おはぐろとんぼ (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408550329

感想・レビュー・書評

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  • 主人公と彼ら彼女たちを取り巻く人達、身の丈に合った生活を精一杯してますが、ふと、彼らにとって立身出世という概念があったのかどうか、知りたくなります。
    いずれの著作を読んでも、ほのぼのとした読後感を持ちます。

  • 江戸の町の堀を舞台に、町人から武士まで、悲喜こもごもの人情を鮮やかに映し出す時代小説集。
    江戸時代、生活に密着していた堀。物質を運搬するだけでなく、人の心を時にはなだめ、時には悲しみを流していた。出会いがあれば別れもあり、時が過ぎ行くように、情も良くも悪くも静かに流れる。

  • ジョイ・ノベル発表の6編の連作短編。2009年1月刊。2011年4月文庫化。再読。「御厩河岸の向こう」は、不思議な話で、楽しめました。宇江佐さんの不思議な話が好きですが、少ないです。他には、泣きの銀次「虚ろ舟」くらいでしょうか。「隠善資正の娘」はドラマチックで、とても好きなお話です。デビュー後20年に渡ってコンスタントに良質な江戸人情の世界を見せてくれたのは、とても貴重です。

  • 人情ものはやっぱり好きだわ~

  • 江戸を舞台にした短編集。
    死がず~っと今よりも身近にあった時代の物語。

    肉親の死がもたらす厳しさ、義理の関係のあれこれが描かれたりもします。

    そうして、凛として生きようとするひたむきさや昔ながらの「情」が、じんわり伝わってきます。

  • 心が疲れかけた時は宇江佐真理が効くなぁ

    この短編集なんて、宇江佐市井物の模範回答集みたいな感じで良い。基本に忠実でブレない物語運びが良い。悪くいやベタなんだけど、ベタって悪い事か?

    日常を一所懸命生きて、その日常の中に喜怒哀楽があって、色んな人との関わりがあって…

    食うに困らぬ程度には豊かになった現代の日本、何かとスピードが上がったのに寿命だけは延びてしまった現代の日本、そんな日本でも基本的な部分は江戸時代とあんまし変わっていないんだと思う。

    だからこそ、丁寧に一所懸命生きてきた江戸市井の人々の姿を読むと心がすっきり洗われるんだろうなぁと思う。

  • 最近お気に入りの宇江佐真理さん♪
    江戸下町の堀を舞台にした短編集。
    水のある風景って、好きです。

  • 江戸時代のじんわり人情物語短編集。

    『ため息はつかない』
    子供の頃両親を亡くし、叔母に引き取られた豊吉だが、クセのある叔母を煙たく思っていた。
    ある日豊吉に縁談の話が来る。
    母と子の情が染みるが、豊吉の縁談相手がユーモラスで楽しい。


    『裾継』
    遊女屋の女将が主人公。
    妻に駆け落ちされた男の後妻となったが、継子とうまくいかなくなった上、夫に浮気疑惑が持ち上がる。


    『おはぐろとんぼ』
    父の働く料理茶屋で幼い頃から厨房に親しみ、父の死後も女ながら料理人として働く主人公。
    大阪からやってきた料理人を最初は煙たく思っていたが、だんだん親しくなっていく話。
    割かしベタな恋愛話だけどこういうの好き。


    『日向雪』
    金に汚く、たかることしか考えていない兄を煙たく思っている主人公。
    兄が金を必要とする理由を知り、そこから人を愛する尊さを学ぶ。
    あまりに兄がクズすぎてイライラした。
    愛だからっていいのかここまで、というイライラが募り、感動にいたらず。


    『御厨河岸の向こう』
    不思議な力を持つ弟と姉の半生。
    ストーリーは一番平坦だったけど姉弟の関係性の描き方が優しくてよかった。


    『隠善資正の娘』
    かつて妻を殺害され娘が行方不明となった主人公が、
    娘が生きていれば同じ年頃の、妻とよく似た女を見つける。
    時代劇的大団円。


    どれも50ページ程度なのでサラサラと進む。
    展開やオチはベタでどんでん返しや驚く仕掛けはないものの、じんわりしみるいい話。

  •  「掘」を絡めた6つのおはなしたち。どれも江戸の日常を懸命にいきる人たちのおはなしで、読んでいて気持ちが良かった。
     表題作の「おはぐろとんぼ」が一番スキ。

  • 人情にほろっとくる。この作者のお話は滋味深い感じがしてほっとします。

    短編のそれぞれがどこかの堀近くでのお話し。

  • L 江戸の堀にからめた短編集

    ため息はつかない…伯母おますに育てられ、薬種屋の手代となった豊吉に薬種屋の次女おふみとの縁談が持ち込まれる。
    裾継…吉原の番頭新造だったおなわはこどもやの彦蔵の後添えになった。おなわと先妻の娘おふさとの関係。おなわの気持ちの持ちよう。
    おはぐろとんぼ…板前だった父の影響で料理人をつとめるおせん。女板前を認めない料理人の世界におせんはやりきれなさを感じつつも独り身を通そうと決めていたそこへ現れた上方の板前銀助。
    日向雪…百姓兄弟のうち竹蔵は兄弟に金の無心をするやっかいもの。竹蔵の行動に弟の梅吉は。
    御厩河岸の向こう…おゆりの弟勇助には前世の記憶と先見の力があった。
    隠善資正の娘…吟味方同心の隠善は16年前に行方不明となっている娘千歳はどこかで生きていると思っていた。ある事件で知り合った縄暖簾につとめる女おみよは先妻に似ていた。

  • 堀を題材にした作品集。どちらかと言えばあまり豊かではない人々の小さな幸せや、ちょっと悲しいお話。読みやすく、風景が目に浮かびそうな、宇江佐さんらしい作品集でした。

  • この手の人情もの大好き。
    しみじみ安心するわー。

  • 短編集ですが、どれもこれもハズレがなかった。
    しみじみとよかった。
    不幸なお話ではないけど、ほろほろ泣けました。

  • 江戸下町が舞台の、義理と人情味あふれる物語6つ。死んでも死んでもお姉さんの家族となって見守る弟の深い情にほろり、お金にだらしのないどうしようもない兄にやきもきする家族と、切ろうとも切れない弟のはがゆい優しさにほろり。鶴瓶主演の映画『おとうと』を思い出しました。

  • 言わなくていいことを言ってしまったり、言わなきゃいけないことを言えなかったり。
    訊きたいことが訊けなかったり、聞きたくもないことを聞いてしまったり。
    そんなことをくりかえしながら、みんな日々を一所懸命生きているんだな。

  • [2011.07.05]

  • 新撰組永倉新八が主人公。

  • かつて江戸の街のあっちこっちにあった「堀」にまつわる人情噺の短編集。宇江佐センセはホントは江戸のヒトに違いない!と思うほどの、相変わらずの風景描写の濃さ。こういうモノを書かせたら、まず間違いないですね。キーワードは、血はつながってないけどそれ以上のつながりを感じさせる家族。かな?

  • 江戸下町に生きる様々な人々が、それぞれに抱える事情を隠しながら、一生懸命生きる6つの短編集です。
    それぞれが、自分の幸せより、身近な親や子、そして兄弟たちを想う姿に、なんとも言えない優しさと切なさを感じます。

    表題作の、「おはぐろとんぼ」は、板前だった父親の姿を見て育った娘・おせんが、同じ料理人となった姿を描いています。
    どんなに腕の立つ料理人であっても、女性は板前になれない時代です。
    そんな彼女の元に現れた子連れの上方板前さん。
    子ども目線の言葉が、なんとも切なく微笑ましかったです。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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