「自分のために生きていける」ということ―寂しくて、退屈な人たちへ

著者 :
  • 大和書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784479791027

作品紹介・あらすじ

私は何がしたいのか?「ホンネ」はどこにあるのか?いきいきとした感情生活をとりもどし、よりよい人間関係をきずくための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 現代社会において良いとされる価値観に合わせすぎて、自分の望みを無視していると病気になるよ、という話。外の価値観で自分を評価し続けていると立ちいかなくなる、という話はとてもよくわかる。親密な人間関係を構築するのは自分を充実させてから、というのもよくわかる。

    自分の中がすかすかになってしまったような気がするときにどうやって立て直していけばいいかが、具体的に書いてあってよかった。その一方で「なるようにしかならない」ということも力強く書いてある。自分だけのよろこびに満ちた生をこれからデザインしていけばいいんだという気持ちになれるので、どうしたらいいかわからなくなってしまったら、何度でも読み返したい本。

    理想的な親密性を追求すると反社会的な事態がもたらされそうな点が面白かった。まあそういうこともいずれ反社会的じゃなくなるのかもしれない。みんな自分の好きなようにして幸せになったらいいと思う。

  • 毎日が退屈です。このままではいけない、何かしなければと思うのですが、何をすればいいのかわかりません。どうしたらいいでしょうか?

    こういった質問に答えていく形で、大人の退屈だ、寂しいという思いからギャンブル、アルコールなどの嗜好、人間関係のパワーゲームにはまってしまう心の仕組み、対策を説いた本。

    読んでいて感じたのはそういう寂しさ、生きづらさを感じている人にあせりを感じさせない内容だということ。
    徹底して「それでいい」となっていて、怒りなどマイナスとされる感情にしてもそうだし、アルコール依存症にしても「あきらめた」時にこそ新しい道が開けるとある。
    ただ、例外として嫉妬や恨みの感情はよくないとはある。
    それは感情鈍麻の状態になってしまうから。

    読んでいてホッとしたり安心できる本だと思う。
    だけど、読み終えて何を書いてあったか具体的に言ってと言われると「う~ん・・・。何だっけ?」という内容ではあった。
    こういう本は読み時の心の状態によって受け取るものが違うので、別の機会に読めばたくさん受け取るものがあるのかもしれない。
    多分、今の自分がこの本の内容に合ったモードじゃないんだと思う。

    ただ、そんな中でも私がこの本で最も印象に残ったのは、「安全な場所」の定義。
    『「安全な場所」とは、みんながあなたに関心を持ってくれ、あなたがそこにくるのを待ってくれている場所、あなたがいないと不思議がられて、いて当たり前と思われる場所です。』
    この文章にはハッとなって、その通りだ、私が欲しているのは正にその場だ、と思った。
    そして、この定義に照らし合わせて自分の過去いた場所を思った時、そこから逃げ出した自分を少し肯定できる気分になれた。
    それだけでもこの本を手にして良かった。
    また、この人の別の本も読んでみたいと思う。

  • 斎藤さんの本は初めて読むが、泉谷先生と通じる所があると思った。現代の精神科の常識とは、真っ向対立するような意見と思う。だからこそ、この世の中のあり方に苦しんでいる人には一読を勧めたい。泉谷先生に並び、この世の救いを見いだせたような気がする。依存症とは本当の欲望が横道に逸れたものという解釈は見事と言うしかない。日本的な共依存社会で生き延びていくには、自己肯定を強化していくしかないのだが、それを強めると、会社からはみ出してしまいそうになる。どうすべきかは、自分で考えるしかない。泉谷先生の言うようにプロテクターを纏うことくらいしかないのだろうか。

  • 押し付けがましい言い回しは少ない。

    立ち止まった時に、振り返ってこの本に目を通してみる事で、
    これから先へ前進するためのヒントが眠っている本であるとは思う。

    最後に書かれている女性からの手紙が、一番心にきた。

  • <概要>
    「他人との比較」「理想的な自分を求める」「自分の意志で自分を完全にコントロールできる」をやめることで自分の価値を認め、肯定できるようになる。

    <感想>
    現代の人間は昔のように簡単に死ぬことがなくなった。生き延びるために必死に働かなくてもよくなり、生物として生きる残ることが容易になった。結果、時間があまり退屈するようになった。

