妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫 う 18-3)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334767679

感想・レビュー・書評

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  • どこかこれまでの作品に通じるところを感じ、また違うどこかに飛躍していくような余韻が残る。
    やさしさを持って付き離し、冷静に見つめる目を感じる。

  • ただの妖怪ものじゃなくて、ちゃんとSFだvvvvv
    科学と妖怪の入り交じった、ほんの少し先の日本ってのが、けっこういい雰囲気。
    読後感のさらっとした乾いた感じが、好。

    てか、オリジナル版の記憶がない。「魚船・獣船」読んでるのに、表題作が強すぎて(汗)

  • 妖怪が跋扈する<真朱の街>で探偵事務所を営む妖怪・百目は絶世の美女。ある事情からこの街に逃げ込んできた相良は、自身が巻き込まれた事件を契機に、依頼報酬は人の寿命という百目に時折命を吸われながらも探偵助手を務めている。

    人と妖怪、呪いと最先端科学、自然の霊力とサイエンス・テクノロジーが融合した、魔除けの朱に染められ無数のお札を貼りこめた建物に囲まれたこの街は、かつては医療特区だった。その名残で、最先端医療技術の研究開発が行われていたりもする。
    そんな街で、人と妖怪は奇妙な共存関係にあった。
    勿論、悪い出会い方をすれば、喰われるのは人間なのだが。

    そんな街で探偵家業を営む百目だが、人さえ喰えれば(文字通り肉体を貪るか、ちょっと優雅に寿命を吸うか)生きていける妖怪のこと、気が乗らない依頼は一切受けない。彼女が乗り出すのは、妖怪絡みの事件に限られる。

    百目と相良が関わる五つの事件。
    特に興味深く読んだのは第四話『炎風』。人が開発したヒューマノイド・ロボット<明日香>に恋をした妖怪かまいたち<風鎌>が、消えてしまった恋人の捜索を依頼してくる。
    人ならざる者同士ながら、かたや古来の妖魔、かたや先端科学の申し子。人の心の奥底までも覗き込む百目が見出す、かれらの恋の行方とは。

    相容れない存在同士が喰いつ喰われつしつつも、それぞれに滅びてしまわぬよう、ぎりぎりのラインで共存する<真朱の街>(それでも、人は呪力や科学力を駆使して妖怪を排除する道を諦めてはいないし、妖怪も隙あらば人を喰うけど)に生きながら、人であることをやめ妖怪側にたつのか、それとも人の世界へ立ち戻るのか、揺れ動く相良。
    妖怪も妖怪で、人の科学技術を便利に使っていたり(百目なぞ、全身の目を隠すために人工皮膚を使っている)もするのが面白い。
    余談だが、妖怪の跋扈するこの街で、相良が通う妖怪酒場のマスター・牛鬼が提供する"人間用おつまみ"は結構おいしそうである。
    続刊が待ち遠しいシリーズとなった。

  • 妖怪がほとんどを占める街。
    そこの一角で『探偵』をしている人の
    助手を務めている主人公。

    連続短編になっているので読みやすいですが
    これの前身は別の本に入ってる模様。
    読んでいなくても十分読めますが、所々にある説明が
    その話が暗いような救いがないような…?

    主人公は人間ですが、周囲は当然妖怪だらけ。
    思考回路の切り替えが早すぎて見事ですが
    妖怪だから、でこちらの切り替えも終了。
    知っている習性を持っていることから、読んでいて
    相手の素性はなんとなく把握できます。
    有名どころが出ている、とか?w

    しかし主人公は無気力です。
    そして事件は妖怪にとっての無事解決であり
    人間にとっては解決した? 程度。
    温度差のギャップがすごいですが、読んでいると
    こんなものか、という納得が。
    なので、納得あるハッピーエンドが欲しいなら
    止めておいた方がよろしいかと。

    所で、拝み屋との関係は何なのでしょう?
    街に住む妖怪達と、の関係は分かったのですが
    その時、いなかったのですよね…。
    別件?

  • 妖怪探偵・百目というのは表紙のお姉さんの事なのだけど、あまり活躍はしないのねww。ストーリーは妖怪vs陰陽師の様相で、今まで読んだ同作者のSFの世界観より解りやすかったです。まだ導入的な1巻です。『魚舟・獣舟』は既読ですが「真朱の街」はすっかり忘れてました。でも無問題。妖怪とアンドロイドの恋を描いた“炎風”が良かったです。

  • 表紙に騙されてはいけない本。全身に百の目をもつ妖怪、百目が探偵事務所を開いているのは、妖怪と人間が共存する「真朱の街」。請け負う仕事はすべて妖怪がらみで、人間の助手を一人雇っている。この頼りない助手が狂言回しかと思ったらそうでもないようだ。なにせ探偵が妖怪、相手も妖怪だから事件も解決したようなしないような…と思ったらどうやら最後の一編が今後の展開における重要なプロローグのようだ。どう転がるのか誰が味方で敵なのか、そもそも敵味方があるのか続きが楽しみです。

  • SFチック。仲良しで和気あいあいな妖怪物語ではなく、ダークな雰囲気が漂っている。百目と相良二人の契約もシビア。
    「魚舟・獣舟」を先に読めばもっと世界に入りやすかったかも。
    まだ序章という感じ。今後の展開が楽しみ。

  • 【収録作品】真朱の街/神無しの社/皓歯/炎風/妖魔の敵

  • 「真朱の街」その後の短編連作。
    妖怪と人間が共存する未来の世界。
    ありきたりな要素にもさすがの世界観。
    彼らのストーリーよりもラストの播磨遼太郎に釘付け。

  • 妖怪と人間が共存する“真朱の街”

    妖怪と人間が共存する時代設定としては、江戸時代や平安時代がよく使われますが、この本の時代設定は近未来。しかも「見る」ことに長けた妖怪が人捜しをする探偵小説。
    京極夏彦さんの人の記憶が見える探偵を妖怪にしてしまった感じ。他にない新しい設定の小説だ。

    平安時代や江戸時代は社会が安定し、文化が発展した時代だが、さてこの本で設定された社会は、どうなのだろう。
    まだまだ社会やこの社会で生きる人々のわずかな断片しか見えないので、この後、断片がどのように繋がって全体が見えてくるのか楽しみ。

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著者プロフィール

兵庫県生まれ。2003年『火星ダーク・バラード』で第4回小松左京賞を受賞し、デビュー。11年『華竜の宮』で第32回日本SF大賞を受賞。18年『破滅の王』で第159回直木賞の候補となる。SF以外のジャンルも執筆し、幅広い創作活動を行っている。『魚舟・獣舟』『リリエンタールの末裔』『深紅の碑文』『薫香のカナピウム』『夢みる葦笛』『ヘーゼルの密書』『播磨国妖綺譚』など著書多数。

「2022年 『リラと戦禍の風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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