- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480064240
感想・レビュー・書評
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[ 内容 ]
かつて民主主義は、新しい社会の希望であり、人間の生き方を問う理想であったが、いまや、それも色あせ、陳腐なお題目と化している。
しかしそれは、単に現実が堕落したためではない。
その背後には、民主主義を支える思想が、社会の深層で大きく変化したという事情があるのだ。
本書では、デモクラシーのありようを劇的に変容させた現代の諸問題を、「自由主義」「多数者と少数者」「ナショナリズムとポピュリズム」「主体性のゆらぎ」といった論点から大胆にとらえ返す。
複雑な共存のルールへと変貌する姿を鋭く解き明かす試みだ。
[ 目次 ]
序章 現代世界と民主主義
第1章 自由主義と民主主義
第2章 多数と差異と民主主義
第3章 ナショナリズム、ポピュリズムと民主主義
第4章 誰による、誰のための民主主義?
補論 アメリカの政治理論における民主主義論の系譜
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個人的には、正直難しかったです。
高校の政経で勉強した民主主義って、実は他の思想との関連とか歴史的な背景があって、もっと奥が深いものだったんだなぁって思いました。 -
「ぷちナショナリズム」とか安易に取り上げているような部分でちょっと怖さもあるけれども、「民主主義=多数決」という(どこで生産されているかも分からない)通俗的な理解から開放されたときに見える今の日本のおかしさをよく示していると思う。
見通しは良くない、つまり理想的な政治のあり方の提言ははっきりしないのだけど、それは「持続可能な社会」の理想型を一意に決められないような問題だろうと思うし、「少なくともこれはダメ」ということは言い得るはず。 -
現代における民主主義の問題点をうまく掴んでいると思います。
掴んでいるけど、説明をしていない箇所が多くてイライラしちゃう人もいるかも。
現代政治理論にかかわってくる本をを読んでいく上で
有益な問題提起をしてくれている本だと思います。ちょっと難しいかもね。 -
認識転換!
思想史と絡めて民主主義を考えるとこんな側面が見えてくるんだと驚きました。
少数派の意見をきこうとすれば多数決は使ってはいけない。さて、どうしましょうかねぇ? -
「民主主義」について、その理論がいかに構築され変遷してきたのか、またそれが現代社会においてどのように現れているのかについての本。
真新しさを感じるわけではないく、だいたい予想通りの内容。べつに真新しさを求めて買ったわけじゃないのでいいけど。
知識の整理には有用。 -
広く現代デモクラシーについて述べていて、わかりやすくて勉強になる
章立てもうまい
確かに突っ込んではないし、ありきたりっちゃありきたりなのかも知れないけど、新書でここまでうまくまとまっているものはなかなかないと思います -
私が新聞やテレビの報道を通じて感じている現代の日本をとりまいている民主主義への漠然とした幻滅がどこからくるのか、強行採決や衆議院再可決を繰り返し見せられるたびに去来する議会制民主主義の限界を知りたいと思って手に取った期待にこたえてくれた、新書ながら中身の濃い構成で書かれた本です。著者が冒頭で表明しているように、この新書は「民主主義」そのものについて書かれた本ではありません。民主主義が、それ自体と関係するさまざまな概念と混ざり合う中で、日本という国の民意がどのように揺り動き、国民がその経験から民主主義をどのように理解し、与えられた権利を行使してきたかをえがいています。
著者にとって衝撃的体験だったのが、小泉政権下でおこなわれた郵政民営化に論点を絞り込んだ選挙において自民党が大勝して「しまった」ことであることは文章の中から読み取れます。森氏は、小泉による劇場型政治の弊害によって民主主義の重要性と優位性が、ポピュリズムやナショナリズムという別概念の言葉ですりかえられてしまうことで浸食されたことを鮮やかに描き出しているように思えます。
小泉政治へのさめた目線は学者だからこそなしえることだと言えます。それはまぎれもなく、バブル崩壊後の長期停滞によって染みついてしまった閉塞感が原因となって、小泉により期待を抱かされた「ぶちこわす快感」にとらわれてしまった私たちのこころをあぶりだすのに、著者の文章は十分足りえます。特に以下で紹介する印象的文章には、私たちが選挙への投票行動を通じて強く意識するくらいしかない「民主主義」概念とはどのようなものなのかを教えてくれるように思います。
そして、それらの言葉は同時に今の私たちに欠けている民主主義への正しい理解と、利益や見返りを目の前に吊るされて、踊らされてしまっている理解の浅さを鮮やかに示すことでもあるように思えます。自分の一票では何も変わらないと思う人が多く、投票にもいかないのであれば自身が持つ政治的権利や、民主主義を意識することや、過去にどのような苦闘を経て今ある権利を手にするにいたったかを実感することもない。それならば、民が主であろうはずがないわけです。
そして、今は既に読み終わっているので言えることですが、最後の印象的文章を念頭に置きながら大澤真幸氏の『不可能性の時代』をよむことで、自己と他者との関係性が、具体的にどのようなことを意味するのかを知るための突破口になりえるのだと驚いている昨今です。それは、同書の感想文で具体的に書こうと思います。
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民主主義が定着した先進国では、いまだ民主主義を達成していない国とは民主主義をめぐる問題状況が異なる、というのが基本視点。
全編で新自由主義に批判的なスタンスだが、その手の本にありがちな悪罵や偏狭な思い込みがないので、こちらとしても安心して読めた。ポピュリズムやナショナリズム、差異の政治など、なかなか読み応えのある議論も多い。
「熟議民主主義」というのには興味がある。詳しく書いた本を探して読んでみよう。 -
今学期授業を受けている先生の著書。一般向けの本はこれが初めてらしい・・・w
民主主義とそれをとりまく現代の状況をわかりやすく解説してくれている。いろんな方向から頭を殴られたような読後感を得た。政治思想の入口の一つとしてはいい本なのではないかと思う。
最終章のポピュリズムやガバナンスに関する部分が、著者の文章の切れ味の鋭さを示していてとても面白かった。