- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784480089298
作品紹介・あらすじ
日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。ロングセラーを続編とあわせて文庫化。
感想・レビュー・書評
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いわゆる教科書に書いてある歴史とは違って、実際の人々の生活、宗教観などをテーマに日本の歴史を紐解いていて面白い。
特に後半の百姓=農業従事者という訳ではないとのくだりが面白かった。
貧農と言われていた人達の中には実は漁業をメインに営んでいて、実際は裕福な生活を送っていた人達もいたとか。
日本の昔の人々をリアルに感じられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本の歴史ついて、新しい考え方を教えてくれた良書。タイトルに「全」とあるように、本書は「日本の歴史をよみなおす」と「続・日本の歴史をよみなおす」の二本立てになっている。特に続編の内容が、驚きの連続である。網野氏の考察が色濃く出ており、なるほどそういう見方もあったのか、と開眼が止まらない。歴史をもう少し勉強してから読み直すと、さらに面白く読めそうだ。
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農民=百姓
授業ではそういうふうに習ったと思います。
いや区別しないで習ったというべきでしょうか。
ただ本書を読むとそうではないことがわかります。
百姓=武士や商人でない人
塩を作ってたり漁業や水運業をする人もみんなはいってるんですよね。
コレは目から鱗でした。
日本は農本主義で農業が国の基本で租税の中心と思ってました。
でも戦国時代や幕末もそうですが交易が日本を動かしてますよね。
楽市楽座もそうですし亀山社中や海援隊もそうですよね。
僕の今の仕事で考えるとやりたいことをやるためにはお金が必要です。
それは今も昔も同じですよね。
そのお金をどう増やすか。
やっぱり交易が大切なんですよ。
無いところにあるところから持っていく。
無いものを魅せる。
それができれば消費が増えるのでお金が動きます。
歴史に学ぶことはやっぱり多いです。 -
刺激的な本だった。この先生の説から大いに刺激を受けている隆慶一郎の著作を読むときの様な興奮を読みながら感じる。同時期にニューズウィークに掲載されている「コロンビア大学特別講義」を読んだ事もその刺激をより強めてくれた様に感じる。歴史がいかに作られ、残されていくか。グラック教授の授業を読めば、この本で語られた、かつて当然のように認識されていた日本人や日本についての歴史が全く違った真実を埋もれさせていたという事がちっとも不思議ではない。網野史観は今でも議論があるというが、全く違う方向から光を当てたとき、「歴史」とされているものに起きてくる大転回は、歴史の教科書から士農工商が消える、といった程度のレベルではない。歴史は古代から作られ、様々な思惑から選んで遺され、また新しい発見がある。そしてこれからも作られていく。
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あまりにおもしろいので再読したくらい。
網野善彦さんは、日本中世が専門の歴史家だ。この本の内容も中世を舞台にしている。
非定住の海洋民や様々な職能民たちの活躍。貨幣と商業・金融の発達。これら非農耕的な側面を軸にいままでの日本社会像を覆してくれる。
読みながら思わず唸った。
日本は農耕社会で海に隔てられた孤島というイメージだったが、この本を読むとその認識が間違いだったことが分かる。
日本の歴史はこんなにもダイナミックだったのかと驚く。
歴史好きな人はもちろんそうでない人にも是非読んで欲しい。 -
歴史音痴の私が言うのはおこがましいですが、大変素晴らしい歴史の本です!
お百姓さん=農民と教わってきた歴史教育の大きな間違い。
また非人については、神仏に使え世の中の穢れを清める特殊な力を持った人々と言う位置付け。
あー、短い時間では書ききれない…あー…うー -
元々のもの、地のもの、根源的なもの、何層にも大地に根を張った知への憧れとともに本書を繙く。著者は、どんな仕組みで日本中世の中心が出来あがっていったか、その仕組みの意図は何かを語り伝え、『忘れられた日本人』、『遠野物語』等の古典との結束を強く、洞察を深くする研究成果をわたしのポッケに優しく入れてくれた。文字社会と無文字社会、文書の世界と口頭の世界の関係原理、虹の立つところに市場を立てる意味、に関する著者の思考の過程を追体験するように読んでいくと自分の日本史についての無知さ加減を痛感し、暫く感想が書けなかった。
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網野史観の入門書として相応しい一冊。
網野さんの歴史観の捉え方は様々だが、一般の読者には日本史への多様な視点を与えてくれることは確かだ。
百姓と呼ばれる人々の実態、室町時代の商業発展などをつぶさに見ていくことで、非農業国家としての日本を描きだす。
また、差別階級と認識されがちな非人は、天皇や寺社に使える聖なる存在であったことなど、マイノリティに新たな視点を提供してくれる。
歴史に多様な視点を持つことは、皇国史観やマルクス史観など画一的カルト的歴史観に陥らないために極めて有益である。
そして、また、多様性が尊ばれる現代にも相応しいだろう。 -
20年前からのベスト&ロングセラー。
常識は疑われなければならないし、学び続けなければならないということを改めて知らしめる一冊。例えば、中世・近世の日本が決して農業社会ではなかったということ。人口の90%が「百姓」であったが、「百姓」=「農民」というのは近代が解釈した間違いであったということ。もともと「百姓」は百の姓、つまり市井の一般の人々をさす言葉だった。漁民も森民も商人も工人もすべて「百姓」であった。そういうことが、ここ数十年の研究でわかってきた。そんなことがいくつもいくつもあって、こんなに鱗があるのかと思うほど、目から鱗が落ちた。
新しい研究の成果を長い間知らずに、かつて学校で学んだことをそのまま真実だと信じて生きてきたここ数十年。すでに真実ではなくなったことをあたかも真実であるように話、発言をしてきたんだうろなーと思うと恥ずかしい。もっと早く読んでおくべきだった。 -
楽しかった!!!
すごく時間かかったけど、やっと読了!!
結局のんびり言葉を噛みしめながら読んでたら、10日くらい?かかったよ
勉強にもなったし、?となるところもあったし、なるほどこんな感じで話すといいのね、ともなりました