「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書 205)

著者 :
  • 筑摩書房
3.80
  • (9)
  • (23)
  • (17)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 256
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (156ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784480689078

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • Think the Earth Paperで流域思考を知って、興味をもったけど、この新書もとっても面白かった。
    http://www.thinktheearth.net/jp/ttepaper/backnumber/backnumbervol11.html


    行政区も流域ごとに分けて運営してみたら、もっと身の丈にあった政策がとれるんじゃないかな?身近な自然をもっと感じたり楽しんだりできるようになるんじゃないかな?

    ちょっと前に、この考え方をベースにした、小学校5年生3人組の冒険の物語『川の名前』を読んだのだけど、それもとっても面白かったのを思い出した。

    そして・・・ちょうど届いたecomomの特集で、岸先生のフィールドにある「小網代食品店」が掲載されていたのにも、運命を感じる(笑) 三浦半島の森、行ってみたいなぁ。

  • 勉強になりました。

  • 普段、我々は水がどこから来るのかを意識することはない。最近は大雨災害に行政区単位で対応する現状の歪を目にする機会が増えた。テレビ中継で、行政区間の情報共有がなく避難勧告が遅れた事例や、明らかに災害対策能力のない行政区に責任を負わせている事例などを見させられると無力感を感ぜざるを得ない。

    本書は生活圏を行政区の地図でなく、水系からなる「流域地図」から体感してみようというムーブメントだ。

    それは、生活圏のリアルな姿を見る目を失った現代人の未来のための処方箋だ。

    そして、豪雨、旱魃、海面上昇、生物多様性危機を伴う地球環境危機の時代に、平板な地図に基づいた「行政区単位の思考」でなく、水循環する凸凹な生命圏である「流域」を枠組とした「流域思考」で環境適用行動をする必要性を問いかけている。

    「環境革命」の入門書である。

  • 現代の我々は、水道栓をひねれば水は出てきますし、コンビニやスーパーでも水を買うことができるので、我々の飲んでいる水の起源を考えることは殆どないと思います。

    この本の著者である岸氏が述べているように、県や市・区等の境界を気にすることはあっても、私達が飲んでいる水がどの川のものなのかを意識することはありませんでした。

    それを意識した場合に必要な考え方が「流域」というものだそうです。この本で一番印象に残った地図はp51、52にある「流域地図」で、自分の居住している場所の水の源流がわかり、それによると、日本国土の殆どの部分が、109の1級河川の流域に属しています。日本は多くの川に恵まれて都市が栄えてきたことが感じられました。

    以下は気になったポイントです。

    ・ヤフー地図には「水域図」というものがあり、これを使うと自分の家の近くの川が属する水系が一目瞭然で、水系探しに便利(p14)

    ・雨水が川に至るまでの大地の範囲を流域という(p27)

    ・古代の住居跡もしばしば分水界の上に並んでいる、なぜなら分水界はまわりより高くなっているので雨が降った時に一番乾きが早いので建物を建てるのに好都合(p34)

    ・温暖化の進む世界では、これから年に数千、数万種もの生き物が絶滅していく、この原因となっているのは、産業革命以来の産業文明に他ならない(p80)

    ・洪水は、行政区域内ではなく流域で起きる、洪水に対して行政区分地図を基準にしてもどうにもならない(p93)

    ・2011.9に名古屋を水没させかけた台風15号の豪雨は、名古屋市の上空に降り注いだものではない、庄内川流域の上流に降ったもの(p96)

    ・1時間50mmの雨とは、500トンの水のこと(p103)

    2014年1月5日作成

  • 入院中に読了。
    「流域」をキーファクターに、環境、災害、環境保全活動について、流域地図の作成を手掛かりとして、著者の考えを明らかにした良著。

    「里山保全」の批判は理にかなっている。
    里山なら行政をまたいで活動しなくても良いから、調整コストが減り、面倒臭くないなあ、と邪推したりするわけだが…

    以前、流域をキーに、農業論というか環境論というかを書こうとしていた時期があったことを思い出す。中山間地域などについて、流域論を看板にしたものもありましたが、研究の深化はどうなったのでしょうか?

  • 一級河川の流域だけでも日本のかなりの部分が網羅され、それ以外も含めれば日本全国どこかの流域である。これを行政区画で割り振ってしまうから、いろいろな危機に対応できない。いわゆる従来の「地図」が大地の凸凹を忘れさせてしまうのだ、流域地図を作ってみたらいろいろわかるよ、と。行政区が「里山」と言い出して、自然密度が高い所を保全するのは、流域のつながりを考慮しないピントのずれたやり方だ、と。
    流域の文化こそが旧来の文化であり、経済圏でもあった。いま、川を全然気にしない生活をしている人が僕も含めて多いだろうけれど、その結果がグローバル化に丸呑みされようとしているわけで、やはり流域の産業を再生しなければならないのだろうなあ。
    そこら辺までは大きくは踏み込めていないけど、ともあれ流域思考を持つということは、他者とのつながりも考えるということでもあり、やっぱりこれでしょう、と思うのです。

全27件中 21 - 27件を表示

著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜市立大学生物科卒業。東京都立大学理学部博士課程修了。慶應大学名誉教授。進化生態学。流域アプローチによる都市再生に注力し、鶴見川流域、多摩三浦丘陵などで実践活動を推進中。NPO法人鶴見川流域ネットワーキング、NPO法人小網代野外活動調整会議、NPO法人鶴見川源流ネットワークで代表理事。著書に『自然へのまなざし』(紀伊國屋書店)『流域地図の作り方』(ちくまプリマー新書)。訳書にウィルソン『人間の本性について』(ちくま学芸文庫)、共訳にドーキンス『利己的遺伝子』(紀伊國屋書店)など。

「2021年 『生きのびるための流域思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸由二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×