東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと (幻冬舎新書 か 16-1)
- 幻冬舎 (2012年10月26日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344982840
作品紹介・あらすじ
3月11日14時46分。地震発生後、著者は官邸地下の危機管理センターへ直行した。被災者救助に各方面が動き出す中、「福島第一原発、冷却機能停止」の報せが届く。その後、事故は拡大の一途をたどった。-このままでは国が崩壊する。いつしか著者は、原子炉すべてが制御不能に陥り、首都圏を含む東日本の数千万人が避難する最悪の事態をシミュレーションしていた…。原発の有事に対応できない法制度、日本の構造的な諸問題が表面化する中、首相として何をどう決断したか。最高責任者の苦悩と覚悟を綴った歴史的証言。
感想・レビュー・書評
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東日本大震災発生当時、総理大臣だった菅直人さんの著作。民主党政権、取り分け菅さんは大災害の最中に感情的になり現場を混乱させたというようなイメージがあった。映画Fukushima50でも酷い描かれようだったし、菅さん視点で見た震災に興味があり本書を手に取った。
原子力事故が起きることはもともと想定されていない(政府が事故を想定しているという話になれば原発建設に障害となるため)。未曾有の事態を収束するための組織も整備されていない、政府が一民間企業に指示できることも法的に限られている。また現場の状況が目まぐるしく変化するが、その正しい情報がなかなか総理に入ってこないという中で、出来る限りの努力があったという誠実さが伝わった。
東電上層部の説明者が技術的な内容を殆ど理解しておらず苛立ったという記述があるが、それは分かる…と思った。
菅さんは、チェルノブイリ規模の放射能汚染にならずに済んだのは「運」だと振り返る。そうなのかもしれない。
これが別の総理だったら…自民党政権だったら…もっと上手くやれたのか?結果は誰でもさほど変わらないのでは無いかと感じた。
菅さんは震災以降、これまでの考えを改め「脱原発」へと方針変換したそう。事故当時の日本を背負っていた当事者だからこそ出来ることや強い思いがあるのだと思う。菅さんのイメージが少し変わった。
ひとつの物事を色々な視点から捉えることはこれからも続けていきたい、読後改めてそんな風に感じた。
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東2法経図・6F開架:B1/11/283/K
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2020/12/28
コロナ戦争の2020年
振り返ると、安倍・菅自民党政権は管政権以下だった
危機に直面して初めて真価がわかる
逃げずに、国民を守る管直人首相が遙かに偉大
最長政権の安倍首相は現地に全く顔を見せず
自分の意見も表さず
途中で逃げた
2020/12/17菅直人
福島原発事故 総理大臣として
最悪のシナリオ メルトダウン
半径250キロの避難 5千万人日本沈没
覚悟
時間が解決はない
撤退の選択肢はあり得ない
もはや戦争
原発の本当のコストは?
