金環日蝕

著者 :
  • 東京創元社
3.95
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本棚登録 : 1363
感想 : 166
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028787

感想・レビュー・書評

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  • 札幌を舞台に、特殊詐欺を題材にした青春ミステリー。

    キャラクターや台詞は漫画のように軽くて読みやすいのに、内容はびっくりするくらいダークで重たいという…ギャップにやられました。
    読み応えたっぷり。
    構成も上手で、色々な違和感が鮮やかに繋がっていくところがたくさんあって面白かったです。

    それにしても不幸な要素を盛り込みすぎかも…
    若者の貧困、いじめ、特殊詐欺など、社会問題が根底に描かれていて、悲しい気持ちにもなりました。
    闇バイトの入り口があまりにも安易で怖いです。
    みんな希望を持って強く生きていってほしいと思います。

  • 阿部暁子さんと言えば、ライト文芸やノベライズ本などのイメージで、中学生にも人気のタイトルがある。

    そのイメージからいくと、今作は表紙からちょっと違っていたので、どんなストーリーなのかとても気になっていた。

    いやー、久しぶりに、ページを捲る手が止まりませんでしたよ。
    読み始めからは想像もしなかった展開。
    どんどん深みにハマっていきました。

    主人公の無駄に正義感の強い大学2年の春風(はるか)と、ひったくり犯を追ったことをきっかけに犯人探しの行動を共にするようになる高校2年の錬(れん)。
    犯人まで後一歩と迫るが、それ以上足跡を追うことができず、諦めるはずだったが…。

    登場人物達は、確かにライト文芸に出てきそうな容姿の持ち主だったりするけれど、話の運びがスピーディーで、どんな風に展開するのか手に汗握る感じだった。
    錬の母由紀乃が語る、過去の出来事の時系列がちょっと分かりにくかったけれど読み返せば大丈夫。
    次回作も楽しみ。
    2023.8

  • 面白かった。少し前に似た設定の作品を読んだので、続けて読まない方がよかったかなと思ったけど、面白くてあっという間に読めた。

    私が読んでて気になってしょうがなかったのが、謎の人物"カガヤ"。ずーっと何者か分からなくて、途中で分かったと思ったら、最後でそれが違ってるわで終始"カガヤ"に振り回された感じがする。正体が分かった時、はぁ〜、違うの???となり騙された。今までバラバラだった事が最後で繋がって全て分かった時の爽快感。素晴らしい。始まりから気の抜けない物語。

    考えさせられたのが、学生の貧困、ヤングケアラー、ブラック企業の問題。その箇所を読んでてズンと重くのしかかってきた。助けてくれる人がいれば良かったのに…。行政なんとかしてよ、と読んでて強く思った。

    スーパー高校生"北原錬くん"が"カガヤ"と同じ側に行きませんように。

  • 阿部暁子『金環日蝕』サイン本ネット販売のお知らせ|お知らせ|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/news/2022/09/3692/

    会報2021年8月号 新入会員挨拶|日本推理作家協会
    http://www.mystery.or.jp/magazine/article/781

    金環日蝕 - 阿部暁子|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488028787

  • 読書備忘録794号。
    ★★★★★。

    阿部さんの著書は初です!
    大大大満足です!
    作品タイトルの深さに感動。

    主人公的3人。北大2年の森川春風。
    高2の北原錬。
    春風と同じく北大生、志水理緒。

    物語はひったくりの場面から始まる。
    春風がご近所のお婆ちゃん小佐田サヨ子さんが家の前でひったくりに遭う場面に遭遇!
    咄嗟に犯人の若い男性を追いかける春風。走りには自信があったが、追いつかない。
    そして、同じくひったくの場面に遭遇した錬も犯人を追いかけるが取り逃がす。
    そして犯人が落としてったストラップは、北大の写真展で配ったものだった。
    事件に偶然係わった春風と錬は大学で犯人を捜すことになった・・・。

    場面は変わり、とあるカフェ。犯罪に巻き込まれそうになって困っている高齢女性を手助けしている理緒。北大のボランティアサークルに所属しているようだ。理緒は高齢女性と打ち解けて、高齢女性の身の上話に相槌を打つ・・・。

    ひったくり事件とカフェの雑談。一見無関係な事象は、6年前に起きた詐欺事件から始まった大規模な組織的詐欺犯罪で繋がりを持っていた・・・。必然と偶然の接触。

    凄く良く練られたストーリーで、伏線も見事なので、備忘記録は止めておきます。笑
    誰かを守る為にはなんでもやる・・・。
    自分たちを不幸にしたやつは絶対に許さない・・・。
    助けてくれた人には盲目・・・。
    生きていくにはお金が必要・・・。

    そのために、人は人を騙す。欺く。それは相手を大切に思うから。逆に相手を貶めるために。
    人の心の闇ですね。人は簡単なきっかけで暗黒面に落ちていく。この物語を通じてまざまざと見せつけられました。

    この作品の登場人物たち。みんな良い!
    春風と錬の信念はすごかった。欺き方も。
    そして理緒の妹、奈緒がすごく強かった。
    陽&翠。まっすぐ育て!
    そして春風の兄、夏夜は妹から定常的にDVを受けている。
    鐘下も過去に不幸を抱えているのだろう。
    そして潤。家族の元に戻って欲しい!
    辻正人。世界的なデザイナーになるんだぞ!

