- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488010010
作品紹介・あらすじ
数十年のあいだ封印されていた哀しい事件が捜査官エーレンデュルの手で明らかに。CWAゴールドダガー賞・ガラスの鍵賞受賞作。世界が戦慄し涙した。究極の北欧ミステリ。
感想・レビュー・書評
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とても辛く悲しいストーリーでした。
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構成が巧みだ。
ある誕生パーティーで発見された人骨の欠片、それは一体誰の物なのか。
なんと哀しい物語だろうか。
何度も場面転換があるが、わかりやすく混乱しない。
しかし本作に登場するDVの場面は壮絶で思わず目を背けたくなる。それに加えて警察の地道な捜査が明らかにしていく事件の姿とは。北欧ミステリの秀作である。 -
ページをめくる手が止まらないとはこういう事か。過去の話と割り切れない生々しいDVの描写やエーレンデュルの娘エヴァの周りにいる厳しい環境下の子供たちの様子には目を背けたくなったが、地道な捜査が鎮魂に繋がったと思いたい。
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2001年発表
原題:Grafarþögn -
シリーズ翻訳第2弾。実に読ませる!赤ん坊がしゃぶっていたのが兄の拾った人骨(!)だったことから発見される半世紀も昔の白骨死体。エーレンデュルたちの捜査と並行して語られる、名もなき「彼女」の余りにも辛く悲しい人生。夫から心身への壮絶な暴力を受け続け耐えるだけ人生、人間としての尊厳も希望も全て壊され、唯一、我が子への愛情と母性だけに生かされている姿は辛すぎる。鬼畜のような夫自身もまた、悲惨な生い立ちを抱えた被害者でもある事実がまた重く哀しい。事件のオチと、最後に「彼女」の名が語られる事に救われる思いがした。
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「湿地」に続いてアーナルデュル・インドリダソンのエーレンデュル刑事もの。これでもか、というくらいの暴力、人間のえぐい心理。それがアイスランド、北、暗い、寒い、という先入観で灰色にしみ込んでくる。
今回はレイキャビクの周縁部、第二次世界大戦から戦後にかけて住宅地として広がったところが舞台。初めの骨発見の場面が衝撃的。8歳の男の子の誕生パーティーで赤ん坊が何かをしゃぶっている、それが人間のあばら骨だったのだ。これはこの男の子が近所の住宅建築現場で見つけたものだった。
その骨は誰か? 第二次世界大戦開戦前夜から終戦後あたり。そこで生活していた家族がいた。夫婦はともに生まれてすぐ両親を亡くし、親戚や里親のもとで転々として育つ。女性は最初の子供の相手は子供が生まれる前に海で遭難して死んだ。・・寒いアイルランド、きっと若死にする人が多かったのかな、などと先入観で読んでしまう。が、あの時代は今ほどの長生きではないか。
とにもかくにもこれでもか、という夫の暴力が描かれる。最後まで読むと夫の幼少期の場面もあり、幼少期の愛情の欠如が問題なのか、と思わされる。またエーレンデュルの亡くなった弟のことも描かれ、それがエーレンデュル刑事の生活に影響を及ぼしている描き方。
2003発表 アイスランド
2013.7.12初版 図書館 -
住宅建設地で見つかった人間の骨
かなり古い年代のものと思われ部下たちを含む警察ではあまり興味を示さないが主人公の刑事エーレンデュルは事件の解明に執念を見せる
捜査の進行と平行して語られるある家族の物語はドメスティックバイオレンスの詳細な描写とともに凄惨さを極めていく
このシリーズはどうやら家族の物語のようだ
作者であるアーナデュル・インドリダソンはDVをより詳細に描くことで問題提起をしているようだ
思うに家族の問題は家族だけでは解決しないのではないか
地域社会や政治や行政の力がどうしても必要だと思うが行政は何時でもどの国でも人手不足だ
本作では3つの家族が出てくるがどの家族も問題は次の代にも引き継がれているように思う
実社会でもそうだろう
そしてその悲劇の鎖は人の善意だけで断ち切れるほどにはやはり細くない
主人公エーレンデュエルの家族の問題は微かな希望を残しつつも解決には程遠い状態で次作へ引き継がれる -
アイスランドのミステリ邦訳2作目(原作シリーズでは4作目にあたるもの)。安定の読み応え。住宅地から人骨が見つかり身元を特定するために捜査を開始するエーレンデュルと部下たち。シグルデュル⁼オーリはこんな誰も気にしていない過去の遺物を特定してなんの意味があるのか、地味で不毛な資料を調べる任務に不満たらたら、一方のエリンボルクは捜査の中で知る事になった女性たちの人生に思いを寄せ、不満を公言して憚らないシグルデュル⁼オーリにいらいら。エーレンデュルは赤ん坊を流産して助けを求めて来た娘エヴァ⁼リンドを見つけ出し医療機関に託したものの意識がもどらない日々を重ねて身も心も疲弊しており余裕がありません。人骨の身元が分かっても、それまでの経緯を思うといたたまれない気持ちになります。どんなことにも事情はあり、法だけでは裁ききれないやりきれなさ。ミステリ作品という道具を使って人間を描き出すシリーズだと思います。前作も女性に対する暴力のリアルさが読んでいて辛かったですが、この作品でも、理不尽な暴力と暴言を受け続けて心を失っていきながらも子供たちを必死に守ろうとする女性の描かれ方が非常に真に迫っており、息が苦しくなるような気がしました。訳者の柳沢由実子さんによる巻末の解説文も素晴らしいです。
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大変重く感情を打ちのめす作品。
現実の世界で家族に残忍な暴力を振う事件は知っているけどこの長さの本で読むのは堪える。
作品は読み応えがあるが主人公と娘についての段落は助長だ。
絆について語りたかったのかも知れないが。 -
「湿地」に引き続き、どんどんアーナルデュルの描くミステリーに引き込まれてしまった。
エーレンデュル捜査官シリーズ第二弾。
第二次世界大戦中のある家族について、穴から見つかった人骨をめぐる警察の捜査について、エーレンデュルの過去と娘との関係について、3方向から語られる話がどんどん核心に迫るにつれ、ページをめくるのをやめられなくなる。
エヴァ=リンドとの関係など前作から続く部分もあり、シリーズとしての面白さもある。
アーナルデュルのミステリーは、事実としての歴史的背景・社会的問題があるから興味深く、さらに引き込まれる。
イギリスが中立国であったアイスランドに侵攻し、後にアメリカに占領されたという歴史の背景に、本作のような悲しい物語があったのかもしれない。