医療の巨大転換(パラダイム・シフト)を加速する――糖質制限食と湿潤療法のインパクト
- 東洋経済新報社 (2013年8月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492045060
作品紹介・あらすじ
パラダイム・シフトはもう誰にも止められない!
医学は、異端が主流になる戦いの繰り返しで進歩してきた――。
「糖質制限食」と「湿潤(しつじゅん)療法」のカリスマ医師が、原因と結果を取り違えた非科学的な医学界に警鐘を鳴らし、新しい医学常識と良い医者の条件を明らかにした対談!
[本書の主な内容]
●専門医は自己批判できない
●歴史上の巨大転換「地動説」
●根拠がなかった医学常識
●原因と結果を取り違えている医者たち
●医者は科学を忘れている
●消毒は人の細胞を殺す
●傷を乾かすと細胞は干からびる
●カロリー制限食の限界
●生活習慣病に広く糖質過剰の影が
●大学病院から逃げてくる患者たち
●大規模な組織ほど変われない
●マスコミは新しい治療法の危険性を過大評価する
●巨大転換はバトルで加速する
●インターネットは巨大転換を10年で完了させる?
付記1 糖質制限食の考え方とやり方
付記2 湿潤療法の考え方とやり方
感想・レビュー・書評
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パラダイムシフトが起こる時には、推進派と慎重派がいて、それには専門性が高い医療関係者に起こりがちだと。
それは今まで勉強、経験してきた知識を手放せないから。
それのせいで、本当に合理的かつ科学的なものに蓋がされたままになりがち。
時代によって正しい知識と言うものは変わっていくことを理解する必要性を感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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常識破りの理論を唱えた2人の対談、医学界の抵抗、医者の事情、マスコミ、療法の普及状況など。
パラダイムシフトの話だから、二つの他にもあるのかなと思ったのですが、医療の話と言うより社会とか組織とかの話でした。 -
専門家と言われる人の言葉を鵜呑みにするのが、一番危険なのかな?
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さすがのこのお二人の対談。とても興味深く読ませていただきました。
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これまで根拠なく定説になっていたものには調べると違うやり方の方が良いものが散見される。糖質制限も湿潤療法もその一つ。以前から糖尿病食は炭水化物が多過ぎると思っていたし、食事指導をすると患者さん達からもこんなに食べるの?と疑問の声が上がったものだった。
私も数年ぶりに低炭水化物ダイエット中。さて、どうなりますか。 -
糖質制限にめげ始めていたので、もう一度やる気を起こさせるのに十分な本だった。
糖質制限の栄養的偏り、タンパク質の摂りすぎによる腎臓への負担などを心配していたが、糖尿病患者にとってやはり糖質制限は素晴らしい療法と思えた。確かに、江部さんがおっしゃっているように、インシュリンの適正量が都度の食事でわからない、というところが一番の問題。インシュリンでうまくコントロールでき糖質を含めなんでも食べられるのは理想だけれど、現実は出来ない、ということである。合併症を起こす患者が増えているというのはその証拠ではないか。
興味深かったことは、インシュリン療法が発見されるまでは、糖質制限療法だったということ。それ以外はないので、そうであったのだろう。ところがインシュリンが発見され、それを外から補えるようになって、インシュリンを打って何でも食べるという方向になった、という点。何でも食べられるというのは、糖尿病患者にしてみれば夢のようなこと。 ところが、それでは血糖値コントロールが難しく合併症患者が増えている。悲しいといえば悲しい。
もう一点。最近の研究で、合併症が起きるのは、高血糖状態というのもあるが、むしろ血糖値の日内振れ幅の大きさが影響している、ということが分かってきた。そうなると、インシュリンを打ちすぎて低血糖になったりする場合(血糖値が高い場合ばかりでなく低い場合も)も良くないわけだ。そうなると、やはり糖質制限療法はベターだと感じる。
画期的だと騒がれたインクレチン関連薬について。製薬会社の豪華な招待研修(インクレチン関連薬に関して)に医者が大量に送り込まれたのち、この薬に対する支持の表明が大声で叫ばれ始めた、とのこと。近藤誠著の本を読んだ後だけに、不信感を感じるところである。
湿潤療法にしても、既得益をもつ過去(?)の専門医が、新療法を認めない(認めると自分の専門性の必要がなくなるから)、という点について、なんとも・・・・・情けないといえばひと言だが、彼らも必死なのか。 大手の会社に勤めていて順調にサラリーをもらってきたビジネスマンがある日突然職リストラに会うこともある昨今なので、医学界も例外ではない、というとらえ方もあるのではないかと思う。
医者が自分の利益のため、患者に不利益に動くことがあったとしたら、それは医者個人にとって良い人生、とは言えないだろう。もしその医者に良心がかけらでもあるとしたら。
とても考えさせる本。