編纂してるんですが、何でそんなことをやったのか?といえば、全く知らなかったなと。

     本当に単語としてほぼ覚えてるだけでしたもんね。和同開珎とか、墾田永年私財法とか。

     こういった律令制を整えた理由として、白村江の戦いで新羅に負けたからというのがあったっていうのは、実は初めて知ったところです。

     それくらい、日本史の授業では教えてくれないことや解釈が盛りだくさんでした。

     それに、名前しか知らなかった阿倍仲麻呂や吉備真備が、本作品で命を吹き込まれることによって、彼らを通じてみる当時の大和朝廷や唐の生活を頭の中で見ることができるようでとても楽しいです。

     当時の天然痘なんか、死者の数とか全然違いますけど、新型コロナとかわらんやん!って思いましたし。

     上巻は仲麻呂が唐の中で出世するまでのお話。

     ドロドロとした政争に生き残らなければならない仲麻呂の生き様を見ていて、いつの時代も政争って大変なんやろうなと思いながら読んでました。

     玄宗に楊貴妃まで出てくる、唐の時代を生き抜いた阿倍仲麻呂の運命やいかに?

     下巻に続く。

     なお、玄宗皇帝の誕生日が奇しくも私と同じ8月5日だったことに、今、この本に出会えた運命を感じながら。

  • 阿倍仲麻呂と吉備真備を主人公にした歴史小説。

    大河ドラマでは平安時代が熱いようですが、奈良時代だって政争が熱いです。
    ただ、メインは阿倍仲麻呂のいる玄宗時代の大唐の政争でした。
    仲麻呂が優秀すぎて日本のためのスパイとして残留する設定は荒唐無稽っぽいが、白村江の敗戦の影響を引きずっていて唐に認められるために平城京や日本書紀を作った話は納得できますね。
    全体感想は下巻読了後に。

  • 玄宗皇帝の時代、楊貴妃や安禄山を中心に据えた物語は多いが、遣唐使阿倍仲麻呂や吉備真備の視点で書かれる事で激動の唐の時代を少し斜めから眺めたような冷静な語り口になっている。そして妻や子への強い感情が迸る場面は、大衆小説の感がある。
    また日本国の成り立ちに関する情報を得るという使命のため日本に帰れず苦悩する仲麻呂、そのために出世もしなければいけない訳だが、そのスパイもどきの行動も面白い。

  • 下巻に記入します。

  • 奈良時代中期、聖武天皇の時代。阿倍仲麻呂に吉備真備、名前しか知らなかったが、奈良の都に唐の長安の宮廷で繰り広げられる大活劇!と云ってもアクションじゃないけどね。ムチャクチャ厚い本だし、文章も読み応えあるが、どんどん引き込まれていく。そうか、玉環って楊貴妃のことなのね。いやあ、陰謀渦巻くわ

  • 『血の日本史』以来かな? 安倍龍太郎。(全然読んでないやん!)
    歴史で習った人物や漢文で習った漢詩がゾロゾロ。読み進めながら頭に浮かぶ映像は、なぜか『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』。
    さてさて仲麻呂の運命や如何に。下巻が楽しみです。

  • 「ふりさけ見れば(上)」(安部龍太郎)を読んだ。

    阿倍仲麻呂、吉備真備、玄宗皇帝、楊貴妃、安禄山、etc……。
    (名前は聞いたことあるけどあまり詳しいことは知らない人達)
    《物事を知らなすぎるにも程があるだろ!》って、自分でも思います。

    史実がどうなっているのかはわかりませんが、骨太の歴史小説です。

    さあ(下)に突入。

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著者プロフィール

作家。1955年福岡県生まれ。久留米工業高等専門学校卒。東京の図書館司書を経て本格的な執筆活動に入る。1990年、『血の日本史』(新潮社)で単行本デビュー。『彷徨える帝』『関ヶ原連判状』『下天を謀る』(いずれも新潮社)、『信長燃ゆ』(日本経済新聞社)、『レオン氏郷』(PHP研究所)、『おんなの城』(文藝春秋)等、歴史小説の大作を次々に発表。2015年から徳川家康の一代記となる長編『家康』を連載開始。2005年に『天馬、翔ける』(新潮社)で中山義秀文学賞、2013年に『等伯』(日本経済新聞社)で直木賞を受賞。

「2023年 『司馬遼太郎『覇王の家』 2023年8月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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