消滅世界

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024325

感想・レビュー・書評

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  • 夫妻の性交渉は近親相姦であり禁忌、子供は体外受精で作る…という世界。主人公や母の本能的欲求描写シーンにはちょっとファンタジーを感じた。SEXは汚いとの認識なのに、なぜ配偶者とその恋人の恋愛について歓迎できるのか疑問だった。家族に思える相手と関係を持つの凄く気持ち悪くて辛い派だから、エデン前の世界には一部共感した。SEXに快楽が伴わないならこんな世界観も確かに存在し得るのかな。終盤、性愛無し・男も出産可能な世界では、全ての子供が平等に可愛がられる・均一な人間が出来上がる・家族制度が不要…という描写は印象的。

    ■引用
    P96「人間はどんどん進化して、魂の形も本能も変わってるの。完成された動物なんてこの世にいないんだから、完成された本能も存在しないのよ。誰でも、進化の途中の動物なの。次の瞬間には何が正しいとされるかわからない」「私達は進化の瞬間なの。いつでも、途中なのよ」
    P240「世界がどんなシステムになっても、違和感がある人は一定数いて、そのパーセンテージって同じようなもんじゃないかって気がするのよね」「お母さんは、きっとどこの世界でも違和感がある10%くらいの人間なのね。私は、どこでも違和感のない人間なんだと思うわ」

  • 人工受精での妊娠が通常になっている世界で、坂口雨音と雨宮朔は夫婦として生活してきたが、違和感を覚えている.このような世界の出現は御免被りたいが、男でも出産可能な実験都市に移り住んだ二人は、友人の配慮で自分たちの子供を作ることを試みた.人工的な生殖が彼らを蝕む過程はぞっとする感じだ.その極致は最後に出てくるクリーンルーム.プロットの発想は面白いが、読後感はよろしくない.

  • 「消滅世界」ってそういうことか、ってなる作品。
    今までにない方向性の作品だと思う。
    発想力がすごい…。
    こんな未来が遠からずあるんだろうなと思って複雑な気持ちになった。

  • こちらの村田作品は私にとって3作目。
    『コンビニ人間』⇒『殺人出産』⇒『消滅世界』と読んでいます。
    『殺人出産』が噂もあったので覚悟をしていたものの、なかなかな内容でしたので、今回も覚悟して読みました。
    他の方も仰るように薄気味悪いというか、言葉は悪いのですが気持ち悪い。
    私は女なので読後に特に下腹部が気持ち悪い感じがしました(気のせいでしょうが(・・;))
    この読後感は何と言うべきなのか……
    主人公がしたことは結局どうなのか……
    読みやすい文体な分、スッと入ってくる村田ワールド。
    ただその村田作品独特な要素が全開過ぎて、上手く言葉が見つかりません。

  • なに⁈この気持ちの悪さ。デストピィア。
    家族の定義を考えるとこうなるの?
    心地よい家族は優しいけれど、嘘くさい。
    でもそちらに傾きつつあるのも本当。

  • 久しぶりの村田さん作品。主人公が変わっていく"当たり前"に必死に食らいつこうとしていたのが、これまで読んだ作品と違うように感じた。
    帯の「母と娘の物語」という文言がぴったり。母がかけた呪いから必死に逃れようとする主人公。家族という空間が与える"当たり前"が強烈で恐ろしかった。"毒親"というのはこういうことなのか?
    主人公が感じた"当たり前"が変わる瞬間、グラデーションを、私たちもコロナ禍で体感していると思う。変わり続ける"当たり前"に私はどこまでついていけるんだろうか。

  • ホラーだよ……。

    異常が正常になり、正常が異常になり、また正常になり…世界は常に変わっていく"途中"なのだ。

    最初のアダムとイブにどう繋がっていくのかなぁと思っていたら、子供ちゃんがアダムだったのね。

  • それは戦争で男たちが戦地へ赴いてしまうので、保存した精子で人工授精することが広まり、いつしかスタンダードになった世界。
    人はだんだんと性交渉を必要としなくなり、生身の人間への恋愛をしない人も増えていた。
    雨音はそんな時代には珍しく自然出産で産まれてきた子供だった。
    そして世界はまた新しいスタンダードへ向かって動き出そうとしていた。

    読みながら頭にずっとあったのは"おぞましい"という気持ちだった。
    こんな世界はこないと思いつつももしそうなったらというおぞましさと、本当は確かにこのほうが良いのではないかと思ってしまう自分へのおぞましさにぐるぐる翻弄されながら読了した。
    物語後半に出てくる子供ちゃんたちは今のわたしには幸せとは思えなかったけど、本人たちは幸せなんだろう。
    世界のスタンダードは間違いなく時代と共に変わっていて、わたしが生きているこの間もきっとグラデーションなんだろうな。

  • 失われる個性。

    一部の特権階級が都合よく操作しようとする一つの可能性。

    望ましくないが、すでに現代もそうなのかも知れない。

    僕たちには抗うことが難しい。

    いつの時代も、適応することが最善なのかもしれない。


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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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