眠れない夜にみる夢は

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 377
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488028954

作品紹介・あらすじ

三人は同じ日の夜に出会い、恋に落ちた。俺は彼女に。彼女はあの男に。そして、あの男が恋をした相手は俺だった。なぜ俺なのか、とあの男に訊いてみた。健やかな馬鹿がタイプなのだという。それって悪口じゃないのか? それはともかく俺たちの一方通行の三角関係は、しかしそれほど時間を置くこともなく、べつのものへと姿を変えていった(「明日世界は終わらない」)。さまざまな登場人物たちが織り成す、ひとことでは言い表せないような繊細な人間関係を描いた、この作者ならではの珠玉の五編を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 読書備忘録782号。
    ★★★★★。

    どうしてこの作者のこの本を読みたい本リストに入れていたのか全く思い出せない・・・。
    読み終わって大満足!、深沢仁さんって?と思ったら所謂ラノベ系列の作品が大半の作家さんだった。
    ラノベ系で大満足する私はいったい・・・。あと半年待たずに還暦に突入するのに・・・。

    不思議な主人公たちが繰り広げる、ちょっと切なく、それでも暖かい恋ストーリー5編でした。

    「なにも傷つけないように、おやすみ」
    紘一と智己。同い年、同じ施設で育ち、仲が良かったわけではないが、お互い黒い衝動を持っていた。
    そして、二人はなんとか社会人に。
    お互い停止弁の役割りを担っていた。
    5編の中で一番良くわからんかった。笑

    「明日世界は終わらない」
    新社会人の竜朗。ひょんなことから、超イケメンのゲイバーバーテン周と超美人キャバ嬢綺子と知り合った。
    竜朗は一発で綺子に恋した。綺子は竜朗は眼中にないが、ゲイバーなら一緒に行ってくれた。
    そう。綺子は周に一目ぼれ。そして周は・・・。
    絶対に交差しない三角関係の恋物語。

    「不自由な大人たち」
    天野志津。自分はなぜか妻帯者を引き付ける不倫常習者。そして唯一無二の親友、櫻子。結婚して子供も生まれた。そして夫が浮気!
    櫻子は、夫の浮気相手の女、自分という妻と子供がいる妻帯者と恋愛関係になる生物が許せなかった!
    そして志津は不倫常習者。櫻子は志津に言う。「あなたが不倫を続けるなら絶交だ。すべての関係を清算する!」と。
    櫻子を失いたくない志津は、同時並行していた3人の不倫相手と関係を清算していく・・・。そのプロセスがイイ。自由恋愛と不自由な拘束。深いね。

    「家族の事情」
    駒鳥杏子と亜門。二卵性双生児。
    男運の悪すぎる姉。弟の亜門に恋人を選んでもらうことにした。マッチングアプリに姉を登録していく亜門。
    ふと考えた。会社の上司、バツイチになったばかりの藤本さんはどうか・・・。
    ハッピーになってくれ!姉弟!

    「砂が落ちきる」
    テッパンの堅物女子、真野杏奈。34歳。経理部所属。二つ名は「経理の魔の真野」。
    自分には何もない。処女のまま独身で死んでいくのか・・・。
    とあるきっかけで知った男に依頼する。5万円払うから処女を喪失したいと。
    男、成田光洪32歳。
    なんで処女を喪失したいのかと聞く。
    死ぬまでにやることを決めている。35歳までに処女を喪失する。と志津は言う。
    光洪は言う。5万円は要らない。5回飯をご馳走してくれ、と。
    そして不思議なデートが始まる・・・。
    最後はめちゃくちゃ良い!
    志津が45歳でやること。
    何もなかった志津に明確な楽しみが灯った。
    そして光洪にもあと13年しっかり生きていく目的が持てた。超ハッピーエンド!

