上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929107

感想・レビュー・書評

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  • 日本に執事がいないわけだよ「外商」があるんだから。

    お金だけではなく外商も使うのがお金持ちもとい上流の方々のたしなみ。親から子へと伝承されるものなんですね。

    成金は人がなかなか遣えないけれどそれを育てるのも商売としては大事。

    これからは外国人と働く女性。

    接客や上質のファッションについてもいろいろ学べて面白かった。

  • 富久丸百貨店の外商に異動になった静緒(しずお)のお仕事物語。いろいろなお金持ちのお客とのエピソードがあり、テンポよく読める。ストーリーは想像通りだけれど、楽しく読める。

  • 「トッカン」シリーズ(『トッカン―特別国税徴収官―』、『トッカンvs勤労商工会』、『トッカン the 3rd: おばけなんてないさ』)の高殿円のお仕事小説。本作の舞台は百貨店の外商部である。

    デパートで年間100万円ほどの買い物をする上客は、お得意様口座を持つことができ、1割引きという特典が付くほか、外商員と呼ばれる「御用聞き」が家に出向く。希望の商品を持って行くだけでなく、贈答品の相談に乗ったり、ケータリング等を請け負ったりする。
    そうした外商部に働く側の目から見た、お仕事の「裏側」を垣間見られるエンタメ小説である。

    年収1000万を超えるのは全世帯の1割なのだそうだが、本書に出てくるお金持ちは、それより一桁上以上の収入だろうと思われる。月々100万にも達するような買い物は、年収1000万ではちょっと手が出ないだろう。
    本書の舞台、関西の老舗百貨店・富久丸外商部の顧客は、芦屋の高級住宅地に住むような人々である。
    主人公の鮫島静緒は、長身できつめの顔立ち。高卒でケーキ店の営業として働いていたところを、富久丸に引き抜かれ、さらにはそこで手腕を認められて、男の城と呼ばれる外商部で働くことになる。
    さまざまな事情を抱え、難題もふっかけてくるお得意様とどう渡り合っていくかが読ませどころである。

    「トッカン」シリーズに比べると、幾分落ち着いた筆致で安定感が感じられる。
    劣等感を抱えつつも、媚びず、自分の持ち札で何とか勝負していく主人公が心地よい。
    ちょっとウェットなトーンが混ざるのも、J-POP的というか、浪花節的というか、気持ちよく涙が流せる感がある。
    「上流階級」というタイトルはちょっとナナメに外れている感じもするが、知らない世界もうかがい知れて、しかもエンタメ、軽めに読めて十分楽しめる1冊だと思う。

  • 小説版「リアル・クローズ」ともいえる、いつかTVドラマになりそう・・・。[リアル・クローズ]と違って、この主人公はありとあらゆる「販売」を愛していて、あがいている、現代の日本女子版の「カーリー」のような高殿円らしい作品。

    ヒギンズ教授のいない、自前で頑張るイライザは、自分の仕事にも共感できるところなので、深く頷いてみたり。

    「なぜ女だけ、仕事と人生とを切り分けて言われるのだろう。」

    「値札のつけられない人」になる、というのはかっこいい目標だな、と思ったり、初志貫徹して職人になる道を選ぶ外商の神様がかっこよかったり。

  • 面白かった! 
    上流階級のあれこれに、外商の難しさとやりがい。
    へぇ~という知識も色々で、読んでいて楽しい。
    頑張り屋で、男気(?)のある主人公は、つい応援してしまう。
    脇役の葉鳥や桝家も、魅力的。
    後半には、ぐっとくる場面も。
    素敵なお仕事小説。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2013/12/post-761a.html

  • 大好きなシリーズの1作目。百貨店の外商という普段見ない世界のお仕事小説を読んでみたくて買った1冊だけれど、それぞれの顧客からのリクエストと関係性、それで成長していく主人公の静緒の奮闘が好きで何度も何度も読み返している小説。

    シリーズ通して読み返すとこの頃のツンケンしている桝屋も好きだよ。笑

  • 上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部 単行本(ソフトカバー) – 2013/11/16

    高殿円氏による作品。(1976年兵庫県生まれ)
    2013年11月20日初版1刷発行。
    初出「小説宝石」2012年12月号~2013年7月号

    題名にある通り、我が国におけるアッパークラス、
    上級階級、Web上の俗語には上級国民なる呼び方もある。
    その層への百貨店の営業、外商部の奮闘ぶりを
    小説化したものだ。
    普段の買い物では本屋、Amazon、ドン・キホーテ、コンビニ程度
    なので全く想像がつかない世界だ。
    というより買い物していく金額は半端ではない。
    いわゆる勤め人、ビジネスパーソン、公務員では
    まず百貨店外商部を利用する事は生涯を通じてなかろう。
    自営業などで成功をおさめた人が使用するという印象。

    いつの日か日経新聞の広告欄で本書が紹介されており
    表紙の絵柄が印象強く、ずっと覚えていた。
    もちろんトッカンの作者の作品でというのは理解していたが・・

    主人公である鮫島静緒。
    ケーキ屋からの百貨店勤務、バイヤーと来て
    外商部への配属となった。
    尊敬する葉鳥の顧客を引き継ぐべく奮闘するが・・
    虎穴に入らずんば虎児を得ずと芦屋の高級マンションに
    格安料金にて入居し新規開拓に勤しむ・・(葉鳥による紹介)
    そして後輩社員、桝家修平(ゲイと判明)とシェアリングで
    同居することに・・と入ってもかなり広い屋敷に近いマンションなので
    問題なく生活をしている。