    退屈した人間は嗜癖に走り、依存症に陥り、そこから抜け出せなくなるのだ。

    本書は依存症から立ち直るための方法として、インナーマザーを認識し、自身が本当に求めているものを自覚し、自立するための考え方のヒントを提供してくれる。

    自分を「かわいそう」ではなく、「いとおしむ」と感じる時がくる。

    一人でいられるというのは、「孤独」ではなく、他者への依存症が無いということ。


    <アンダーライン>
    ★★★以前は、「生きる」ことはイコール「生き残る」ことでした。みんな、生き残るために必死で生きていました。
    ★生きることはサバイバルゲームで、いつ死ぬかわからないスリルが日常に満ちあふれていました。誰も「退屈」だなどと悠長なことを考えているヒマはなかったのです。
    ・私たちにとっては、明日も生きているのが当然のことで、朝、目覚めたときに。「あぁ、今日も生きていてよかった、ありがたい」と心底感じる瞬間など、めったに持てなくなってしまったのです。
    ・時間はたっぷりあるし、どうもすぐ死ぬこともなさそうで、そこへもってきて「個の自立」です。
    ・私たちは、この社会の中で、「誰かのために生きる」「社会の要請に沿って生きる」ように強いられています。
    ・彼女たちは、「アルコール依存症の夫の世話をせずにはいられない」病気なのです。
    ★★★夫の病気が彼女たちの中身であり、それをなくしたら「自分」というものがなくなってしまうのではないでしょうか。
    ★共依存症者は、相手につくし、情緒的な支えになり、いつの間にかその人が「自分なしではやっていけない」ようにしてしまいます。
    ★★★★彼女たちは「困った、困った」といいながら、どこか優越感を抱いています。他人に頼られることで、自分の力を確認しているわけです。
    ・自分の欲望を知る者、欲望を持つ者を「人間」といいます。欲望がないのは「ロボット」です。その中間に、「欲望はあるが、それが何かわからない」という人がいます。こういう人たちが、自分の欲望を求めて横道にそれていくのです。
    ・人間は他者との間で、この基本的な承認を求める作業を繰り返します。それを「人生」というのです。
    ・対人恐怖者は他者に承認されることを渇望しながら、そこで生じる「他者からの侵入」、「見知られる不安」に脅えている人です。
    ★★対人恐怖者は嗜癖という形でしか、「おねだり」ができないのです。
    ・共依存者は他者の「承認」を求めながら、「おねだり」もできないままにそれを断念しているのです。人としての承認を相手に求める代わりに、相手の欲望にひたすら奉仕し、そうすることで「他者にとっての奴隷」の役割をとりつづけているのです。
    ・本人の思い描く「理想的な自己」を保ち、他人の目に、その理想的自己が映るように努力し続けます。
    ★こういう人にとっての他人とは、理想的自己イメージを保つための小道具に過ぎないので、役に立たなくなれば放り出します。
    ★自分自身の感情を感じずに、他人の目から見て「よい商品」であろうと努力を続けるとき、人間はロボットとなります。
    ・けれども彼女たちは、食べ物を憎んでいるのに、やせた体だけ盗もうとする。自分の欲望にそって食べて得た体型は、自分の責任でつくった体型です。
    ・彼女たちは、食べたいが、太るという責任はとりたくない。
    ★私は、問題を持って悩んでいる人に「おめでとう」と言うことがあります。「悩みも恵み」なのです。それはきっとあなたに成長をもたらすでしょう。
    ・「あなたのため」という利他主義のコントロールという、手の込んだパワーゲームです。
    ・他人の評価で勝ち負けの決まるパワーゲームは苦しい
    ・他人の評価から降りるということは、共依存的な社会、嗜癖社会のシステムにまきこまれず、自分自身の価値観をつらぬくということでもあります。
    ★戦争は弾にあたったら死ぬんだよ。勝っても死ぬんだよ。負けても死ぬんだよ。
    ★「一番の名誉」を求めることに重きが置かれていたら、それが得られなかったとき、注いだエネルギーは全て「ムダ」になってしまう
    ★★★欲求不満の全くない状態とは「死」を意味します
    ★★★泥沼から抜け出して、そんなことをやっていた自分を「けなげだった」「いとおしい」と抱きしめられる気持ちになるときが必ずきます。
    ★★「どうも自分はいつもトランプのババばかりひいている」と思う人は「自分は自尊心が低いのでは?」と疑ってみたほうがいいでしょう。
    ★★★私たちの体の中に湧いてくるものというと、例えば唾液や屁があります。こんなものが湧くことにいちいち責任をとらされていては、生きていけませんから適当に処理しています。感情もこのように考えてはいかがでしょうか。
    ★★★嗜癖者は「意志の力」を信じています。自分の困った事態を、自分の力でなんとか治せると思っています。
    ・(パワーゲームを降りるために)「私はこれでいい」
    ★★★★★「他人の役に立たない自分は生きるに値しない」という信念があるから、おびえつづけ、無理をするのです。けれども、「他人の役に立とうと立つまいと、あなたは自分の個性に従って、「自分のために」生きればいいのです。
    ・嗜癖者とは対人恐怖者なのです。彼らが食物やアルコールに手を出すのは、これらのモノとの付き合いであれば、自分が承認される、されないという恐怖から逃れられるからです。
    ・自分の不完全さを含めて肯定的にとらえることを「自己肯定」というのです。
    ★たっぷりとして自尊心を持っている人というのは、いいかえれば「比較が少ない」人なのです。比較が少なければ「あの人はあの人、私は私」と思えます。
    ★★病気の症状も、ひどい状態からよくなっていくにつれて、他人との比較が少なくなっていきます。
    ・比較をしようという余裕があるのなら、だいぶ状況はよくなっている
    ★自分の責任で選択をし、その結果を引き受けることこそ大人としての成熟であり、「自分のために生きて行く」ということです。

