甘露梅: お針子おとせ吉原春秋 (光文社文庫 う 15-1 光文社時代小説文庫)

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334737030

感想・レビュー・書評

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  • 岡っ引きの夫を亡くし、後家としてお針子を生業とするため吉原に入ったおとせ。
    おとせから見た吉原の世界が描かれます。松井今朝子さん作の吉原本に続いて宇江佐さんの作品を読みました。

    当時の独特の文化であり秩序を持つ吉原の世界はとても興味があります。
    花魁のみならず、彼女たちを支える周辺の仕事に携わる人々や階級が作中記され、悲哀も喜びも、欲も恥も混在するのは今も昔も変わらない気がします。

    主人公のおとせのパーソナリティですが今ひとつきっちり掴めず終わりました。気後れしがちで自信なげな割にはお節介で他人事に入り込んでいくようで、「人情もの」に傾倒しすぎた印象を持ちました。

    おとせが太鼓持ちの凧助に心惹かれる様も若干強引な展開かな。
    松井さんの作品に軍配です、個人的に。

    東京は今隙間があればどんどんマンションが建てられ高騰していますが、土地の成り立ちがわかるので時代小説をそういう観点から読むと別の面白さがある気がします。

  •  宇江佐真理「甘露梅」、2001.11刊行、2004.6文庫。吉原の遊女屋「海老屋」に針仕事で住み込みのおとせ36歳を主人公に、遊女たちの人間模様を描いた連作6話。宇江佐さんの作品では珍しく、私にはイマイチな作品でした。

  • 2022/4/22
    凧さん長生きしてくれたんやなぁ。
    宇江佐さんの本ってご都合主義に感じることがないんよね。
    そうやったんやろうなって納得する。
    辞める時の掌返しも、返さない人も。
    報われない恋の死も老いらくの恋も。
    そうやったんやろな。

  • 志坂圭氏「滔々と紅」を読了後の本作、やっぱり宇江佐さんのお話は面白い。
    エンディングも鮮やか。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    岡っ引きの夫に先立たれた町家の女房、おとせ。時を同じくして息子が嫁を迎えたため、自分は手狭な家を出ることに。吉原で住み込みのお針子となったおとせの前には、遊女たちの痛切な生の営みがあった。さまざまな恋模様、その矜持と悲哀。そして自身にもほのかな思いが兆しはじめ…。今宵ひと夜の夢をのせて、吉原の四季はめぐる。哀切の傑作時代小説。

    令和元年11月14日~16日

  • なかなかですね。
    凧助という、もと幇間で今も客の求めに応じて席に上る60前の引き手茶屋の主人が魅力的です。全てを冗談に紛らわせながら、しかるべきところで心を尽くす姿が良いですね。
    さほど大きな事件が起こるわけではありません。その分、郭の世界の日常を細かく描いています。全体に読みやすく、物語に入っていけます。
    ただ読みながら、何か物足りなさは感じます。もう一歩中に入り込めないか。さらには入り込んだ上で、サラリと描けないか。そんな事を思うのは、どうしても藤沢作品と比較してしまうせいかも知れません。

  • 岡っ引きだった亭主を亡くし、ひょんな事から吉原の廓でお針子として勤める事になったおとせ。吉原の独特な決まり事の中で、素人のおとせは皆からからかわれもするが、少しずつ心を開いて話せる相手も出来、針の腕を見込まれ、頼りにされるようになっていた。

    ごく普通の、優しく情にあつい女であるおとせの目に映る、遊郭に生きる男女の姿を描く連作集。
    ラストで、吉原で過ごしていなかったら選ばなかったであろう人生を選ぶおとせに、暖かく満たされた気持ちをもらえる。

  • 小説宝石1998年別冊初冬号、1999年5、11月号、2000年8月号、2001年4、8月号連載のものを2001年11月に刊行。2004年6月文庫化。6篇の連作短編。吉原が舞台のため、哀しい話もありますが、しっかりと生きるおとせが、楽しく、面白い。15年前の作品ですが、良い話です。ラストの大団円が楽しかったです。

  • L 岡っ引きのお内儀と思って読み始めたのに、全然爽快感はない。ただのお節介女。木戸番夫婦のお捨を見習ってほしいよ、って年齢がちがうか。嫌いなタイプなのかイライラして読んでしまった。勘が悪いし気が利かない。
    一番良かった筆吉はあんなことにさせちゃうし。あの吉原炎上みたいに背負って出てきて欲しかったよ。
    でも最後まで読んじゃう。この方のウデなんだろうか、好きだ。

  • 吉原という特殊な場所に住まう人々の悲哀を、お針子の目を通して語られた連作。花魁のお話はおもしろいけど、おとせの恋物語はどうだろうか。凧助との大団円がない方が個人的にはすっきりして良かったような気がする。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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