啼かない鳥は空に溺れる

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 691
感想 : 96
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344027954

感想・レビュー・書評

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  • 一筋縄ではいかないんですよね、母と娘。血が繋がっていてもうまくいかないものはいかないし、血が繋がっているからなぜ? どうして? が止まらないこともある。表面上うまく関係を紡げているように見えても実際は違うのかもしれない、それが母娘。

    唯川恵さんの作品久しぶりに手に取りました。さすがですね。あらわすことが難しいどろどろな嫌悪をじつにうまく描写されている。途中吐き気までした。巧いなぁ。

    プロローグはひとりの女性のブログからはじまる。毎週末のランチを娘と過ごす日々を書き綴ったブログであり、ちょっと贅沢をし、早くに夫をなくした母一人子一人の女のブログだ。
    それを読んで鼻白む母と不仲な【千遥】と、そのブログの筆者の娘である【亜沙子】のふたりの目線で物語は並行し、進む。
    単に母娘の関係の難しさを描いているだけではないのが素晴らしいと思った。ここにあるのはもはや狂気。ラストにかけて恐ろしすぎて鳥肌立った。うわー、唯川さん意地悪いなぁ、腹黒いなーと、思わず苦笑い。でもそれがこの小説を際立てて良くしているし、そう簡単にはうまくまとまらない、それが母娘よねとも。

    以下ネタばれあり。

    わたしは二人の女性どちらにも肩入れすることなく物語を読み進めました。言葉という虐待で幼いころから苦しめ娘をトラウマに追い込んだ千遥の母親よりも、娘にべったり依存、ブログを使い第三者へやんわりと屈折した愛情を見せつけ、次男とのお見合いを無理やり設定し、やがてその男が小児性愛者であることがわかり婚約を破棄した娘を慰めるのではなく、なんとかしてその男との結婚をさせようとすること、ブログに書いちゃったしなんとかして、、、と手首まで切っちゃうこと、それから仮病を使って娘の気を引こうとすること、そしてそれに気づいた娘が海外へいってしまった、しょ気てるのだろうけどそこに最後のエピローグでのブログ内容はぞっとしました。

    脳梗塞で母が倒れたことで大嫌いな母を介護することになった千遥。排便した母に臆することなく献身的な世話をするたび母に「ありがとう」とつたない言葉で感謝され、しだいに過去のトラウマと向き合った千遥。婚約も破棄し、大嫌いだった母と毎日向き合い、ブランド服も脱ぎ捨て地元の友達とつるみ、ようやく幸せだなって、愛があふれかえってた瞬間に、幼いころから母に言われ続けた「泣けば許されると思うな」と後遺症が残る現在の母から言われたところで千遥の話は終わった。
    ほんと意地悪いなぁ、唯川さん笑。ぞっとするよ。読者に想像させるのは構わないけど、もう破滅だよね。せっかくいい感じにまとまったのに、それ言われたら千遥はどうするんだろ。殺しちゃうんじゃないだろうか、母親を。

    いろいろ考えさせられる小説でした。これはもうホラーそのもの。久々にぞっとするいい小説が読めたなと個人的には大満足です。

  • 愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。
    一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、母と二人助け合って暮らしてきた。

    千遥は公認会計士の試験に受かった年下の恋人と、亜沙子は母の薦めるおとなしい男と、結婚を決める。
    けれどその結婚が、それぞれの“歪んだ”母娘関係を、さらに暴走させていく。

    お名前はよくお見かけしますが、初めて読む作家さんでした。
    母と娘の関係性に焦点を描いたこの作品、ものすごく、おもしろかったです。

    そもそも、母と娘の関係って、ちょっと特殊ですよね。
    母は娘を同一視しやすく、一方でライバル視しやすい。
    そして娘にとっても母は幼少の頃から一番近く、承認を得たいと思う相手なのかもしれません。
    互いに自立していたらこんな軋轢も生じないのかもしれないけど、良くも悪くも母親は無視できない存在だったり、距離の取り方が難しい。

