ドラッカー名著集11 企業とは何か (ドラッカー名著集 11)

  • ダイヤモンド社
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784478004319

感想・レビュー・書評

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  • 「企業とは何か」はドラッカーが36歳のときの著作である。前作「産業人の未来」で、第二次世界大戦後、アメリカ中心の産業社会が来ることを予見したドラッカーは、一人ひとりの位置と役割に尊厳と正当性を持つことが社会には必要であるとの保守主義を基盤にして、大規模組織が機能する基本原理と、組織で働く人の位置づけについて、本書は書かれている。自由主義体制を基盤に持つ産業社会にとって、企業、特に大企業の存在は、社会的に大きな影響を持つ、企業の本質とは社会的存在であり、また企業は人間組織である。本書でドラッカーは、その当時のアメリカ最大の企業、GMを、企業の在り方を考える実例として取り上げている。更に、大企業が機能する原理として、分権制の基本原理を実例に即して語っている。第三部 社会の代表的組織としての企業 ~ 第四部 産業社会の存在としての企業        第三部から第四部の問題は、今日的には大きな意味がある。企業の経済的領域から社会と企業の関係について述べている。但し、企業と社会との関係は、GMには受け入れられなかった。なぜなら経営を経済の問題に限定して、原理と考える、その当時のGMのトップには社会的責任は受け入れられるものではなかった。この問題は大企業の通常業務を変更するときも、社会に大きな影響がある。例えば、日本の大企業が勤務体系を、フレックスタイム制にしたり、在宅勤務を増やすだけで、社会に影響がでる、また、採用方法を4月、一括採用から、通年採用に変更すると、大学、高校の入学時期まで影響がでてくる。更に企業が雇用する非正規雇用の人たちの処遇は、企業のなかで、正当な位置と役割が与えられなければ、社会、国家に大きな影響がでる。実例として、2008年の世界金融危機、以後の企業の、非正規雇用者に対する扱い、派遣切りは国家、社会に大きな影響を与えた。最後に大企業は、民間組織としての事業を追求し、経済的な役割を果たしながら、かつ人間的な価値を促し、国益に奉仕することが期待されているのである。

  • マネジメントについて初めて記した書籍といっても良く、GMの内部を分析してまとめた内容になっている。ただ、この時点では完成ではないとドラッカーも言っている。企業は、事業遂行の面だけでなく、社会的な存在でもあり、産業界での存在意義もあるということ。近年のトリプルボトムラインの先駆的な指摘である。ただ、事業として、その中での分権組織を機能させるパートに力が入っていると思う。経営学に近い領域になって、読みやすくなった。

  • 7月と8月の課題本は歴書だと思って読むことにしているけど、その第一弾ドラッカーの1946年の著書「企業とは何か」。この本は確か三作目で第二次世界大戦末期のGMの経営を内部から調べ、企業経営成功の要因を探ったもので、この本がその後の現代マネジメントへと続く根源と言ってもいいのでしょうね。

    でも、本文は他の本を読んでいるとたいして興味深いものはない(^^;。もちろん書かれた年代を思うとすごすぎるのですが。あえて興味深ったものとして、企業の責務としての「完全雇用」と企業の社会的責任だろうか。

    それよりもかなり面白いのが、最後の終章の40ページほど。付録が面白く楽しみっていうのは「学研」以来のことだ。

    終章 成功を原因とする失敗エピローグ(1983年)
    付録1 1983年版へのまえがき
    付録2 1993年版へのまえがき
    付録3 2005年日本語版訳へのまえがき

    (三大付録つきっていうのかな)

    特にこの本の提言に対してGMの3つの反論を書いた終章はすばらしい(^^)反論が素晴らしいということではなく、その記述が今となってはドラッカーの先見性を素晴らしくさらに際立ったものにしているから。

    3つの反論とは次のようなもの。

    1)GMにとっては経営政策とは原理であって恒久的たるべきもの

     「GMを怒らせたのは、経営政策というものは一時的なものでしかありえず、常に陳腐化の惧れがあるというこの考えそのものだった。」
    そうなんですよね。過去の成功体験をいかに捨てられるかは重要な経営政策なんだろうにね。

    2)マネジメントの責任を工員に持たせることは工員に負担増をもたらす

     「戦後の従業員関係の基本は、仕事と製品に誇りを持ちたいという従業員の意欲におくべきであり、労働力はコストではなく資源として捉えるべきである旨を提言した」
    いまでこそ、こうした意見はよく耳にするけど、これが60年以上も前に唱えられていたということは、なかなか天動説から地動説への移行は難しいものであるということかな。

