消滅世界

著者 :
  • 河出書房新社
3.30
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024325

感想・レビュー・書評

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  • セックスが無くなり、子どもを産むために100%人工授精をするようになったデストピアの話。夫婦間でのセックスは近親相姦と言われ忌避され、家族という制度が無くなろうとし、結婚するのも恋愛感情ではなく、合理的理由によりおこなう世界。さらにその世界を発展させ、自分自身の子どもという概念さえ無くし、全員が同じ日に受精し、同じ月に出産、幼児はすべて施設に預けられ、街に住むすべての人が、「おかあさん」であり、「子どもちゃん」であるという実験都市を千葉に作り(千葉に作る辺りなんとなくありそうで笑)、その世界の中で暮らしていく主人公。という、なんだかすごい世界の話。

    セックスとは何かを問われているように思う。感情が入る行為がセックスで入らない行為は自慰であると考えている。この世界では恋人同士がセックスをしなくなりセックス自体を良しとしない。この主人公はそんな世界で恋人を作り続け、その度にセックスをおこない、2次元の相手と行う行為もセックスと表現すること、それを私は正しいと思う。色んな世界の色んな正常があるが、それは決して多数決の世界ではないと思う。感情があり、その声に従うセックスが正常であり、その声は人の数だけあるので、2次元とする事も、だれともしない事も正常であるように思う。

    いずれにしてもイヤな世界の本である。

    この作者の本は3冊目だが、今のところある特定の世界の秩序とその破壊を書こうとしているように思う。

  • 読後感よくないけど、面白かった…。100年後、夫婦のセックスが近親相姦としてタブー視されている世界で、変化(進化?)し続ける家族、妊娠、出産、親子、恋、性欲の概念。物語のなかでも過渡期であり、登場人物たちのライフスタイルや考え方もみんな違って、でもそれぞれの言い分がよくわかる。ディストピアなのかユートピアなのかそれともただの地続きの物語なのか。自分の価値観も当然メビウスの輪みたいに反転をつづけ、読んでいるあいだじゅう、車酔いしている気分だった。でもページをめくる手が止まらず、冒頭より一気に読了。最後は本気で気持ちが悪かった…、もうホラーの域。読み終わってもぬるぬるした粘膜から逃れきれず物理的に吐き気がするし気持ちもどんよりしている…けど、読んで良かった。なんでこんなに気持ちが悪いと思うのか引き続き考えつつ、著者の他作品も読んでみたい。

  • 殺人出産に続き、こちらも非常に衝撃的な内容でした!
    まぁ、未来現実的な話でもないような、しかし俄かに信じがたい・・・。このテーマでの小説、さらに続きが読みたくなるような。

  • 「コンビニ人間」が面白かった村上さん。本作でも性の役割と常識について書いている。
    両義的な世界観なのが興味深い。ラストの近未来社会は、家族の愛や絆、母性愛といった概念が崩壊したディストピアと受け取る人が多いのだろう。しかし、実社会での実親による虐待、未婚・片親・子なしの急増に引き比べると、本当のユートピアにも見える。恋をして異性の彼氏・彼女がいるのが普通、セックス至上、結婚はすべき、家族の絆こそ愛であり幸せ…これらの「呪い」から解放された社会だ。私は家族の絆薄く未婚なのでなおさら。
    子供を欲しいかについての男の台詞「自分の遺伝子を残したい 老後だって安心だ。僕たちの絆もますます深まる。欲しくない理由を探す方が大変だな。」「外で嫌なことがあっても、家に帰って子供の声がすれば忘れられる。『家族』はすべての人間にとってライフワークなんだよ。」これらを痛烈な皮肉、常識へのアンチテーゼと感じない人は幸せだ。
    ただし、世界観は小さくキャラは薄く広げた風呂敷をたたみきれないオチが残念。(コンビニ人間も本作もラストが弱い)アトウッドの「侍女の物語」レベルの性のディストピアを書いてほしい。

  • 個人的にはあまり好きな話ではなかった。

  • 私には合わなかった。
    ただただ気持ち悪い話。

  • アイデアだけで突っ走った印象。そのアイデアの向こうに感じるものがなく、何を伝えたいのかわからなかった。

  • なんだか、便利さのもとになにもかもがゆっくり見えんようになっていって、あとにはなにがのこるのでしょう。

  • とても怖い半面、ああ、これが正しい姿なのかもな、と思ってしまう筆力。
    正常という発狂、発狂という正常がここにある。

    社会全体で無個性に子どもを産み、育てる世界。「私」が消える世界。命をつなぐだけの世界の怖さ。でも、それを否定できない迫力。

    前半の現在性(リアル、生々しさ)から後半の未来性(虚構、人工)への物語の移行が不気味までに連続的。

  • 人工授精で子供を管理する世界。家族間でのセックスは禁止されており、恋愛は外でするという謎すぎる世界観が面白いが、実験都市での「おかあさん」「子供ちゃん」と呼ばれる。途中読んでて気持ち悪くなった。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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