    心理描写、桝家とのかけあい、自身の葛藤、外商の難しさ、
    顧客の願いを実現したい自分と会社の指示(扱うものを売れ)との
    板挟み、様々なものが上手く表現されているなと思う。
    読み終わってこれが高殿円のちからなんだなと実感。
    仮面ライダーのベルトの獲得という目的もかなり最初に出てくるが・・
    後半に桝家修平が静緒に渡してくれる箇所は感慨深い。

    印象に残った部分を抜粋

    統計的には、日本には年収1千万を超える世帯は10%ぐらいしかいない
    そのわずか1割の金持ち相手に、百貨店の年商の約3割を叩き出す。
    それが静緒たち究極の営業-百貨店の外商なのだ。

    外商というのは百貨店の柱だ。
    外からは見えないがその経営を支えている母体といっても過言ではない。
    年間売上の3割から4割を、各店舗につき、たった百名ほどの外商部が叩き出す。
    その仕組みは思ったよりは単純だ。富久丸百貨店のカードを所有していると
    お買い物ごとにポイントがつく。当然店側はどれくらいの金額を買い物したのか
    把握している。そしてその額が50万円以上になると、その情報が外商部の
    事務デスクへ流され担当から電話がかかってくる。

    外商に入ると様々なメリットがある。まず、セール期間でなくとも
    超高級ブランドをのぞき、ほとんどの商品が1割引きになる。
    それは食品も含めてなので、わざわざ百貨店に生鮮食品や日用雑貨を
    毎日のように買いに来る客もいる。
    その代わり、年間70万円以上というノルマがあって、これを下回ると
    外商カードを取り消されてしまうこともある。
    また年間使用額によって割引率を細かく分けている百貨店もある。
    だいたい月にして6万円弱買い物をしていればほぼ永久に外商の客でいられる計算だ。

    外商の客は、わがままを言ってもいいだけの代金を百貨店に支払っている。
    だからこそ、外商の仕事は「なんとかする」ことだと葉鳥に教わった。

    外商を使っている客の中には、ただ便利だからというだけではなく、
    ある種の見栄をはりたい人間も多い。知人とは同じ百貨店を使わない、
    自分をより贔屓にして欲しい。口にする理由はさまざまでも、
    見栄は重要な利用要因であることは間違いないだろう。
    重要なのは、それが見栄であるのか挟持であるのか見抜くことだ。
    その上で、そのどちらも心地よく充たすのが外商の仕事なのである。

    教養とは、振る舞いです。手間暇かけた身なりと、正しい日本語と、落ち着き
    そのどちらかが欠けても成り立ちません。百貨店が最も重要視すべきサービスは
    これだとわたしは思っています。経験を積み重ねないと手に入らないもの。
    値札のつかない人間としての価値です。

    才能のない人間のとるべき道は2つだ。
    ひとつは努力が才能を超えるまで続けるか、それとも別の道を模索するか。

    仕事持ってる関西のゲイは堂山町とか出入りしにくい
    どこの誰が見てるかわからないでしょ。

    これからは外商も変わっていかなくてはならない。
    日本の富裕層は多種多様になり、いままでのように家にいるのが女性だから
    口が上手くて見た目の良い男性を外商にまわしておけばいいという単純なものでは
    なくなるでしょう。独身で仕事が忙しい女性にこそ、下着のサイズを測れる
    女性の外商員が必要なのです。

  • ちょっとおめかししてデパートに行き、
    屋上のメリーゴーランドも最上階の食堂のお子様ランチも記憶にある最後の世代としては、
    最近のデパートの衰退っぷりは見ていて心が痛むものがある。
    夢とサービスを売るはずの百貨店が、速さと低価格至上主義の世相に太刀打ちできるわけもなく
    このまま消えて無くなってしまうのではないかと危惧していたところ。
    しか~し!!100円でも安いものを求める庶民と違い
    本当にお金を持つ人たちにとっては、デパートの外商は欠かせないものらしく
    何百万円単位の商品がどんどん売れていく様が気持ちいのなんの。
    お金持ち(成金ではない)の世界をのぞき見することができて面白かったわ。
    その2もさっそく読まないと。

  • デパートの外商なんて無縁だが大変な仕事というのはわかる。

  • のっけから、お金持ち・・・もとい上流階級が思う男性用高級腕時計がロレックスやオメガ? でズッコケそうになったが、この手の小説は分かりやすさが一番、リアリティなんぞ求めてはいけません。あくまでもセレブに憧れるワーキングクラスのお嬢ちゃん達が主な対象読者なのですから。と、非対象読者層のおじさんが言うことなかったですね。野暮でした。

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著者プロフィール

1976年兵庫県生まれ。2000年『マグダミリア三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。主な著作に「トッカン」シリーズ、「上流階級 富久丸百貨店外商部」シリーズ、『メサイア 警備局特別公安五係』、『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』、『マル合の下僕』、「カーリー」シリーズ、『剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎』、『主君 井伊の赤鬼・直政伝』(文藝春秋)など。2013年『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。漫画原作も多数。

「2023年 『忘らるる物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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