    「なにも傷つけないように、おやすみ」は今イチでしたが、それ以外は、不思議な人たちになぜか感情移入してしまった。
    あゝ、楽しかった。

    • ゆーき本さん
      めちゃくちゃそそるレビューです!
      面白そう♡♡
      とくに「明日世界は」と「砂が」がいいなぁ。
      図書館で探してみよー(ˊ˘ˋ*)
      めちゃくちゃそそるレビューです!
      面白そう♡♡
      とくに「明日世界は」と「砂が」がいいなぁ。
      図書館で探してみよー(ˊ˘ˋ*)
      2023/12/01
    • shintak5555さん
      ワー!
      ★いっこを期待しています!
      ワー!
      ★いっこを期待しています!
      2023/12/01
    • ゆーき本さん
      いや わたし☆1をつける職人じゃないんですよ!笑
      いや わたし☆1をつける職人じゃないんですよ!笑
      2023/12/06
  • 短編集。それぞれ余韻があってよかった。
    どの作品も自分にちょっと自信がなく臆病なところがあるけど素直に強がって生きてるような、ややひねくれてる人たちが出てくる。どこか不器用な彼(彼女)たちにいつの間にか魅了されていていいことがあるといいなーと願っている自分に気づく。
    特に「家族の事情」が好き。駒鳥姉弟と藤本さんに幸あれ。

  • 深沢仁さんは初めて読みました。読みやすいというか、言葉が優しく感じられてどの短編もすごく好きだなぁと。あえて一つを選ぶなら「家族の事情」かな。3人がこの先どうなっていくのかが気になります。

  • 短編集。読後にみなさんの感想を読んだらどのお話が好きか結構バラつきがあって、それも面白いなと思った。
    どのお話も自分には起こり得ないけど、この世のどこかで起きていそうな誰かの人生を覗き見しているような感じがした。
    個人的には『家族の事情』と『砂が落ちきる』が好き。
    『家族の事情』は登場人物みんな素敵。全員幸せになってほしい。
    『砂が落ちきる』は変わり者同士のやり取りが妙に面白くてこういうのもいいなと思った。正反対のふたりだからこそ会話の中でこちらの気付きも多かったように思う。

  •  恋や友人に関する?話を集めた短編集です。

     ?としているように、私には何がテーマになっているかは読み取れずでございます。

     ただ、日常ありふれているという話ではなく、どこか奇妙で、あんまり自分自身や自分自身の周りにこういう人が心当たりないので、共感やあるあるではない境遇ですが、気になって読み進めてしまう不思議な作品です。

     作者のあとがきを読んで、なるほど、たとえば20歳になれば大人になるとおもってたけど「中身は中学校や高校のままそんなに変わらない」っていうのが共通しているお話なんだろうなと思いました。

     この本、読んでいて不思議と読み進めたくなるんですが、実は登場人物達のどれも経験がない話で、感想書けるのか?と思ったほど、私には難解なお話だったのですが、実は、私にも共通点があります。

     それは

     「中学生や高校生のまま今の歳になった」

     ということ。

     確かに、今私は年齢としては立派な大人だし、お酒も飲めるようになった、社会にも出て仕事をしています。

     じゃあ中身は大人と言えるのか?ですが、社会に揉まれていろいろなことを学んだかもしれませんが、中学校や高校の時と中身が変わったのか?自分は大人になれているのか?と言われると甚だ疑問です。

     本作の登場人物たちも実は歳は重ねても中身や習慣は変わらない人たちの集まりなのではないか。

     そんなことを読後に思いました。

     そして、タイトルの『眠れない夜に見る夢は』どんな状態なのかを想像すると、本作というは、なんとか寝付けたときの浅い眠りの中で見た夢と同様、奇妙で儚げ、続きが気になるのに、良いところで目が覚めてしまって続きは想像の中。そんな夢を描いた物語なのかなと思いました。

