金環日蝕

著者 :
  • 東京創元社
3.95
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感想 : 166
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028787

感想・レビュー・書評

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  • 大学生の春風(はるか)と、高校生の錬。
    ふたりは高齢女性がひったくり被害にあう現場に遭遇し、知り合い、犯人探しをする。
    それが、大規模な詐欺事件に繋がっていくとは。

    春風の子ども時代の誘拐犯人。
    錬の父親である加賀谷潤。
    この2人に関する謎はのこったままなので、続編があるんだろうか?

    この本は結構長い話で、わたしは読みながら、何度も同じ話をされている気すらしてしまった。
    おそらく、春風という真面目で正義感のつよいキャラクターが話す内容が、同じような正論だったからだろうか…。
    錬の正体がわかったあたりがハッとして、おもしろさのピークで、その後は特に長く感じしてしまったな。

    苦学生な女の子が詐欺に巻き込まれていくところは、読んでいてすごくもどかしくて、あ~なんとか手を差し伸べられないか!どうすれば良いんだ?と考えたりした。真に迫っていて読みごたえがあった。

    殺人事件がおきない、詐欺をテーマにしたミステリー小説はめずらしい。
    金環日食というタイトルも、本文中にはっきりと言及がないあたり、謎を呼ぶ感じがして気になるタイトルだ(続編を見越して「日食月食」シリーズにしたいのかな?なんてことも考えたりした)。
    わたしは、このタイトルから、太陽が月によって覆われ、その後また月の影から太陽が現れる。しかし一度月に覆われた世界は、覆われる前の世界とは変わってしまっているような(現実にはそんなことはないが)、一度暗くなった世界がまた明るくなるけど、完全に元通りではないということ、犯罪被害者や加害者家族、犯罪にかかわってしまった登場人物達を通じて表現したかったのかな?なんてことを考えた。

    登場人物が背の高い美人女子大生(春風)と、メガネをかけたイケメン男子高生(錬)とあって、「これは実写化しやすそうな設定だ」と思ったけど、実際には映像化がむずかしそうな内容だったなぁ。

  • 初読みの作家様であったが、とても良かった〜
    舞台は札幌!
    ということで、個人的なことではあるが遠くの友人はこの辺りに住んでいるのかな〜と思いながらの拝読となりました
    そしてその友人にも、札幌が舞台だよ!と報告を入れておきました

    物語は引ったくりから始まる
    犯人を捕まえるために、女子大生と男子高校生が2人で犯人探し
    そこから物語はどんどん進んで、特殊詐欺も絡んでくることに
    詐欺について私は詳しくないけれど、描かれているように巧妙な下調べをされて、名前や職場の事など言われてしまったら本当のことだと思ってしまいそうだ
    騙されないと思っていても、読んでいると本当に電話の相手は知っている人物だろうかと怪しんでしまうかもしれない
    この物語に出てくる人々は痛々しく傷ついている人が多い
    家庭の事情、お金の事情、過去の事情
    詐欺に手を染めること、本当はやりたくないと思ってても生きるために仕方なくやっている人は多いのかもしれないなって思ってしまう
    最後は呆気なく感じたものの、それでも面白く読めたなって感じられる

    読み終わった後に、はぁー…読了したー!って思える作品は私は好き
    物語に没入出来た感じがする
    この物語もそういった感覚が強くで、目が離せない1冊であった!

  • 物語は面白かった。途中から続きが気になりすぎてページを捲る手が止まらない。序盤に引っかかった箇所も後から伏線回収され納得、スッキリな読後感。でもキャラクターがイマイチ好みではなかった。会話のやり取りが…なんというかノリが好みではない。会話になるといきなりラノベ感が出てきてそこに違和感があり気持ちよく読めなかった。人によってはそこが読みやすいポイントにもなるだろうから個人の好みの問題だと思う。タイトルから想像していたより文章が軽くて、私が勝手にギャップを感じたんだと思う。あと主人公に感情移入できなかったな〜。他の登場人物には魅力を感じることはあったが主人公にはあまり魅力を感じなかった。(ごめんなさい)でも物語は面白かった。最近の詐欺の手口はこんなに巧妙なのかと驚き、恐ろしくなった。

  • 人は綺麗事では生きられない。
    犯罪に手を染めたくなくても手も染めてしまう人、息をするようにそれを行う人、実際にいると思う。そんな人たちが一つのきっかけで集まって事を明らかにしていく。


    犯罪に巻き込まれた人が犯罪を犯す側にもなる、という、これって当たり前を壊された時の反動なのだろうか。これでもかって犯罪に巻き込まれた人と犯罪を犯した人が集まっているのがエクスペンダブルズ的なものを感じる。

    各登場人物の心情は結構しっくりきたけど、主人子にだけ同調しきれずに終わった。相性がよくなかったなぁ。

    2024.2.4
    18

  • ひったくり事件を偶然目撃して…というところから物語は始まるのだけど、最後まで飽きることなく話が展開していった。
    犯罪に手を染める人、その家族…被害者と加害者が入り乱れていて、真実と嘘の見分けもつきにくい。
    結局、誰しも表裏があって、善か悪かなんて決められないのかも。
    辛い思いをした登場人物たちも新たな一歩を踏みだせたらいいなと思った。

