- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488027438
感想・レビュー・書評
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大好きな前作の続編!喜び勇んで手に取りました。のんびりした地方図書館の日々を描き、訪れる常連や新顔の利用者と司書たちとのコミュニケーションに和みつつ、実は複雑なミステリとゆーところがツボ。さらに何組もの淡い恋まで織り交ぜられている、万華鏡みたいに素敵な物語なのでした。
「どこか、ものすごく遠いところへ旅をしてきたような気分だった。疲れたような、今朝のことがはるか昔に思えるほどいろんなことがあったような、その一方ではあっという間に終わったような」
この気持ち、私もよく知ってる!と嬉しくなった。子供の頃はちょくちょく、大人になってからもたまに、本の内容に耽溺したとき感じる気持ちを、とても見事に言いあらわしていると思うのだ。全ての本好きは、この気持ちを味わわせてくれる本に出会いたくて、いつも次の本を探すんじゃないかなあ。
と、全然ミステリの感想になってないけど、謎解きとしてもなかなか秀逸でした!前作の能勢さんの推理があざやかでよく覚えていたけど、まさかあれが活きてくるとは。
続編また書いてくれないかなあ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
特にドヒャーって盛り上がりはない。白骨死体が出たって事で盛り上がって欲しくはない。小さな日常の積み重ねと個人の小さな出来事。全てが善意しかない人達の思いで出来上がる作品。あざとさがないから素直に心に響いた。
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『れんげ野原のまんなかで』続編。
知らない本が出てきても「あれとか、あれも」と連想した本が次の瞬間出てくる。なんだかニヤリとしてしまう。
謎としては『れんげ~』の方が面白かった気がしますが、全編をつなぐ和菓子とか、ありそうでよいですな。
しかしこの本珍しくどこにも装幀に関する表示がありません・・・。
もしかして帯に書いてあったのかしら?? -
暗い小説が続いたので、そういう時読んでホッとするのが森谷明子の現代もの。一種の昭和史をテーマにした小説だった。私は比較的大人の文学に移行するのが早かったので、結構児童文学は読み残しがあるなと思った。図書館を舞台にした小説や漫画って、児童文学を取り上げる割合が高いよね。
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面白かった!ずいぶん久しぶり(だよね?)の新作は、図書館を舞台にした「れんげ野原のまんなかで」の続篇。とはいっても独立したお話で、わたしはこっちの方がずっと良かった。「日常の謎」的な連作かと見せて、読み終わってみればこれは長篇ミステリなのだった。
森谷作品はデビュー作「千年の黙」をはじめとして、キリッと優しいテイストが好きなんだけど、ミステリ部分が弱いというか、正直に言うとミステリじゃない方がいいのにと思うことが多かった。今回はそういう引っかかりもなく、読後感がとてもいい。話の流れに強引さがなくて、すんなり腑に落ちた。
いつも通り、人を見る目が温かいなあと思う。世間も人生も複雑なものだし、うまく行かないことも多いけれど、それでも人は信頼できるものだという気持ちが伝わってくるように感じる。「あとがき」に「お話をつくる職人になりたい」とだけ思って書いているとあった。ほんと、「職人」としてこういうのをまた読ませてほしいなあと思った。
図書館が舞台で、探偵役は司書さん。作者にとって深い思い入れのあるらしい本が、いろいろ登場する。「ぐりとぐら」「スーホの白い馬」「旅の絵本」などはともかく、え?知らないなあという本もあって(「町かどのジム」とか)、探し出して読みたくなるのもまた楽しい。 -
秋庭図書館のある秋庭市で崖崩れにより白骨死体が見つかる。数十年の時が経っているようだし、事件を思わせる傷跡などもないことから、事件性はないとされる。
この事件を中核に、地元の名家を中心としたあれこれが分かっていく。
都会に住む名士の孫が秋葉図書館で司書の今居文子の紹介から小さい頃読んだ「町かどのジム」と出会い、懐かしい記憶をたどっていく。
そして、その孫・佐由留を軸に思いがけない謎解きが始まる。
面白かったけど、この図書館って何人で運営しているのかしら。まさか館長含めて4人??無理ですよ~。
文子が保育園でやったブクトークは、どんな内容だったのかしら。「スーホの白い馬」以外は、児童文学でもかなり高学年向き。幼児にはもとより、その母親でも相手を選ぶと思う、「スーホ~」だって、保育園児にはどう??…って、そんなとこ突っ込まなくてもいいかっ(笑い) -
『れんげ野原のまんなかで』の続編。
新人司書が図書館利用者の持ち込む謎に頭を悩ませながらも、司書として成長していく物語であった前作。
こんな好みの作品はないだろうと意気込んで読んだ割には、今一つ心に響かなかったのですが、10年ぶりの続編となるとやはり気になります。
恐る恐るという感じで読み始めたのですが、今作は面白かったです。
5編の話はそれぞれに謎が提示され、一応の解決は見るものの全てが明らかにはなりません。
少しずつ積み残されていく謎。
しかしそれが戦争中の秋庭市の隠された歴史とともに、最後に浮かび上がってきます。
隠しておきたい秘密。隠さねばならなかった秘密。
中学生になったばかりの佐由留は言うのです。
「隠しておいた方がいいことなんて、ないと思うよ。少なくとも、隠されたほうは、隠してもらってああよかったなんて思わないよ」
佐由留なんていまどきのキラキラネームかと思いました。
実は万葉集の和歌からとった名前なのだそうです。
そして秋庭市の銘菓も、万葉集からの…。
図書館の仕事というと本の貸し出しや返却などのカウンター業務が花形業務のように思いますが、この作品はレファレンス業務を丁寧に書いているところに好感が持てます。
レファレンス業務とは、図書館利用者が必要とする情報や資料などを求めた時に、図書館員が情報や資料を検索・提供・回答することです。
実は図書館司書が専門職種なのは、ここの部分にあると思うのです。
利用者がなにを必要としているのか、自分の回答は期待された答であったのか。
言葉だけではなく、表情やしぐさをよく見ることによって相手の欲するものを見きわめる、これは日常の謎を解くのにも大変役立つ手際でもあります。
絵本や児童文学が紹介されているのも嬉しいところ。
『ディダコイ』『町かどのジム』『旅の絵本』
また読みたくなってきた。
秋庭市立秋葉図書館で、ゆったりと読書を楽しむ夢を見るとしましょう。 -
ちょっと田舎の秋庭市の図書館。
図書館員さんたちが町の小さな謎を解いていきます。
そこに住む人たち、図書館のまわりの穏やかな風景が目に浮かぶようでした。
ちょっと人物が入り乱れてよくわからなくなったとこも…。
全体通してはさっぱりとした読後感、おもしろい本でした。 -
(15-21) なんと十年もたって続編が出るとは思いがけない。私は前作「れんげ野原のまんなかで」は可もなく不可もなくって感じでした。文子もそれほど好きじゃなかったし。でも、今回はすごく良かった。さゆる少年の悩みから始まった話は連作の形をとりながら周りに広がり、そして戦前から今までという時間の広がりまで。陰惨な殺人事件などではなくひとつひとつは細かい謎なんだが、哀しくも心温まる読後感だった。秋葉夫妻大好き!