利己的な遺伝子: 増補改題『生物=生存機械論』 (科学選書 9)

  • 紀伊國屋書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (548ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314005562

感想・レビュー・書評

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  • 2013/02/28 読了

  • 利己的な遺伝子、この概念はとても面白い。
    そして、利己的ではあるがとてもドライな”利己”だ。

    昨今のメジャーなSF作品でも頻繁に元ネタにされている内容であるように思う生物の利己性と利他性、そしてそもそも私たちの目的や意識はどこからやってきたのかということをドライにさらっと語っていくドーキンスの口調がとても心地よい。

    遺伝子の利己性や、本文の中盤以降から現れるミームの概念(これは本人が思っているよりも定着した感がある)に対する説明は、相手が遺伝子の振る舞いというブラックボックスだけに、どうしても蓋然的なもののような気がしてしまい、旨く説明がついているからきっとそうに違いないという、印象を拭う事が最後までできなかったが、マルクスが唯物史観を述べる上でドライな世界の”真実”を暴露したように、彼もまたドライな生命の”真実”を暴露したのではないのだろうか。この著書と彼の主張が一つの「ミーム」となって、今の我々の世界観を形成しているといっても過言ではない。

    自由意志を信奉している、もしくはそこからなかなか離れる事のできない、西欧型の主体概念からすれば彼のこのような生命に対する説明は乱暴としか思えないだろうが、比較的最近の西欧思想や仏教思想に照らし合わせれば非常に納得のいく論だと思われる。

    ミームを作り出さない単純な生命に関しては、なるほど遺伝子の持っている要素とその膨大なバリエーションの外界への出力とフィードバックが生存のカギとなる気がしないでもないが、第二の自然を生きる我々、また象徴的秩序の中に身を置いて言語の世界を生きる我々にとっては、いささか遺伝子の決定だけでは不十分なようだ。利己的な遺伝子というタイトルから、どうしても決定論的なニュアンスを感じ取ってしまいがちではあるが、じつは人間が利他性を能動的に取り入れ、また遺伝子の後先考えない自動的な命令を適切に取捨選択することができれば、私たちは遺伝情報のヴィークル以上の価値を私たちの中に見出す事が出来るかもしれない、という”人間性”の礼賛を逆説的に行っているようにも読めるのである。

    どちらにせよ、これはなかなか面白い本である。

  • レビューお試し。
    きちんとしたレビューは後日。
    学生自体に読んで、その後の人生観に大きな影響を受けた本。「利己的」という表現にはなっているけれど、「自分勝手」という意味ではなく、「自分なりに」という意味に受け取っています。遺伝子に意思はなく(当然ですが)、その性質に沿って精一杯をしているだけ。優秀だから生き残る訳ではなく、劣っているから衰退していく訳ではない。と解釈しています。

  •  昔ベストセラーとなり、日本でもかなり読まれた本だったと思う。
     非常に長く、読み通すのは少々疲れたが、基本思想はまえがきのところに書かれているように、シンプルである。生命の核心は遺伝子が未来までより長く生き残るように「利己的に」活動することにあり、個体としての生物は、遺伝子が仮に使う「乗り物」にすぎない、という考えだ。
     この説については、なるほど、そういう考え方もあるかなと思う。絶対的に正しいとまでは思わないけれど。
     著者はもともと動物学方面の人らしく、さまざまな動物の生態が例としてたくさん列挙されていく。これがとても長ったらしいのだが、動物の群の実態などは興味深かった。
     

  • 『遺伝子を単位とした自然淘汰』という現象が生命の本質であることを世に広めた作品です。様々な自然現象を理解する上で基本となる概念を学ぶことが出来るので、理学を学ぶのであれば必ず挑戦して欲しい一冊です。

    僕自身、この本がきっかけで生物学者を目指し博士課程まで進んだ思い出の本です。

  • 「遺伝子は利己的である」というワンフレーズだけが一人歩きしている感がある。しかしそれは、「経営者は利益を追求する」というのと同じようなもので、本書を読んでみれば衝撃の事実ではなくごく当たり前のことだと分かる。