  • 知人の老女がひったくりに合うのを目撃した春風は、その場に居合わせた男子高校生と共に犯人を追うが、取り逃してしまう。犯人が落としたと思われるストラップに心当たりがあった春風は、その男子高校生の錬と共に犯人探しをする事になり…

    思ってたよりシリアスなストーリーでした。
    そして、それぞれに心に傷を持つ登場人物達。張り巡らされた伏線の回収も納得でした。
    ミスリードに見事に騙されましたが、少しだけ救いのあるラストにホッとしています。
    春風と錬の縁もこれからも続きそうで、アフターストーリーが読みたいです。

  • 「輪郭は強烈な輝きを放っているのに、
    彼の心の中心は闇に沈み、謎めいたまま─── 」

    ひったくりの現場に居合わせた大学生の春風と高校生の錬。
    二人は探偵コンビのように犯人に辿り着くがそれだけでは終わらず、特殊詐欺事件に繋がっていく。
    伏線多数。
    ひとつひとつ繋がっていく面白さと苦しさ。
    丁寧な社会派ミステリーでした。

    家族を支える大学生の理緒。
    正義感が強く向こう見ずでお節介な春風。
    賢くて大人びた錬。

    「人間の顔ってひとつじゃない。置かれた状況でいくらでも変われる·····」

    大切な家族を守りたい人たちが、どうしょうもなく巻き込まれていく場面は苦しくなった。
    光り輝く眩しさと、深く暗い部分がコントラストになって現れるストーリーと、
    『日蝕』の蝕むという漢字、装幀も見事でした。

  • 大学生の春風はある日、目の前で知り合いの老女が引ったくり被害に遭う場面を目撃する。その場に居合わせた男子高校生の錬と共に犯人を追いかけるも取り逃がすが、犯人が落としたあるものに見覚えがあり、犯人捜しを始めるー。

    読み始めは春風と錬の軽妙な会話から学生の探偵ごっこを軸とした青春ものかと思いましたが、全くそんなことはなく、大変レベルの高いエンタメミステリーでした。
    犯人捜しをする春風と錬とは別に、犯罪の片棒を担ぐ理緒のストーリーも平行して進みます。
    やがて彼らが交じり、引ったくりの真相が明らかになっていくわけですが、構成に全くと言ってよいほど過不足がなく、よく練られているし伏線回収もお見事。
    メモを取りながら読んだわけではないけれど、たぶん全ての要素がちゃんとそれぞれの役割を果たしていたのではないでしょうか。
    これから読む方には全ての台詞と固有名詞、描写を頭に叩き込みながら読み進めることをおすすめします。

    登場人物達の台詞回りがちょっとくどく感じるのが残念ではありますが、それを差し引いても大満足な一冊でした。

  • 一気読みした。

    ひったくり犯を捕まえようとしただけのことだったのに、そこからどんどん話が広がっていく。
    高校生なのにどこか世間慣れして確かな推理力を持錬が魅力的。寄せばいいのに謎を解こうと突き進む春風にはハラハラさせられるが、応援したくなるキャラクターである。

    春風、錬のパートから一転して描かれる理緒の話面白い。いや、辛い状況なので面白いというのははばかられるのだが。
    絶望的な状況で頼る人もいなかったら、少しでも手を差し伸べてくれる人を無条件で信用してしまうだろう。それが悪人であっても。理緒のことを偉い偉いと褒めてくれる大人は沢山いるけれど、実際に生活を助けてくれる大人はいないのだから。

    ここのとこ詐欺を扱った本を立て続けに読んでいたせいで、それらしい話はもうお腹いっぱいと思っていたが、そんなことはなかった。
    この物語全体に最後までうまく騙されていた気分だ(褒めてる)。カガヤの正体しかり錬の目的しかり。

    人を騙すことがいけないことなのは分かっている。しかし、それがどうしても困り果てての上での行為だったら?大切な家族を守るためだったら?ポケットに護身用の武器を忍ばせつつ普通に道を歩くのも、人を騙していることになるのでは?
    この物語に出てくる「騙す側」の人達を、どうにも嫌いと断定できない。
    錬が悪い方向へ成長しないようにと思うものの、そうではない未来も同時に思い浮かべてしまう。

  • ひったくりを目撃した大学生の春風(はるか)と高校生の錬。犯人が落としていった物がきっかけで二人は事件を調べ始める。ひったくりの背後にあるものを知っていくうちにどんどん危険な方へ進んでいく調査。思いがけない展開と春風や錬それぞれの家族やその背景にあるもの。それぞれが抱えてるもの、犯罪に関わろうとするもの、止めようとするもの。簡単には答えを出せなくなってしまうような苦しさがあって読み応えがある。前作のスポーツ小説『パラ・スター』とは全然違う作品で驚くけれど今年読んだ作の中でも上位にくる面白さ。

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著者プロフィール

岩手県生まれ。『陸の魚』で雑誌Cobalt短編小説新人賞に入選。『いつまでも』で2008年度ロマン大賞受賞。集英社オレンジ文庫に『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ(全5冊)、『どこよりも遠い場所にいる君へ』コバルト文庫に『屋上ボーイズ』、ノベライズ『ストロボ・エッジ』『アオハライド』シリーズ、他の著書に『パラ・スター 〈Side 宝良〉』などがある。

「2022年 『読んで旅する鎌倉時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿部暁子の作品

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