ドライブインまほろば

著者 :
  • 祥伝社
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本棚登録 : 454
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635572

感想・レビュー・書評

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  • 義理の父親を撲殺した少年と、幼い娘を亡くした女。
    2人が出会ったのは必然だったのだろうか。
    虐待シーンなど、胸が痛くなるが
    登場人物が抱える闇と、その中で見える少しの希望に
    グイグイと引き込まれていく。
    ただ、ラストは、それまでの丁寧な心理描写が急に下降したような気がする。
    例えば、いくら憎くても初対面の男にナイフで斬りかかることができるだろうか。
    P275
    「夢中でやった。あの子たちを守るためやったら、なんでもする」と書かれているが
    そういうところも甘いような気がした。
    それまで面白くて読ませたので残念。

  • 身勝手な親に子どもが振り回される。けど、その親も子どもの頃に身勝手な親に振り回された被害者で、負の連鎖。憂と来海には負の連鎖を立ちきってほしい。最後は希望が見えて良かったです。重い話なので不謹慎かもしれないですが、読み終えると不思議と心が温かくなりました。

  • 今は車もあまり通らなくなりさびれたドライブインを一人経営する店主の比奈子。ある夏の日、幼い兄妹が迷い込んできて夏休みの間置いてくれと言う。逡巡しながらも受け入れた比奈子は過去に自分の娘を事故で失っていた。そして兄妹の兄は、人を殺して逃げてきていた――

    人生の泥沼に浸かった大人と子供が、必死に未来を、生きる意味をつかみ取ろうともがくさまを描いた物語。愛情を知らない子供は絶望に溺れ、取り返せない生命に未来を失った女は過去に囚われ、双子の弟を殺された兄は半身を喪った空虚に落とされる。それぞれの「生き地獄」はこれでもかというほど哀しく痛く、胸苦しくなる。それでも彼らは「死にたい」のではなく「生きたい」と、願いたいと思っている。その願いを晴れやかに胸にさらせるようになる、そのわずかな救いに、ほうと息を吐くことができる。

    道行きは暗く辛い物語です。

    けれどだからこそ、照らされたわずかな明かりがともる未来の美しさと尊さを感じられます。
    楽しいお話ではないけれど、そういう「救い」を感じられたという意味で、読みがいのあったお話でした。

  • 小学六年生、憂。
    お父さんを殺した。
    お母さんに見られた。

    そこから話が始まる。

    お父さんもお母さんもクソみたいな人間で
    でもそのまた親もクソだった。

    そこに子どもを亡くした中年女性の物語が交差する。
    子どもを亡くす原因になった母を許せないでいる。

    子どもを愛せない親
    子どもを愛するから親を許せない子
    愛するから殺すしかなかった子

    クソ親はクソ理屈で子どもを虐待する。
    でももしちゃんと愛されていたら
    少しは違ったのかな。

    自分を正当化することと
    誰かを傷つけることが
    イコールではいけない。

    昔NHKかどこかで
    海辺のドライブインが舞台のドラマがあったような記憶…
    話は違ったけど
    どうにもその映像で脳内再生してしまった。

  • 過去の泥沼から這い上がることのできなかった者、過去の不幸に囚われている者、取り返しのつかないことをしてしまった者、大切な人を守るために取り返しのつかないことをしてしまった者。この一人一人が絡まって深まっていくストーリー。
    大切な人を守るためだったら、何にも犠牲にする。そんな意思が、憂、銀河、比奈子から感じ取れた。

  • 恐ろしいまでの重苦しい内容。
    児童虐待、売春、殺人など悪行のオンパレード。
    どんな理由があれ、人殺しが救われるのは
    ちょっと違うんじゃないかなー
    銀河も死ねば良かったのに…

  • 奈良県南部、峠越えの酷道を照らす一軒の食堂「ドライブインまほろば」。細々と営業を続ける店に、ある日、憂と名乗る少年が幼い妹を連れて現れ、「夏休みが終わるまでここに置いてほしい」と懇願する。一人娘を喪った過去を持つ店主の比奈子は、逡巡の末、二人を受け入れたが…

    遠田さんの作品は胃に来る重い作品が多いので心して読んだせいか、今までの作品と比べるとそこまで重くもなかったような…いや…十分重いか…児童虐待、そこから引き起こされた殺人、失われた子供、母親との共依存…小学校6年生で「生まれてきてからなにもいいことない」と泣く憂を思うと悲しすぎる…

    双子の絆というとこの間、読んだ「フーガはユーガ」を思い出すけど、こちらの双子は絆はあるけど勝手だなぁ…それはこどもを虐待していい理由にはならないと思う…でも銀河と流星の過去も辛いものがあったしなぁ…せめて最後はほんの少し明るい未来を思わせるかんじで良かったです。

  • 十年に一度現れるという十年池、そこで一晩過ごすと生まれ変われるという伝説。虐待されてきた少年が妹を連れて逃げ、娘を亡くして離婚した女と出会う。親からの虐待、虐待の連鎖、重いテーマを扱いながら、最後は伝説の通り光に向かって歩めるようなエンディング。ドライブインまほろばの山菜ピザ、とても美味しそうだった。

  • ドライブインまほろば
    遠田潤子さん。

    グイグイと引き込まれていった。
    この本は、
    読んでみないとわからない。
    すごい本でした。

  • 預かった溺愛する孫を不慮の事故で死なせてしまう祖父母はこの世で最強最悪の不幸であるといつも報道を見ていて思うのだがそれに飽き足らずネグレクトやペドフィリアまでをもグリグリとねじ込んで来る遠田ワールド、まったくもってこの人の不幸辞書の充実振りには畏れ入る。
    今回もそんな不幸せの連鎖のなか心に傷を持つ人々が血生臭い事件を巻き込みながら展開して行くのだが銀河のいい人具合が明け透けでラストの着地点が見えてしまうのが少々残念なところ。
    ハッピーエンド路線も悪くはないがやはりハードボイルドは滅びの美学こそが真骨頂、遠田さんにはそんな作品を期待したい

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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