    利己的な遺伝子から様々な利他行動が現出するというのを色々考察しているところがまず面白い。

    あと、後半にあるゲーム理論の話も面白かった。ESS、進化的に安定な戦略というのはこの本で知った。

  •  
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4314005564
    ── ドーキンス《利己的な遺伝子 19910228 紀伊國屋書店》科学選書
    /日高 敏隆・岸 由二・羽田 節子・垂水 雄二・訳
     
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4314010037
    ── ドーキンス《利己的な遺伝子 20060501 紀伊國屋書店》増補新装版
    /日高 敏隆・岸 由二・羽田 節子・垂水 雄二・訳
     
     意伝子 ~ The Selfish Gene ~
     
     Dawkins, Clinton Richard 19410326 England /動物行動学/進化生物学
    http://booklog.jp/entry?keyword=%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%89%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B9&index=Books
     
    (20111023)
     

  • 大学生の時、友達とはまって、ミームミーム言っていたな

  • この本に出会う前は進化の単位は個体であると思っていた。つまり優秀な個体が多くの子孫を残すことにより、結果的に種全体がより良い方向に変化していく。進化とはそういうものなのだと早合点していた。そしてすべての生物が利己的であるのにもかかわらず、人間だけが他者に共感し、自分に多少不利益になろうとも他人の利益のために行動することができる。だから人間は特別なのだとも考えていた。しかし著者によれば、進化の単位は「個体」ではなく「遺伝子」らしい。つまり個体が持つ遺伝子が将来最大限増殖できるように、生物は行動するのだ。例えば、わが子を守るために自らの命を捨てるという母親の行動について考えてみる。それは母親である個体にとって「利他的な行動」であるが、同時に母親の遺伝子にとって「利己的な行動」ともいえるのである。なぜなら母親の遺伝子にとって、自分の遺伝子をこの世界に残すよりも彼女の遺伝子を半分受け継いだ子供の命を救った方が、彼女の「遺伝子の繁栄」にとって都合がいいと十分に考えられるからである。次に進化の単位が個体であるという論理(個体淘汰)の反例を示す。ミツバチの働き蜂は子孫を残さないことで知られているが、これは個体淘汰では説明がつかない。しかし進化の単位が遺伝子であるとすれば、働き蜂にとっては遺伝子が3/4同じである女王蜂の遺伝子が将来繁栄してくれれば、彼ら自身が直々に子供を産まなくてもかまわないのだ。また著者は血縁関係にない他人同士でも「情けは人のためならず」が科学的に十分根拠があることを、ゲーム理論を駆使して説明して見せる。つまり利他的な人間ほど他人と協力して生き残ることができ、結局そうした人たちの持つ遺伝子が繁栄し、現在広まっているらしい。だから「利他の心」は程度の差こそあれ、どんな人間の遺伝子にも刻み込まれているのだ。そして著者は生物は遺伝子に支配される乗り物でしかなく、生命に目的などはないと言いつつも、知性を獲得した我々は遺伝子に反旗を翻すことができるという。とても胸が熱くなった。

  • 生物のDNAを構成する遺伝子それぞれが永続的に存続する、即ち、より長く生きる・正確な複製を多く作る(時にこれらは相反する)方向に進化すると考える。これを拡張して宗教や文化の中にある様々な諸説(原理)もミーム(複製子)として同様な進化を示すとある。進化過程においてどういう遺伝子が安定になるかという点では「囚人のジレンマ」によりその典型が語られている。 ずーっと、読まねばと思っていた一冊、読んでやはり面白かった。豊富な事例と慎重な論理展開が素晴らしい。

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著者プロフィール

英国の進化生物学者。世界的ベストセラー『利己的な遺伝子』で知られる。ほかの著書に『盲目の時計職人』『神は妄想である』『遺伝子の川』『進化とは何か』など多数。

「2022年 『これが見納め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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