    特に毒親というわけでもなければ、過保護すぎるというわけでもない、普通の母親に育てられたと思っていましたが、読みながら思わず親との関係性を省みることになりました。
    結婚とか、介護とか、親子の関係性が変わるきっかけってきっとあるんだろうし、当たり前かもしれないけど、いつまでも同じじゃないんだなぁと噛み締めながら読みました。

    きっと子どもへの愛情を一瞬でも持ったことのない母親なんていないと信じたいけど、それでもすれ違いが生じるのは、どちらかに、あるいは互いに相手への甘えがあるからなんじゃないか、なんて風に思いながら本書を読み終えました。

  • 2組の母娘の呪縛と依存の物語。

    面白くて一気読みです。
    母であり娘である私には、心当たりはないと自分では信じたいけれど、娘はどう思っているか、若干の不安も感じます。

    子供に対して、自分の思い通りにしたいと思ってしまう過ちは、多くの親が犯してしまう事なのかも。
    心しておきたいと、自分を戒めようと思いました。

    それぞれの母娘の最後が怖いです。
    呪縛はずっと続くのでしょうか。

  • すごく面白かった。
    母と関係が悪い女性と、一見母と関係が良好な女性の物語。
    自分と母の関係性を重ね合わせて読んでしまった。
    自分も母と、学生の頃は共依存関係みたいな感じだったので、どちらかというと亜沙子に共感する部分が多かった。ある時から、母は私のやることを尊重してくれるようになり、縛りつけるような生き方を辞めてくれたので、とても関係が良くなった。この本を読んで「人はなかなか変わらないんだなぁ」と、千遥の母を見て感じたが、そんな中でも私のためにも自分のためにも変わってくれた母を、改めて誇りに思うとともに感謝の気持ちでいっぱいになった。

  • *愛人の援助を受けセレブ気取りで暮らす32歳の千遥は、幼い頃から母の精神的虐待に痛めつけられてきた。一方、中学生のとき父を亡くした27歳の亜沙子は、母と二人助け合って暮らしてきた。千遥は公認会計士の試験に受かった年下の恋人と、亜沙子は母の薦めるおとなしい男と、結婚を決める。けれどその結婚が、それぞれの“歪んだ”母娘関係を、さらに暴走させていく*

    さすがの筆力に唸りながら、面白過ぎて一気読みです。母と娘とは言え、女同士の静かな火花が見事に描かれています。母は愛情と信じ、娘は束縛と捉える、の一文には、深く頷きつつもやるせない。二人の娘が出した思い切った決断にも驚きましたが、それを受ける母たちの反撃ときたら…!ぞっとする結末を予感させますが、そこがまた素晴らしい。リアルホラー的な読後感です。

  • 2組の母娘の話にどんどん引き込まれ、一気に読了。
    どちらかが一方に依存する親子の話は、さして珍しくはない。
    わたしは幸いそういう関係にないが、周囲にいる母娘のことをつい思い浮かべた。

    結局、幸せなのは千遥なのか、亜沙子なのか。

    比べるものではないけどつい考えてしまうラストだった。

  • 決して他人事とは思えず、読み進めるのがとても辛かった。
    「これだけあなたのことを思っているのに、どうして分かってくれないの」という愛情は、子にとっては親のエゴでしか無いわけで。
    親の気持ち子知らず、とは言ったものだけれど
    子の気持ち親知らずだと実によく思う。

    これで和解できたかメデタシメデタシ…とはいかないのが唯川流だなと、
    ラストはゾッとして後味が悪かったです。(そこが良いんですが)

  • この小説はやばい。たくさん母娘の話は読んできたけど、ダイレクトに胸に響くし自分の現実と重ねすぎて目をつぶって、次のページが開けなくなったりもした。私は亜沙子だな、と思ったけど、千遥は別の意味でとにかくやばい。

  • 2015.8.5リクエスト 913.6ユイ
    2015.8.30

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