     夢の続きはきっと私の中にあるのだなと思います。

  • どうしようもない孤独をそばにいる誰かと抱え合っている人たち。
    孤独は分かち合えないけれど、一緒に孤独でいるコトはできる。その安心感なのかな。
    5つの寂しい物語たちは、それぞれにタイトルが素敵だ。
    寂しくて、誰かにそばにいて欲しくて、でも、素直になれなくて。気持ちがぐるぐるぐるぐる。
    そんななかで、ちっぽけな温かさに縋り付きたくなる夜がある。
    夜の暗さに耐えきれないとき、そっと開きたくなる、そんな一冊。

  • 【あらすじ】
    静寂のなか、ゆっくりと息をする。
    あの人はなにをしているか、と考える。

    ちょっと憂鬱で、でも甘い。
    まったくありふれてはいないけれど、
    わたしたちの近くで起きていそうな
    煌めく五つの人間関係。

    『この夏のこともどうせ忘れる』の作者が贈る、夜の作品集。

    三人は同じ日の夜に出会い、恋に落ちた。俺は彼女に。彼女はあの男に。そして、あの男が恋をした相手は俺だった。なぜ俺なのか、とあの男に訊いてみた。健やかな馬鹿がタイプなのだという。それって悪口じゃないのか? それはともかく俺たちの一方通行の三角関係は、しかしそれほど時間を置くこともなく、べつのものへと姿を変えていった(「明日世界は終わらない」)。さまざまな登場人物たちが織り成す、ひとことでは言い表せないような繊細な人間関係を描いた、この作者ならではの珠玉の五編を収録する。

    「自分で自分を幸せにできる人は綺麗だと思った。」(砂が落ちきる)

    【個人的な感想】

    好きな短編順
    ①砂が落ちきる
    ②なにも傷つけないように、おやすみ
    ③明日世界は終わらない
    ④家族の事情
    ⑤不自由な大人たち

    自分が普段感じているけど言葉にできない感情を的確に言葉にしている。
    読んでいて寂しくなる、でもなんだか安心もする不思議な小説。
    あとがきに書いてある「子どもは、歳を取ればいつか自動的に大人になれると信じていることがおおいですが、やがて、そうではない、と気付きます。この本に集録されているお話に出てくる人たちは、もう気づいている年齢です。」自分もそのことに気づいてしまっているから私も読んでいてなんだか寂しかったのではないかと思った。

  • 2話と4話が好き。
    「明日世界は終わらない」
    偶然出会った2人の男性と1人の女性。見目麗しい彼と彼女が何故か自分のようなフツーの大学生とつるんでくれるのか。まさかのトライアングル。周囲から不可思議な目で見られようといつまでも続いていける気がしていた。あの日の姿を見かけるまでは。

    身体より心のつながりを大切に育んできた3人だから、誰よりも大事な関係だから。これから見据える先は変わったとしても彼等の作り上げてきた世界は進み続けていくのだろう。


    「家庭の事情」
    姉からの予測もしない願いを敢行すべく、考えに考えてたどり着いたのは自分の上司という人材だった。

    なるほど家庭内諸事情により形成された姉弟の関係性の複雑さよ。それにより互いの根底に潜む労りと申し訳なさが変形し、現状に発露されたんだろう。
    これって虐待じゃないのか…
    色々なカタチの愛情がひとの数だけある。
    あなたを愛してる。あなたが愛しているものを愛してる。その輪のなかに入るあなたにも愛を。

    カッコいい大人になりたいなーっっ!

  • 「明日世界は終わらない」がしあわせでさみしくてとても良く、これがいちばん好きかなと思って読み進めると「家族の事情」の歪さを受け入れて生きていく様もとても良くて、贅沢。「砂が落ちきる」も好き。
    タイトルもどれも好きで、「なにも傷つけないように、おやすみ」とか、とてもあまい。

  • 久々に小説を一冊読んだ。
    寂しいのに、温かい。温かいのに、寂しい。

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著者プロフィール

小説家

「2015年 『Dear(ディア)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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