浮世でランチ (河出文庫 や 17-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309409764

感想・レビュー・書評

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  • 「神様へ
     そうかもしれません。私は素晴らしい世界にいるのかも。
     お風呂に入らないでいると、かゆくなる、あたたかい体を持っています。
     そしてお風呂に入ると、石けんの泡が、毎回違う形になるのを見ることができます。
     その泡の形は、その時だけのもの、世界で私だけが見ています。
     葉っぱの形もそう、雨が窓を伝う水滴の形もそう、私だけが見ています。
     立派な人間になれなくたって、周りの人に迷惑をかけたって、こうした化学変化が絶えず起きている世界で生きていけるのは嬉しい事です。 丸山君枝より」

    「人の作った規制を、破っていくことに、私は、自分の生きる意味があるって、思う」
    私は勝手に、ひとりで宣言した。
    「ワタクシは自分の決めたことを、守っていくことに、楽しさを見つける・・・・、と思う」

    いつだって、偉大なことが起こる日の前日も、だらだらと過ごしてきたことを考えると、死ぬ前もきっとだらだらしている。おばあさんになった私が、明日死ぬことも、知らないで、だらだらと、魚や芋の昼ごはんを作っているところを想像する。そのご飯は誰と食べるの?

  • 14歳と25歳の「私」を描いた作品。1日で読了。内容はさておき、ナオコーラさんの流れる文章は、読んでいて気持ちがいい。

  • 私こと、内山君枝と、女言葉を遣う幼馴染の犬井、大雑把でマイペースのタカソウ、クラス委員で気遣いの新田、さらに奇癖のある神妙な鈴木の五人によって展開される中学生時代の物語と、今現在の私の物語が同時並行に展開されていく。どちらが面白いかと言えば、正直それは過去編だろう。というのも、キャラクターがあまりにも魅力的だからである。犬井とタカソウは、いいね。すごい対照的。犬井はものすごく気を遣う、けれどそれを新田ほどあからさまに表現しないから、同じタイプの人間(=新田)にしか犬井が気遣いであることには気づけない。そして、新田以外にはみんな犬井が苛められていることにあまり頓着していない(鈴木は不明)。なんというか、みんなあんまり物事に関心がないのである。自意識が過剰な私は、自意識みたいなものをまるで持っていないそれこそ純粋なまでに持っていないタカソウに惹かれる。マイペースすぎるタカソウには自意識なんてものは必要ないのである。だから、私は、タカソウに惹かれるし、逆に私のそばに自然と居続けられるのは犬井しかいない。新田は自分が努力していることを鼻で嗤うような節のある私に嫉妬しているが、私も逆に自分が馬鹿にしていることを大真面目い行い結果としてタカソウと仲良くすらなっている新田に嫉妬しているのだからお相子である。つまるところ、私の自意識は高すぎる。そういうところに孤高性を感じて惹かれる人もいるし、敵意を抱く人もいる。とはいえ、タカソウが私に媚びるような雰囲気を放った一瞬の、空気の異様さは見ていられないものがある。私のタカソウ像が崩れる、それは赦せない、もう、お前なんかいらない、そういう言葉が自然と溢れてきそうで痛々しさがある。誰もかれもいなくなり、私が再会するのは、犬井でもタカソウでもなく新田であるというのは皮肉というか運命というか。依然として私の自意識の高さは変わらないけれど、私は誰かを好きになると述べている。つまりはそう。男性社会に断固反対とかいう人も、フェミニズムの闘士みたいな人も、恋をすれば女になるわけですよ、というところを自覚する程度には私は大人になり、けれど、大人という言い回しを私は嫌いなのだろうね。これ、私=ナオコーラなのだろうね。外見描写とか心理描写とか、なんかかなり等身大の彼女が描かれているように見えたし、実際そうなのだろうと思う。他人のセックスを笑うな、は完全に創作だろうけれどこれは事実に基づく創作みたいなところがあると思われる。犬井と再会できないところに文学性があるけれど、犬井と再会できないところに物足りなさがある。

    さて、この物語に登場する女性陣で、口説くとしたら誰?と考えると、私かタカソウかあるいは佐々木さんだろうか。けれど、新田もいいか。うん、選べない。

  • なんか好き。甘酸っぱい。いろいろ思い出す作品。

  • 同性に対する憧れや、嫉妬が思春期特有の瑞々しさに溢れてる。
    大人になっても、丸山は丸山。無理に繕わない素直な生き方で、なんかいいな。

    一番大人なのは、犬井君かな。

  • ーそういえば、大人ではなかった頃、自分だけの「信仰」があったなあと思う。
    神様、信仰、ルール。
    忠実に守る、守らなければ世界から足を踏み外してしまう、そういう設定。
    その不自由さとスリルを楽しんでいた。
    そして確かに大人になって「神様の気配を感じなくなった」。

    これを読んだ人は自分が「丸山」だと思うか「新田」だと思うかに分かれるのではないだろうか。
    私は丸山君枝に似ていて、読んでいて面映かった。

  • 読みやすい文章だった。14歳のときの私も25歳のときの私も、文章を介して誰かと会話しているのが良かった。大した内容ではない話も重い話も、こういった形でなら上手く伝えやすいな、と思う。そういった内容を書くのには多少勇気が必要だけれど。中学生のときに慣れることができなかった学校という世界。だから「早く大人になりたい」と思ったって、自分でそうしようと思わなければ、社会にだって慣れることができないのだと思う。でも、自分で歩み寄ろうとするのは、丸山のような性格の者にとっては難しいのかもしれない。自分も丸山と同じような部分があったため、そう思った。

  • 予想を少し外れたルートに進んでいく話だった。消化不良を感じる人もいるだろうなぁ。
    しかし、自意識過剰でひねくれていて妙にマセたかわいくない14歳のヒロインはどこかチャーミング。その生きづらさ、世界との折り合いのつかなさに共感する。ラストシーンで描かれるようにゆるやかに変わってはゆくものの、歳をとったくらいで変われるものではないのだ。許容範囲を少しずつ広げていくというだけで。
    それにしても犬井はどんな人生を辿ったのだろうか。鈴木くんは? タカソウは? 気にはなるけどそこを描かないところが案外好きです。文学っぽいよね。

  • 中二病、中二病、中二病。

  • 神様っていつから信じなくなったっけ・・・?

    個人的にすごく好きな作品。

    むず痒くって、切ない。
    もっと大人になれば、この切なさみたいなのって形を変えるのかなぁ。

    久々に神様にお手紙でも書きたくなるね。

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著者プロフィール

1978年生まれ。「人のセックスを笑うな」で2004年にデビュー。著書に『カツラ美容室別室』(河出書房新社)、『論理と感性は相反しない』(講談社)、『長い終わりが始まる』(講談社)、『この世は二人組ではできあがらない』(新潮社)、『昼田とハッコウ』(講談社)などがある。

「2019年 『ベランダ園芸で考えたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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