少年アリス (河出文庫 な 7-1 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309403380
感想・レビュー・書評
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何よりも言葉が綺麗。登場人物の名前が蜜蜂とかアリスとか、ちょっと変わった感じなのも面白い。雰囲気が宮沢賢治っぽいな~と思った。理屈ではなく、心で感じるタイプの物語。
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高山宏さんの解説が正鵠を射ているのでもはや私の劣文は必要ない気もしますが、とにかく、『少年アリス』はさまざまなものから「解放」されている作品として群青天鵞絨に輝く屈指の幻想譚だと言うことができるのです。
澁澤龍彦さんや短歌の好きな私は、前者には博物誌的な面白さを、後者には音とリズムに凝縮した言葉の感覚の面白さを見出します。ペダンティックな充足を得ることの面白さというより、普段私たちが使う言葉とは違った場所に居る言葉を採集することの面白さを求めて、手を伸ばしているのです。これが私の読書傾向かつ好みです。
そして私の好む作家さんの中に、まちがいなく長野さんも含まれています。解説で高山さんは長野さんを「マニエリスト」と述べ、「意味の重圧から言葉を解放した」本書を評価しています。まったくもっておっしゃる通りだと思います。文字どうしの間隔、本文の余白も趣があります。
さて、私は今回の感想で作中の内容にあまり触れていませんが、いいのです。それこそ私の「言葉」で語るに語れない『少年アリス』の感慨は、言葉や記憶にとどめるよりも、螢星が消えた一夜の出来事のように、夢うつつとしていいものなのです。 -
世界観がすごく好き。
漢字の使い方も素敵。
しかしその文章が読み難く、一冊読むことがつらい。
それでも、それをも超える独特の世界に揺蕩う魅惑。 -
再読
初期長野まゆみ作風懐かしい~~~~
ありえね~~~な、お耽美少年描写がなんかこう・・・まさにだなぁ長野女史・・・・・・ -
夏が近付くと長野まゆみ作品を読みたくなります。
再読でも、冷たく澄んでいる不思議で綺麗な世界でした。
アリスと蜜蜂が迷い込む夜の学校、夏から秋へ変わる瞬間。星を夜空の天幕に縫い付ける。
お話は優しいのですが、言葉の音の雰囲気とか、硬質な独特の世界です。
初期の長野作品は恋愛色がなくて、こちらも良いです。 -
15年振りくらいじゃなかろうか。
それにしても長野さんファンは日本中に溢れていて、とにかく図書館でも書店でも、この少年アリスだけはそもそもなかなか目にすることがない。
で、珍しく文庫版に出会ったので再読。
やはりこの人は、特にこの一冊は、ひとつの時代を創った作品だと思う。おおくの人にとって特別な作品であるように、私にとっても特別な印象のある作品。
アリス、蜜蜂と表記をずらしたところがなんとも衝撃で、なんて完成された人工の世界なんだと。この精緻なツクリモノとしての世界観が、白昼夢的に人を惹き付けて止まないのだと思う。なんか夏に読みたくなるしな。 -
少年アリス読了。たしかに一発目で読んでも別にホモじゃないですね。でも兄とアリスをどこかで違うと感じてたり、兄の悲しさを弟よりアリスのほうがより感じてたり、トライアングルの関係…いやそれはともかくとても銀河鉄道的な文章で幻想的でした
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夜の学校に忍び込んだ少年が、夜中の生徒と間違えられ、その不思議な授業に参加させられる話。日常ではありえない授業内容が面白く、それを通じて彼らの正体がわかっていく。
アリスと蜂蜜がお互い離れてみて、やっと相手を客観的に知れたような、大人になっていくような感じ。
しかし、教師が、アリスがいくら違うと訴えても無理矢理仲間に引き入れ、誤解が分った後も自分の都合で彼を消したことは、子どもから見た大人の理不尽さを強く訴えているように見えたのだが、そういうことなのだろうか? -
小説に、意味や哲学を求める人がいる。
自分も時として、その群れの中にいると気付く。
しかしながら、本書を読み返すたびに
そんな思いから解放され、純粋に虚構の世界へと潜り込めるのだ。
「読書は楽しい。ファンタジーは楽しい。」
いつも少年アリスを読んだ後はそう思う。
長野まゆみ作品の魅力はなんと言っても、世界観。
それを作るのはレトロな文体と、奇麗な単語。
主人公はアリス、蜜蜂、耳丸。なんて愛おしい名前だろう。
理科室、教室、廊下。
子供にとっての日常は、日常であって世界の全てである。
そんな感覚は誰しも幼い日に記憶していることだろう。
主人公達もそんな、自分たちの小さな世界で
どこか不思議な冒険を繰り広げるファンタジー。
ハリーポッターやナルニア国物語のような、
大味なファンタジーやアドベンチャーでは決してない。
現実に感じる不思議を曹達水で割ったような、
淡い淡いファンタジーである。