ジェイン・エア(下) (光文社古典新訳文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (588ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334751142

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀英国。女性としては際立つ矜持や自立心の故に困難の絶えないジェインは、身分を超えた愛情を育むが……。

    多くの困難を越え、ようやくソーンフィールド邸という、穏やかな環境に身を置くことができたジェイン。ロチェスターの求婚までに至るまわりくどさと、グレイス・プールをめぐる秘密に翻弄される流れは、めんどくさい男だなと思いつつも、文章や演出の上手さと彼の人柄がよくわかる筋の運び方という点で納得しながら読んだ。

    結婚が決まったときのミセス・フェアファックスのいっけん冷たい態度も、最初はジェインと同じく戸惑ったが後から考えると納得。

    逃げ出したあとの放浪してどの家からも受け入れられないときのジェインの、誇り高さと自己肯定感の低さが同居しているような感情には、どこか共感するものがあって胸が痛かった。

    セント=ジョンの厳しすぎる使命感には辟易。若さゆえの融通のきかなさがよく表現されている人物だと思う。しかし、ジェインが真実の愛に気づくために必要な経験をもたらしてくれた。

    突然親族の財産が転がり込むお約束的なものや、精神が感応して聞こえないはずの呼び合う声が聞こえてしまうというエピソードは、現代の我々にはベタではあるが自分は好きだ。

    魂では深く結びついている二人なのに、あのタイミングでうまく結ばれなかったのは、お互いに試練を越えて磨かれなければならない部分があったからだと、構成の巧みさに舌を巻いた。ロチェスターは高価な宝飾や服など価値がないと悟り、粗雑で高圧的だったところもすっかり角が取れている。ジェインもまた、多くの苦難とセント=ジョンとの件を越えたからこそ、彼のすべてを受け入れることができたのだと思う。

    「どうなっちゃうのこれ!?」とヤキモキする展開がずっと止まらない本作。最後には、失って得るもの――二人の魂の成長を読者も実感できるような、見事な着地に拍手喝采。自立した女性の話というだけでなく、素晴らしいラブストーリーだからこそ長く愛されるのだろう。小説本編以上に興味深いブロンテ姉妹の経歴にも注目したい。

  • こんなに強情な登場人物は初めてでした…。そこがジェインの最大の魅力だとは思いつつ、自分の考えを曲げない頑なさが天邪鬼なようで、さらに、自分も含めあらゆる人のことを常に辛辣に評価していて、少々疲れました。

    さらに輪をかけて強情なロチェスターとセント=ジョン。二人とも自分の主張は重ねるのにほとんど相手の話を聞いていないような。にもかかわらず、ジェインは自分と同じく頑なな人が好みのようで、相手がもっと頑なになるようにけしかけているような向きもある。セント=ジョンに至っては、自分の信仰を支えるために妻になれとせまる始末でホラーのようでした。

    登場人物は大勢いますが、ジェインにつらく当たる一癖も二癖もある人ばかりで、下巻の中盤になってダイアナとメアリが出てきたときにはやっと好感の持てる人物が現れてくれてほっとしました。

    19世紀の古典作品を味わう胆力が私に欠けているのかな。上下読み終わるまでに半年近くかかってしまいました。

  • これぞ小説!

    運命に翻弄されるヒロイン、嗚呼ジェインの行く先は…!
    なリーダビリティ、あとがきで「弱点」とされていたのも納得な
    御都合主義的展開はあれど、いやー面白い。
    「小説」が軽視されてたのもそれでも人々が夢中になってしまうのも
    とってもよくわかる、現代に確実に続く近代の面白さ。

    ジェインのキャラ立ち具合、この強さ。
    道徳を多分に含み、同時にそこから大幅にはみ出す自我。
    ムーア・ハウスで物乞いに間違えられたとお怒りの下りでは
    現代日本人の感覚ではちょwwwと思わざるを得ないのだがw
    身分が上の相手ににも無用な劣等感を抱かない、
    激しい感情を持ちながらいつまでも怒りにも悲しみにも過剰に溺れる事がない、
    他人だけではなく自分に対してもどこか引いた視点を持っている、
    うーむ、ヒロインの器…

    高慢と偏見でも思ったけど
    外見に対してすごく比重が大きいし、引くぐらい率直に
    口に出して評するよね…

    ムーア・ハウスの質素で手入れの行き届いた描写、
    これ、こういうのが本当は理想の家なんだよ……

  • ロチェスター氏との恋の鞘当てはよく覚えていたけど、破談になった後のジェインの行動は、すっかり忘れていた。
    読み返してみると、そこもなかなかドラマチックで面白い。特にもう一人の男性の存在が、幸せとは何か?という問題を提示している。

  • 忌避していたのがすごくもったいなかったです。
    それぐらいに、読んでよかったな、
    と思える作品でした。

    この時代に、こんなに芯の強い女性は
    そうそうはいなかったと思います。
    たとい、どんな誘惑があったとしても、
    一途に想った人を貫き通しました。

