絶叫

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334929732

感想・レビュー・書評

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  • 最後の最後、エピローグまで読んで真実に気づいて怖くなった。

    最初、鈴木陽子はただ愛されたくて甘やかされたいだけの女と思っていたけど、読み進めながらどんどん印象が変わっていきました。
    人生を決して諦めてはいないけど、達観していて、無機質で、頭のいい女だった。
    奥貫綾乃の方が、自立しているけれど弱い女と思ってしまった。

  • あなたとわたし。本来はあり得ない主観と客観をうまく織り交ぜ、事実と心情を破綻することなく融合させている。でもそれすらもすでに騙されてる。
    あらすじを呼んで、どん底の女が、どん底の最期を迎える話だと全522ページ中の471ページまで信じてた。もしや、これはどんでん系なのか?
    しかしまだ甘い。505ページで彼女の名前を見るまで真相には気づけず。間違いなく読み終わったあと、ページを遡ることになる。

    すべては必然であり、己で選びとれることなんかひとつもない。分岐のない一本の線の上を転がっていくだけ。でもそれを俯瞰して見通すことなんかできない。何もわからない。その事実の本質はつまり自由だということ。「あの時ああしていれば」はない。今と過去は一直線、今と未来も一直線。当たり前と言えば当たり前。ぷちぷちと笑う悟りを開いた金魚の対極にいるのが素敵な選taxi竹野内豊ですね。分かります。

    物語の軸の両端にある綾乃と陽子の視点が、物語の終着であり真実でもある中心に向かって歩み寄ってゆく構成。核心にせまるにつれてその切り替わりが早くなってゆくのも、こちらの焦りや高まりを煽り、ページを捲る指が止まらない。

  • うわぁー!!!そうか!!語りの違和感そうきたか。読み終わって、主要部分読み返しました。

    凄惨な孤独死の現場に立ち会った刑事と、鈴木陽子と思われる遺体。
    陽子に対して語りかけるように進む陽子自身の壮絶な生き様と、遺体の身元確認の為に捜査する刑事の語りで、なかなか厚みのある1冊がするすると展開されていく。
    どこから、陽子は転落していったのか、分岐点はどこなのか考えずにはいられなかった。あるいは、この親の元に生まれた時からなのか、、、?
    生き抜く強さとしたたかさ。

    それにしても、刑事の我が子に対する虐待からの離婚、親権放棄、警察に復職設定の既視感。何のタイトルだったけ??そこだけがモヤモヤする。

  • すっっごく…面白かった。こんなに引きずり込まれるように本を読んだのは久しぶりかも。
    マンションで孤独死した鈴木陽子という女性。その身元を辿っていくうちに事件の匂いを嗅ぎつけた女刑事のターンと、鈴木陽子という女の人生を何者かが語り手となり生まれた頃から遡っていくターン、2つの物語が徐々に近づいていって交錯する時、まさにタイトル通り絶叫しそうになった。過去のターンが徐々に現代に追いついていって真相に辿り着く、という物語の構成も面白くて、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。陽子の転落っぷりには途中で読んでいて辛くなったけど、終盤の怒涛の展開には鳥肌…ラストには驚愕。現代社会の暗部を抉ったとても面白くて、とても怖い小説だった。
    この作者の本は前一冊だけ読んだことあるけど、他の本も読んでみたくなりました。

  • 宮部みゆき「火車」を彷彿とさせるが
    これはこれで傑作だと思う。

  • 日本推理作家協会賞候補。序盤は宮部みゆき『火車』を彷彿。読み進めると、桐野夏生、角田光代、吉田修一がテーマにしそうな闇が広がる。重たいのに、先が気になって気になってしょうがなかった。ラストはなんとなく予測できたが、それでも衝撃的だった。タイトルの『絶叫』は、後半の二度の決断の場面からだろうか。読み終えてから、少し放心状態になり、色んな社会問題を考えさせる作品

  • 見た目も能力も名前も極めて平凡な女子が大人になっても平凡に生きていたが、背伸びしては堕ち背伸びしては堕ちの生活に陥る。そんな彼女が妙な思考と生き方に大変貌するのですが それは拍手喝采にはまったく反する形であり、そこまでやっちゃう?!と呆れました 笑。救い難い人間がたくさん出てくるけど一番救い難い人間は.....。それなのにぐいぐい読ませてしまう一風変わったミステリー。

  • 前作「ロスト・ケア」の衝撃が残ったまま、今作へ突入。前作では、いろんな人たちの、いろんな人生の転落が描かれていたが、今作では鈴木陽子と言う1人の女性の壮絶な人生が描かれる。弟の死、父親の失踪、自身の離婚、生保レディから風俗嬢へ。そして、保険金詐欺へと転落していく…登場人物が一貫して、まともな人がいないのも独創的。そこまで転落しても、諦めない陽子の生き様が本当に凄い!
    そして、今回もラストにやられた!
    思わず、本をひっくり返して、確認しちゃった…
    これが2作目とはとても思えないくらい、これからが楽しみな作家さん。あ、これ、前作でも書いた…でも、何度も書きたくなるくらい楽しみ♩

  • よくできている。
    よく練られていて確かに面白かったのだけれど…なんとなく予想していた結末だったのと、女ならではの苦しみや暗部のようなものをさもわかったように男性が描いているという印象が拭えず、どうにも居心地が悪くて、一歩引いてしまっている自分がいた。そのせいで目一杯楽しめなかった。
    どう、女ってこうだろ?わかってるだろ?的にどうしても見えてしまって…。

    実際の時代の流れや社会の出来事などを絡めているので舞台の臨場感はあるのだか、それが余計に、主人公の嘘臭さ、想像で描かれた作りモノっぽさを際立たせていたように思えた。
    ごめんなさい、単純に好みの問題です。

  • 凄い!やられた!怒涛の最終章、頭が混乱した。ここまで来ると、陽子を応援したくなってきた。

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著者プロフィール

葉真中顕

1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞しデビュー。2019年『凍てつく太陽』で第21回大藪春彦賞、第72回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。

「2022年 『ロング・アフタヌーン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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