    まさに金環日蝕の中心は黒い闇だ・・・。

  • 詐欺師

    きょうだい
    北海道万歳
    回転寿司
    舞台は札幌
    白と信じていたものが次々とひっくり返り、見る間に黒く染まっていく

    初読みの作家さんでした
    え?え?となりながら引き込まれ、一気読み
    金環日蝕……食じゃないところに、騙すとか嘘とかみたいな感情を感じる
    幸せに、本当に幸せになってほしい
    図書館本

  • さてさてさんや他の方がたくさん書いておられました
    これは読まねばと図書館予約
    ぐいぐい引き込まれ、婆さんは疲れました
    面白かった

    さてさてさんが強調しておられる
    『中心は暗闇に沈んで何も見えないのに、その輪郭だけが強烈なかがやきを放つ』
    ここなのでしょうね

    その中心がカナシイ

    北海道大学のキャンパスや街の描写が素敵でした

    『詐欺』
    もがく人間の描写も胸打ちました

    ラストに光を当ててくださってありがとうございました

    ≪ 弱くて脆い でも立ち上げる だからこそ ≫

    • さてさてさん
      はまだかよこさん、こんにちは!
      最初、ページ数に圧倒されて読むのを躊躇しましたが、ぐいぐい読ませる作品ですよね。ネタバレに気をつけないとい...
      はまだかよこさん、こんにちは!
      最初、ページ数に圧倒されて読むのを躊躇しましたが、ぐいぐい読ませる作品ですよね。ネタバレに気をつけないといけない作品ですが、まさかの怒涛の展開に驚かされました。
      それにしても改めて書名と表紙だけ見ると芥川賞作家さんの傑作という雰囲気ですよね。このミスリードがとても好きです!
      2023/08/31
    • はまだかよこさん
      さてさてさんへ
      いつもたくさんの長編のたくさんのレビュー
      いつもいつも感心しております
      お疲れの出ませんように((´∀`*))

      ...
      さてさてさんへ
      いつもたくさんの長編のたくさんのレビュー
      いつもいつも感心しております
      お疲れの出ませんように((´∀`*))

      これもとてもよかったです
      途中で読むのを中断するのが惜しかったです

      わざわざコメントありがとうございました


      2023/09/01
  • 初読み作家さんなのですが面白く読めました♪

    とある木曜日の夕方、大学から帰ってきた森川春風ハルカは近所に住む70歳の老女が引ったくりに遭う場面に出くわす!
    そこに偶然同じように犯人を追ってくれた高校生の北原錬クン。
    2人は犯人が落としていった手作りキーホルダーを手がかりに犯人捜しを始めたのだけど.....

    ああ同じ高校の先輩後輩コンビの犯人探しの話なのかな?と思ってたら思いがけずとんでもない方向に進んでいきます‼︎

    なかなか上手いし、特殊詐欺事件という時流もきちんと取り込んであり面白い作品でした♪

  • 初読みの作家さん。
    凄い。


    途中(由紀乃と錬の会話)、お母さんが「(夜遅くなるから)今夜のすき焼き食べられない」と言ったタイミングを錬が語る時に齟齬がある箇所で、あ〜また作家さんの酷いミスか…と思ったら違った。
    細かいところもちゃんと間違いなく設定されていた。

    しかし佐々木頼子(仮)とマサトシ(仮)の会話の箇所、「(お母さんが僕に)昨日電話してきた」
    「昨日、電話なんてしてこなかったでしょう?」は、普通は「(私はあなたに)昨日、電話なんかしなかったでしょう?」じゃないかとは思う。→本筋には全く影響なし。


    追記:二度読みした。
    時系列に出来事を書いて整理した。
    やはりとてもよくできている。
    しかし、46ページに「二日後」と書いてあるのは間違いで、本当は「三日後」である、というミスを見つけてしまった。

  •  いやぁ、参った。最初から最後まで面白かった!軽いタッチで描かれる文体から、緩いミステリを想像したが、私の予想を軽く超えていく見事なミステリだった。

     目の前で知り合いのおばあさんが引ったくりに遭うのを目撃した女子大生の春風は、偶然その場に居合わせた男子校生の練と犯人を追いかけるも取り逃してしまった。

     その後、協力して犯人を探す2人。単なる引ったくり事件と思っていたら、その裏には強大な詐欺組織が絡んでいた。

     冷酷な詐欺師でありながら、妙に魅力のある謎の男、カガヤに惹かれつつ犯罪に協力していく里緒の章と、引ったくり犯を探す春風と練の章が見事に絡み合っていく。

     物語が進むにつれ、二転三転する事実に驚愕しつつ、全ての事柄が噛み合った時、静かな感動に包まれた。

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著者プロフィール

岩手県生まれ。『陸の魚』で雑誌Cobalt短編小説新人賞に入選。『いつまでも』で2008年度ロマン大賞受賞。集英社オレンジ文庫に『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ(全5冊)、『どこよりも遠い場所にいる君へ』コバルト文庫に『屋上ボーイズ』、ノベライズ『ストロボ・エッジ』『アオハライド』シリーズ、他の著書に『パラ・スター 〈Side 宝良〉』などがある。

「2022年 『読んで旅する鎌倉時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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