ダメ総理の烙印を押されてしまった
理系総理として一定の基礎知識はあるが、
組織能力が不十分だった -
作中にもある通り、日本はたまたま運良くいくつかの奇跡に恵まれたおかげで今があるわけですが、あの当時、菅直人が総理大臣を務めていたことは間違いなくその奇跡のうちの一つでしょう。菅直人のことは好きでも嫌いでもないけど、もしもあの時彼以外の人間が首相だったら?と考えるだけでゾッとしますね。
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門田隆将氏の「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」を読んで見たら、菅直人がとんでもない人物に描かれていた。一国の宰相らしからぬ言動に唖然とした。同時にこれは、かなり誇張されているのではないかとも思い当人の言い分を聞こうではないかと思い早速読んでみた。
イラ菅の異名通り確かに苛ついて声を荒げてしまったという記述は見受けられるがあまり詳しくは描写されていない。
未曾有の国難の際に一国の宰相であった著者の可もなく不可もない回想録。 -
未曾有の国難に直面した時に一国のリーダーとしてどうすべきか。ということで今回の新型コロナ騒ぎにあたっての安倍政権の対応と、東日本大震災時の菅政権のそれとの比較が最近よく語られている。そのために読んだのではなくてたまたま手に取ったのは偶然なのだが、それにしてもやはりいろいろ考えさせられる。国難と一口にはいっても両者はまったく異質なので同日には論じられないのはもちろんだが、それにしてもだ。現場に近づくことができないまま時々刻々と状況は変化し、常に最悪の事態に向き合いながら手探りで対処しなければならなかった原発事故のときは、菅首相は官邸に泊まりこみだったし、枝野官房長官は記者会見に出ずっぱりだった。もちろん本書は元首相側からみた一面に過ぎないし、客観的にどうだったのかは疑問な部分もあるが、間一髪の危機を免れたのは本当に運がよかった、運に恵まれたという述懐には正直な真情がこもっている。緊迫度が違うとはいえ現政権の緊張感に乏しい対応をみていると、あのときがこの政権でなくてよかったなとつくづく思う。
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「政治家の行動についての評価は最終的には歴史に委ねるしかない」
という菅直人。
地震、津波、そして原発のメルトダウンの時の総理大臣。
その行動を、詳細に書いている。
多分、自民党の総理では、書けないだろうなと思う。
そういう意味では立派だが、「総理大臣」としてどうあるべきか?
という視点で見ていると、ふーむ。表層的すぎるような気がする。
どこが、一番大切なところか?
という戦略的な思考が、全くない。
市民運動家出身であるがゆえに「現場主義」をいうが、
どこが、クリチカルポイントなのかが見えていないような気がする。
「メルトダウン」している現実を、いいごまかしている。
安全神話。「心配しないで」という姿勢を崩していない。
まぁ。どうしたらいいのか、全くわからないのだろうね。
情報が来ないので、セカンドオピニオンとして、
出身校の原子力研究者を集めるなんて、本筋が違う。
確かに、「戦争状態」であるが、深い決断ができない。
明らかに、戦争に負けているのだろう。
何が問題だったのか、きちんと総括する必要があるが、
総括しきれていない。整理能力がなく、叙述がダラダラしている。
それに、言い訳がましい。
そして、脱原発に舵をとるのが、またしても表層的。
困ったもんだ。
平成の日本の劣化を考える上で、いい題材である。 -
【要約】
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【ノート】
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総理大臣の視点からみた福島原発事故。想定外の事態が起きるとどういうことが起きるのか。マネージメントの点から示唆に富んでいた。
改めて原発事故は未曾有の大災害だったのだと思った。 -
[総理の言]未曾有の被害を引き起こした東日本大震災とそれに伴う福島原発問題の対応に当たった元首相が、当時の動きを回想した一冊です。また、脱原発を始めとする原子力、エネルギー政策に対する見解についても筆が及んでいます。著者は、第94代内閣総理大臣の菅直人。
福島原発問題の対応に当たって、当時の総理の問題意識が那辺にあったのかがわかり興味深い。いわゆる「理系総理」ならではの着眼点があったことを本書により知るだけでも、事故対応の際に管氏が首相の座にあったというのは、それだけで何かしらを意味するものであると再認識させられます。原子力政策に関する管氏の主張は既に多く出回っていますが、本書を読むとどのようにしてその主張に至ったかを知ることができ、その点も興味深かったです。
とある福島原発事故関連の書籍の中で、管首相は対応を平時モードから有事モードにしたという指摘があったのですが、管氏がまさに震災及び事故の発生時点から有事モードに入っていたことがわかります。また、その有事モードの中で、下記のように首相権限について無制限とも言える考え方を有していたというのは、いわゆる管氏が「市民政治家」と呼ばれていたことを思うと正直驚かされました。
〜異例ではあるが、国の危機とも言うべき緊急事態が発生した時には、総理大臣はあらゆる権限を行使し、危機回避に全力を挙げるべき責任を負っていると私は考える。〜
それにしても管氏が繰り返し述べることになる「外国から侵略される」という考え方は、どのようにして想起されるに至ったのだろう☆5つ