    普通だったら、愛する人に
    とんでもない事実が出てきたら
    下手をすれば死にたくなることでしょう。
    でも彼女は、決して逃げませんでした。

    偽りの愛は自らを磨耗させます。
    だけれども、本当の愛は
    人生を充足させます。

    たとえ、その人が傷を持ち
    かつて過ちを犯したとしても…

  • 面白かった!
    最後まで読んでみて、「ああ、訳が秀逸だったのだなあ」と気付いた。
    かの有名な一節、「読者よ、わたしは彼と結婚したのだ!」が、かくも丁寧に控えめに語られていようとは。
    ジェインの口調は終始敬語が貫かれているし、それは彼女が持つ荒々しい人格を隠し礼節を弁えているという美徳を際立たせている。
    正直に言おう。下巻を読んでいる時点ではもう、ジェイン・エアを嫌う気持ちはなかった。というか、好きだった。
    原文で読んでも同じ感想を持ったかはわからない。このひとの訳したジェイン・エアが好きだ、ということだ。

    展開も波乱に見舞われ、狂った妻の登場、ロチェスター邸からの逃亡、そして新しい人々との出会いと暮らしと、ページをめくる手が止まらない。
    一番驚いたのは、やはりセント=ジョンだよね。彼は「いいお兄様」ではあっても、「いい恋人」にも「いい夫」にもなれない。絶対なれない。
    自分に関わってこなければ害もなく、見栄えのいい置物のような感じなのだけれど、災難だったなあ、ジェイン。
    それにしても変な男にばかり好かれるものだよね。
    ここまで色んな人に「不器量」と噂されるというのも不自然だよね?ダイアナは彼女のことを「きれいすぎる」と評したし、ジェインが自分の顔にコンプレックスがあるがゆえの思い込みと考えてもよさそう。

    とにかく続きが気になるし、ハラハラするし、予想外の展開もがんがん待ってるし、多少ご都合主義的なところもあるけれど、面白いです。
    名作だしとか古典だしとかでちょっとでも気になる人は是非この光文社のこの人の訳でどうぞ。
    わが大学の教授による、解説になってない解説もついてるしね。笑

  • ジェーンの性格がリアル。
    かなり昔の作品とは思えない。

  • 今まで見てきた映画やドラマの一部の展開で
    少なからずジェイン・エアの真似と思えるものが多々あった
    影響を受けたというかアイディアそのものが。
    エドワードが占い師として登場するなど
    突飛でオリジナリティがあるからこそ予想できない場面や展開があって
    作者の豊かな想像力と創造力の両方を感じられた
    あとエドワードかわいい。
    セント=ジョンとの対比で余計かわいい。
    彼は彼で禁欲的で信仰心篤いってレベルを超えてて、抑圧的で支配的で魅力的。ジェインがドMだったらついてっちゃってたんじゃないかな。
    まあとにかくエドワードがかわいい。

  • はらはらしながらページを捲った本であった。
    学生時代に読んでおけば良かったと思う良本。
    『嵐が丘』よりもこちらの本の方がすき。
    『赤毛のアン』と比較研究されてもいるようで、アンファンとしても興味深い。
    大円団の結末で本当にほっとした。
    セントジョンと結婚してしまったら、暗い気持ちのまま本を閉じていたであろう。
    セントジョンは本文中でジェインが述べていたとおり、ジェインを道具だと思っている。
    よくもまあジェインの気持ちを聞かず、あなたは私と結婚すべきなのですと言ったことを言えるものである。最近恋愛結婚した自分としては、読み流せなかった。それとも当時のイギリスでは男性の言ったことは絶対だったのだろうか?(本文を読んでいるとそうとは思えないが)
    やはり男性女性ともに、双方の気持ちが一致して結婚するべきだと、現代に生きる私は思うのである。

  • よかった‼︎
    2011年『ジェーン・エア』が俳優、ストーリー共にとても良かったので、その流れで原作を読む。

    映画はうまく要所をまとめていたと思う。いくらか省かれていることや、より登場人物の思いや考えを知るには原作を読む方が良い。

    ジェインのような幼少期の境遇で、誰かを愛して愛されることはどれほど幸せなことか。

    ジェインは美人ではない。でも、信念があり、自分はどうすべきかという決定を人に左右されずに決められる。
    でも、ちゃんと女性らしさもある。人に何かをしてもらうだけのバカ女じゃない。
    こういう人間像に惹かれるからこの作品も好きなんだと思う。
    (私はボヴァリー夫人みたいなのは苦手)

    訳者も訳していてこみ上げてくるものがあったと書かれていたが、私も何度かぐわーっと感動で涙が出た。

    2011年の映画では原作の途中までの話でぶつっと終わる。この終わり方はまだこれからも人生は続くという意味だろう。確かに人生はそこが着地点ではないのだ。
    原作ではその後も多少書かれている。

    次は作者の妹エミリーの『嵐が丘』読んでみよう。

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