    3)社会的責任などどうして考えついたのか?能力のないことを行うことは責任ではない。無責任である。

     企業は公益にかかわりがあるとし、社会の問題にも関係をもたざるをえない。今なら周辺住民への健康などにかかわる被害を出す企業など1日たりとも存続できない状況である。

    このように、今のとなってみればGMの考えがいかに適切じゃないかは理解できるのだけど、当時は無理があったのでしょう。日本の企業が参考にした本書を取り入れられないというのは、成功体験がいかにその後の変化に害を及ぼすかということの証明のようでもあった。


    「GMがいかなるものになるにせよ、工場の現場において、今世紀前半の産業の象徴ともいうべき伝統的な組み立てラインが、遅くとも2000年には歴史の彼方に消えていることだけは間違いない」って書かれていたけど、組み立てラインどころか、(ドラッカーさんは亡くなってみることがなかったけど)GMそのものが破綻しちゃったんですけど・・・・。


    「1983年版へのまえがき」にはこの本の中で一番気に入った言葉がある。

    「いうなればGMは哺乳類における象ないし鯨ということになる。これに対し、明日を担う企業は人間ということになる。象や鯨はその能力の大きな部分を肉体の大きさから得る。人間はそれを頭脳から得る」

    「2005年日本語版訳へのまえがき」には、IT革命により知識労働者の主役化をとき、「2020年、30年、今度こそ企業は大きく変わる」と締めている。

  • ドラッカー文庫
    2011.05.09-05.13

  • 第一章
    大企業は社会に対してどのような役割を持つか。大企業のリーダーの行動は良くも悪くも社会を作っていく。それは大企業が社会を作っていく主要な役割を担っている。従って、社会に対して良い価値を提供していく義務がある。

  •  再読の必要あり。

  • リーダーの育成について
    企業は製品の開発より
    優れたリーダーを育成することを考える。
    優れたリーダーのいる組織こそ
    素晴らしい製品を開発できる。

    専門に特化しすぎない。
    リーダーはスペシャリストであり、
    ゼネラリストでなければならない。
    総合的な視点で組織を見る力をつける。

    1946年にこの書籍を出して、
    工場のライン生産の終結を物語る
    ドラッカーの先見の明に脱帽です。

  • ドラッカーの著書の中で最も私がオススメする一冊。
    といっても、オススメした所でなかなか手にとってもらえないので、私は、「最初のはじめに、と、最後の部分に、この本が刷新される都度、ドラッカー氏が寄稿している箇所があるからそれだけ読んで下さい。」と薦めています。ハッキリ言ってそれだけでも読む価値あり。

    ビジネスでやり取りされる通貨は「お金」その事は変わっていません。であれば、何十年前のビジネス書であろうと、良著は良著、今日の本でも不用品は不用品。一度は読むと世界が変わります。

  • [ 内容 ]
    組織が繁栄を続けるには、組織内の人間が、自らの能力を超えて成長できなければならない。
    世界に先駆けて企業の社会的責任を説いた現代マネジメントの金字塔。

    [ 目次 ]
    第1部 産業社会は成立するか(企業が基盤となる産業社会)
    第2部 事業体としての企業(事業を遂行するための組織;分権制の組織と原理;分権制をいかに機能させるか;社外パートナーとの連携;分権制はすべての答えか)
    第3部 社会の代表的組織としての企業(個の尊厳と機会の平等;産業社会の中流階級;働く者の位置と役割)
    第4部 産業社会の存在としての企業(企業の存続と社会の利益;生産活動の目的;完全雇用の可能性)
    成功がもたらす失敗―エピローグ(一九八三年)
    付録

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 「まさに、機会の平等という正義、社会における位置と役割という名の尊厳を統合して実現することこそ、産業社会の代表的組織としての企業の最大の課題である。」
     
    ドラッカーの指摘を無視したGMが今大変なことになっているから、その鋭さに感激、みたいなのは結果論だから無し。
     さらに、1946年の時点で現在話題になっている企業の社会的責任を説いているから、その聡明さに感激。みたいなのも結果論だから無し。重要なのは、その理論の先見性ではなく、思考の積み方ではないだろうか。
     ドラッカーには企業の運営にたいして崇高な考えがある。企業の目的は必要なサービスを提供することで、利益は経済的リスクに対する保険料のようなものという考え方だ。
     企業は産業社会の代表的組織だから、完全雇用を実現するという形で、労働者に地位と役割を与えなければならない。完全雇用を実現するには、不況期において資本財生産を確保することが大事。不況時、政府はニューディール政策のような大規模公共投資によって雇用を創出しようとした。
     しかし、政府機能が雇用の創出手段になってしまっては、政府自体の健全性が損なわれる。
    企業は、不況時の雇用を確保するために、利益の一部分をまさしく保険料としてプールしておく必要がある。こんな感じ。
    時代は右と左の時代で、ここにもドラッカーのナチスの全体主義、ソ連の計画経済嫌いが見える。
     ドラッカーの書くとおり、企業は公益性に関わりがあるとするならば、公的資金の注入による企業救済を批判することができないのではないか。

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