ドライブインまほろば

著者 :
  • 祥伝社
3.89
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本棚登録 : 454
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635572

感想・レビュー・書評

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  • 重くて苦しくてもう1度読もうとは思えないけど、

    「結局いろんな親がいて、いろんな子供がいる、それだけなんよ」
    という言葉が心にずっしりと響いた。

    この言葉を学生時代に思えたら、
    どんなに楽に過ごせただろう…
    人と同じではないのは当たり前だと納得できた気がする。

  • 継父を殺害し、妹を連れて逃亡した十二歳の少年・憂。彼が逃げ込んだ「ドライブインまほろば」には、娘を失くした傷の癒えない比奈子がいた。一方で弟を殺された銀河は、自らの保身と報復のために憂の行方を追うことに。この物語はどこへ行きつくのか、そしてその先に救いはあるのか。どうしようもなく苦しくて、だけれど読後は穏やかな物語です。
    まだ子供であるのに重過ぎる罪を背負ってしまった憂。彼が本当にいい子で健気で、泣けてきます。「普通の子供になりたい」という彼の願いはあまりに悲痛でした。娘を失くし、そしてその原因となってしまった母との確執を抱える比奈子もまた悲痛。どうしようもない苦しみと悲しみを抱えた彼らが寄り添い、お互いの欠落を埋めるかのように穏やかな生活を送る姿にはほんのすこし温かな気分になれたのですが。それでもこの生活には必ず終わりが来ることがわかっていて、それがまた苦しく感じます。
    そしてそれだけならまだ我慢できるのだけれど。一番つらいのは、「悪役」であるところの銀河もまた苦しみと悲しみしか抱えていないところでした。ヤクザまがいの稼業に手を染め、憂に殺意を抱いて追跡する銀河。だけれど彼もまた弟を失くした悲嘆と、自らが親になることへの恐怖で押しつぶされそうになっている姿にはつらさしか感じられません。自らの犯した罪に懊悩する姿もまた、あまりにやりきれなくて。なぜこんなことになってしまったのか。彼にはもっと違う生き方があったんじゃないのか。いったい誰が悪かったのか。読めば読むほどひたすら苦しくて、全然楽しくない読書でした。なのにぐいぐい引き込まれます。読む手は止まらない。
    それでもきっと希望はあるはず。そう信じて読みました。むしろこれで救いがなかったら本を壁に叩きつけること間違いなし。苦しかった分、胸に沁みるそんな物語でした。

  • 2021.8 重〜い空気が最初から最後まで続きます。でも暗すぎない。
    おそらくそれは暴力シーンや残酷なシーンがあまり描かれていないのでリアルさが感じられないからだと思います。
    でもそれがダメな訳では決してなく、むしろ小説に奥深さを与えてくれています。
    作家の力ですね。

  • 記録

  • いろんな親がいる。虐待、育児放棄、過干渉。
    殺してしまわなければならないほどの環境になってしまった小学生の気持ちは重すぎる。
    最後は少し救われた気がする。

  • 辛い境遇の中にいた者たちが出会い、いつか脱し明るい未来が見えて来る。
    自分にとっては入り込みやすい序章だった。物語を読み進めるうちにどんな終わり方をするのか気になってどんどん読み進めることができた。

  • 9馳星周の作品かと思ったわ。虐待のお話はキツくて辛いけど、これは奈良の田舎という事もあるのか、どこか救いがあって読んで良かった。生きている奴はみんな頑張れ!

  • 遠田潤子にしては救いのある小説。
    あくまでも「にしては」だから、要注意。

    母親に憂鬱の「憂」と名付けられた小学生の男の子、息子を失って壊れかけのドライブインで廃人同様に過ごす女性比奈子、援交クラブを経営する半グレイケメン銀河、の3人が主人公。
    彼らの背負っているものの重さは、今までの遠田作品同様重くて尖っていて冷たい荷物である。

    そんな彼らの生い立ちや現状が序盤から中盤以降まで続く。ここいらへんまでは重くて読んでいてもしんどい。特に憂の人生がたまらなく可哀そうで、この子の母親のクズっぷり。父親と義理の父親のクズっぷりときたら、腹が立って仕方ない。

    物語の後半、なんの因果かその3人が、十年池という場所で一晩を過ごす。そこから物語の方向が変わりだす。3人の人生が転機を迎えて、遠田小説最高に明るい未来を予感させるラストを迎えるのだ。遠田作品らしくない、といえばそうなのだが、このエンディングがこの小説の一番の特徴であり核心部だと思う。

    物語の中で彼らは「世の中にはいろんな種類の親がいる」と言うのだが、彼らのいう親の種類ってのがドギつくて…俺なんかからしたら、その手のクズは子供を作るなと思ってしまう。小説だからデフォルメしてるように思えるが、現実世界にもクズな親はかなりの数いる。ややこしいことにクズに育てられた子供って、それが普通だと思って、自分の子にも愛情を注ぐことができない。なのに自分は愛情を求めて性交をしてしまう。その結果、また親の愛情を受けない子供が誕生してしまう。

    どうにもやるせないが、小説ではなく現実にあること。
    かといって、比奈子のように他所の子に愛情注いて育てるような状況になることもなく、せめて俺は自分の家族には最大限の愛情を注ぐことにしようと固く思うのである。

  • 家族とは、考える本かな。私は、安らぎの場所として一緒に過ごして行く構成員と思う。

  • 久しぶりの遠田潤子、お得意の情念ドロドロ物語。相変わらず社会のルールから外れて生きなければならなかった人々の物語が雪だるまのように転がっていく。特に子供たちの描写が本当に上手。「ドライブインまほろば」という牧歌的な舞台と、そこに引き寄せられてくる子供(憂鬱の憂、来海の兄弟)と双子のアウトロー兄(銀河、弟は流星)。そしてドライブインに住み込んで働く子供を失った女・比奈子。どうして家族とは、こうも複雑で濃厚なのだろう…。4.0

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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