ミツハの一族

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027469

作品紹介・あらすじ

未練を残して死ぬと、鬼となって水を濁す。その者を常世に送る宿命を背負った2人。大正時代の北海道を舞台に、水辺を守る一族を鋭く描いた著者渾身の連作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 未練を残したまま亡くなった者は鬼となる。鬼を黄泉へと送るために与えられた烏目役とその目となる水守のお話です。どの話も水のような綺麗なお話でとても読みやすかったです。水守の掴めない不思議な魅力が読み進めていくごとに深まっていきました。

  • 集落の水源を危うくする鬼を鎮める為、烏目役の清次郎は、不本意ながら、むくろ目の水守と鬼の強い未練を断ち切る。

  • 大正末期、北海道の札幌市近郊にある小村・小安辺村。かつて水源を失い、信州から村をあげて移住し、土地の開拓に励んだ人々が住まうこの村には、人々とともに持ち込まれた彼らの土着の信仰があった。
    未練を残して亡くなると鬼となって水を濁す。
    鬼を常世へ導けるのは、特殊な体質の烏目役と水守の二人のみ。

    血筋の役目から逃れようと医学部に進んだ清次郎の元へ従兄弟の庄一の死の知らせが。
    庄一の代わりに烏目役となった清次郎の前に現れた水守。
    毒草に当たった子ども、産後に亡くなった母親、開拓民の老人。彼らの未練とは。

    時代も空気も良いんだけど、水守への執着がイマイチ良くわからず、美人だから?
    それともそう言う体質なのか、そこに共感がもてなくて、結局、最後まで残念な感じに。
    好きなんだけどなあー。

    「悔いのない人生などない」
    おそらくこの世は、見えないだけで、死者が残した黒い小さな珠でいっぱいなのだ(略)
    「春先の、あの馬糞の埃のようにな」

  • 未練を残した死人は鬼となり、村の水を濁らせ枯らす。
    大正時代の北海道を舞台に鬼の未練を突き止め成仏させる役割を担う一族「烏目役」と「水守」を描いた物語。

    闇の中では全く見えなくなる烏目、闇の中でしか見えないむくろ目。
    水守は鬼を見るだけ、烏目役は鬼が見えず水守が見たものから未練を推理する役割。なんか効率の悪い因習だなぁと思いつつ読んでた。
    主人公が静かに水守と心を通わせていたんだと物語が収束していく過程は良かった。

  • 面白かったです。多分、乾ルカさんは初めて読みました。
    光の間しか目が見えない「烏目」と、闇の間しか目が見えない「水守」が、村の水を濁らせる鬼と対峙し、鬼のこの世への未練を断ち切り常世へと送る。
    未練を残し鬼となる人々が悲しく、水守の境遇も悲しみでした。悲しみに満ち満ちている世界でした。
    そのなかで、烏目である清次郎によって、知識という「光」を与えられた水守。もっともっと、となる水守が可愛らしく、彼の世界が広がっていくのが伝わってきました。
    なので、最終章「常世現世」がすごく悲しかったです。鬼となったのは清次郎でした。鬼を送るため、新たに烏目となった富雄が繰り出す手段に、彼は清次郎と似ているところもあったのだなぁと、でもある点で決定的に違うのだなと思いました。
    清次郎と水守の間にあったのは恋情ではなかったですが、淡く慕う心はあったのかもしれません。互いに、進む道を見付けられたので。
    常世で待っていて、と伝えるのが美しかったです。この章の最初と最後の水守のモノローグも悲しくてとても綺麗。
    因習によって水源を守るのではなく、土木と灌漑を学ぼうと大学へ進むことにした富雄も良かったです。

    「わたしはたとえ鬼でも、清次郎さまにいてほしかったのです」

  • 初読みの作家さん
    以前から気になっていたタイトルなので読んでみたけれど面白かった。
    古い因習の残る不思議ない殻を宿した一族のお話。
    物悲しい終わり方だったけれど、人の残す未練をどのように生きている人々が昇華させていくのかと言うことを考えてしまった。

  • 暗がりが見えない烏目と
    闇でしか見ることができないむくろ目。
    村の水を守るために鬼を見極めるのが二人の定め。
    切ないが静かな物語。

    【図書館・初読・6月6日読了】

  • 美しい世界

  • 作者さんはいろんなジャンルの作品を発表されていますが、個人的にはこの作品のような和風のホラー風味の入った雰囲気のものが好きです。

    …北海道の奥地にひっそりと住まうミツハの一族は、代々「鬼」を見る「水守」と「烏目役」がその土地を見守り続けていた。
    そしてその運命を背負ったある秘密を抱える水守と、水守に魅せられた烏目役に立ちはだかる鬼の姿、そして彼らの運命とは…。

    田舎の閉塞性と秘密めいた水守と烏目役の存在、いわくありげな鬼の出現の謎、と後ろ暗い雰囲気に満ち満ちていて、じっとりした読み心地はクセはありますが私は楽しめました。

    終盤の展開にもう少しクライマックス感が欲しかったような気はしましたが、しずしずと世界が閉じていくエンディングもまた「らしい」感じもしてよかったです。

  • どなたかのブクログ本棚で見かけて。
    「あ、私この本、好みだと思う!」と感じて、早速図書館で予約して借りました。

    ドンピシャ、好み!(笑。
    師走に、以前から予約していた本がまとめてきてしまい、いっぺんに読み進めて、ほいでもって忙しいのであまりきちんとレビュー書けないんですが。

    ラストが尻すぼみな感じなので☆3つ。
    でも、この世界観が好きです。
    同時期に読んだ、彩瀬まるサン(朝が来るまでそばにいる)とか、桜木紫乃氏(起終点駅)の本は、新年あけて落ち着いたら、また図書館で借りて読もうと思っていますが、こちらは二度読みはないかな・・・。とってもいい世界観なのに、何かいろいろ惜しい感じです。ほんと惜しい!
    でも、好きですが(照)。

    この本をブクログ本棚に入れているかたの本棚を漁って(苦笑)、また好みの本を探していきたいです。

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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