夜の蝉 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書) (創元推理文庫 M き 3-2)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413026

感想・レビュー・書評

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  • 少しずつ「わたし」の成長を共に見ていけるような感覚が楽しい。今回も後味の悪い話もにこっと笑いたくなるような話もあり、そしてわたしと姉の関係も少し複雑だったりと。次作もすぐ読んでしまいそう。

  • 日常の謎好きとしてこのシリーズを読んでないのは無いだろうということで読み始めたのだが、一作目の『空飛ぶ馬』は正直イマイチだった。
    が、これは良かったぞ。二作目が面白いと何か得した気分になる。まぁそのままずるずるとずっと詰まらないこともあるんだけど。

    何が良かったかというと、私と姉の人格が見えてきたことと、程よく心地よい悪意だろうな。

  • 円紫さんと私の
    人の死なない謎シリーズ2作目です。

    今回は人の死なない謎よりも、私のほのかな恋心と友情、そして
    姉妹愛の心情の方が際立っているように感じました。

    我が家にも二人姉妹の娘がいて、私たち父母は長女も次女も子供たちのことは
    生まれた時から個々の名前で呼び合っています。それは二十歳を超えた今でも
    変わりはありません。

    ところが次女は、4歳年上の姉のことをずっと名前で呼んでいたのに
    4-5歳の頃のある日を境になぜか突然「おねえちゃん」と呼ぶようになりました。
    以来変わらずずっと長女のことを「おねえちゃん」と呼んでいます。

    このことをある知人に話しましたら、それは妹が姉を姉として
    尊敬しているという証拠で、尊敬がなければ姉(おねえちゃん)とは
    呼ばないはずよと教えられました。そうか確かに...。
    姉..つまり単純に考えても目上と認めているということになりますものね。

    姉妹ゆえ、素直になれない心のわだかまりが、姉にも妹にも
    お互いにあるなかで妹から「おねえちゃん」と呼ばれた嬉しさに気づく姉....。

    「おねえちゃん」と呼ぶのは尊敬を意味すると知人が教えてくれたことが
    証明されたような感じがしました。温かいです。

  • シリーズ2作目、さらにいい。

    「私」の根っこにあるのが
    美しい姉と、父であることは
    わかっていました。

    氷解という言葉がぴったりの表題作
    だけでなく、作品全体に流れる
    不思議なものが、どんどん私の心まで
    解してくれています。

    この艶やかな文体。上質な言葉の洪水。
    「私」が柔らかくなっていく経過を
    たくさんの人が見守っています。

    愛されていますよね、「私」。

  • 円紫シリーズ第二弾。
    相変わらず主人公がいまどきの女子大生っぽくなかったり(表紙のイメージもあるかも)、たまに女の子たちの言葉遣いがおかしかったり(例えば友だちや姉がたまに使う男っぽい言い回しは、思春期の無駄に反発したい年齢ならいざしらず、大学生以上の女の子たちが頻繁に使う言葉ではないのでは)、まあ作者の年代の問題かなあ…と思う部分がちらほら。
    あと今回は一話目の朧夜の底の前半「~(なの)である」という語尾が頻発してて妙にひっかかった。なんて揚げ足をとったものの、本作も日常ミステリとしては秀逸でした。さすが。

  • 「夜の蝉」が涙が出るほどに良い。姉妹の愛情が素晴らしい。「空飛ぶ馬」に出てきた落語の「鼠穴」を思い出した。

    さあ次は「秋の花」だ。

  • 円紫さんシリーズ2作目。相変わらず文章が心地いい。ミステリーというより普通の?小説として面白いと思う。

  • 前に「太宰治の辞書」という本のもととなる昔のシリーズ。
    本当だ。主人公は女子大生だ。
    でも、円紫師匠に会う回数は意外にも学生時代の方が多いのねと思う。
    どっちかというと、円紫師匠がいい味というか名探偵。
    彼女は意外と語りなのか。
    ちょっと「太宰治の辞書」とは違う、何かが。

  • 人生の師ともいえる、噺家の円紫さんとの関係を縦糸に、友人の正子と江美、そして姉との関わりを横糸に、「私」の毎日と成長を描く、円紫さんシリーズ二冊目。

    『朧夜の底』
    正子のサークルの発表会をきっかけに、彼女のバイト先の本やさんで起こる不思議。
    本屋さんの事件は特に気になる。
    本人は犯罪だと思っていない、いけないこと…本好きとしては許せない。

    『六月の花嫁』
    江美の知り合いのお嬢様の別荘で起こる、ちょっとした不思議。
    別荘というのはいかにも推理小説らしくて良い。

    『夜の蝉』
    「私」は、美人で派手な姉に対してコンプレックスをはじめとするさまざまな複雑な感情がある。
    姉の方もある。
    姉の恋愛に絡む不思議。
    姉妹が子供の頃からのわだかまりにケリをつけて、それぞれ一歩ずつ大人になる、良いお話。
    嫌な女も出てくるけれど、姉妹に重きを置いて読んだ。
    だから、とてもいい話。

    「私」が、恋愛に対して関心が持てなかったり、洋服で自分を飾ることを恥じているようなところがあったり、という、女としての成長にためらいがあったようだったのは、女らしい姉に対するコンプレックスや胸の奥の反発が原因の一つだったのではないか?
    そのわだかまりも消えて、きっとこの先、女性として素敵に成長していくのではないかと思います。

  • 前のよりこっちのが好き
    きっと次のはもっと好き

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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