  • 以前から気になっていた人の本。
    自分に向けて読む部分と、周りにいる他人に当たる部分を重ねて読んだ。
    私は、今は、自分自身や環境に不満はないけど、もしかしたらそれ自体に無関心だったり、見て見ぬ振りをしているのかもしれないとドキッとした。
    こういう分野が好きだから、今年はもう一歩進んでみよう。

  • この本を読んで、自分が自分の欲望を見失った「ロボット人間」と化していたことに気づくことができた。
    それもそれで、わたしの人生。
    これからは、少しずつでもロボット人間から脱して、自分のために生きる自立した大人になりたい。

    自立した大人とは、
    適度な退屈、適度な寂しさに耐えられること。
    一人でいられること。
    いいかげんにやれること。
    自分を肯定できること。

    自分に惚れこむことができて初めて、相手に惚れ込むことができる。
    他人や自分をコントロールし合うようなパワーゲームをやめて、個人が自分の欲望を追求し、しあわせに生きることで、周りの人も、社会も、幸せにするのだと思う。

  • 友人の家にあり、共依存について気になり自分でも購入して読了。
    人間の心のしくみがより理解できる本だった。何よりもよくわからない不安は寂しさが原因でそれを理解することが大人であるという結論にうなずけた。

    メモ
    パワーゲーム、お互いのコントロール合戦
    自己評価が低い人ほど支配したがる。

    湧いた自分の感情はそのままにしておく。おならやうんちのように人に迷惑かけない範囲で適当に処理すればよい。
    怒りは自己主張の砕けた破片。
    破壊的な行動は無意識の言語。

    家庭で自分が安全ではないと感じている人ほど家族の中で自分よりもっと弱いものを支配する。

    あるがままの自分を生きたい今までの自分を

  • おっぱいを切望する赤ちゃんとか
    ジイとかなるほどな。

  • これを超える本はまだない

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著者プロフィール

精神科医、家族機能研究所代表。
1941年東京都生まれ。1967年慶應義塾大学医学部卒。同大助手、WHOサイエンティフィック・アドバイザー(1995年まで)、フランス政府給費留学生、国立療養所久里浜病院精神科医長、東京都精神医学総合研究所副参事研究員(社会病理研究部門主任)などを経て、医療法人社団學風会さいとうクリニック理事長、家族機能研究所代表。
医学部卒業後、母校の神経科学教室で精神分析のトレーニングに入る。同時期より、国立アルコール症センターとして発足した久里浜療養所(当時)で臨床にあたりつつ、アルコール依存症など「依存症」という用語を提唱し定着させ、依存症の家族に代表される、温かさや安心感などが提供できない機能不全家族で育った「アダルト・チルドレン」という概念を日本に広めた。著書に『すべての罪悪感は無用です』『「愛」という名のやさしい暴力』(ともに小社刊)など多数。

「2022年 『毒親って言うな!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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