良い戦略、悪い戦略

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • コンサルタントとしてのバックグラウンドを持ち、研究者としても重鎮であるルメルトによる1冊。彼は自身の経験、知見を踏まえ、タイトルにあるように「良い戦略」と「悪い戦略」に関する説明を行っていく。

    彼は「良い戦略」には、カーネル(核)とも呼べるべきものが存在しているという。以下で良い戦略の基本構造を引用する。
    「カーネルは、次の三つの要素から構成される。
    1. 診断ー状況を診断し、取り組むべき課題をみきわめる。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。
    2. 基本方針ー診断で見つかった課題にどう取り組むか。大きな方向性と総合的な方針を示す。
    3. 行動ーここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。」(p.108-109)

    こう書かれると、そのシンプルさ故に、どこか語り切られていない部分があるのではないかと疑ってしまう。しかし、逆にこれらのようなシンプルな基本要素すら満たしておらず、目標と戦略を混同している企業が多いということなのだろう。
    本書を読んでいて、特に痛感したことは、ビジネスに解を求めるのは根本的におかしいということである。特定の解など存在するはずもなく、適切な診断、方針立てを行い、自身の仮説をもとに行動するしか、道を切り開く方法はないのである。
    このように突き付けられると、どこか途方にくれてしまう感覚もあるのだけれど、だからこそ、コンサルタントや研究者という職業が面白いということなのだろう。
    過去の伝説的な経営戦略や、現在市場を席巻しているスタートアップの戦略については様々な媒体を通して語られている。しかし重要なのは、それらの根底に存在している論理がどれほど強力、かつシンプルなものであるかを理解し、抽象化して自身に落とし込むことなのだと思う。本書に書いてあったように、戦略とはつまるところ仮説である。自身の実体験、状況の分析を通して出てくる仮説をいかに精度高いものにできるか。結局のところ、正しい問いに対し、圧倒的な思考回数を重ねていくしかないのだと思う。

    =====
    以下、印象に残った箇所を引用。

    「戦略は結局のところ、コーディネートされた行動があるシステムに強制されるという形で具現化するのである。会社という複雑なシステムはてんでばらばらに動こうとする傾向があるが、それを抑えて一つにまとめる力が働くという意味で、戦略の力はまさに強制的と言える。」(p.129)

    「戦略理論の専門家の多くは、価値創造=競争優位を持つことだと考えているため、需要拡大を促すことの大切さを見落としがちである。だが希少なリソースを持つ場合には、それに対する需要をうまく高めることこそ、戦略の基本と言えよう。」(p.234)

    「良い戦略を立てることと、良い仮説を立てることは、同じ論理構造を持っている。(中略)要するに良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだ、という仮説にほかならない。理論的裏付けはないが、知識と知恵に裏付けられた判断に基づいている。」(p.320-321)

    「戦略的になるということは、近視眼的な見方をなくすということである。逆に言えば、ライバルより広い視野を持つことである。」(p.345)

  • 良い戦略とは診断、基本方針、行動というカーネルをもち、即実践可能な一貫性があるものである。

    CC&Sのケーススタディは印象的。
    ある特定のセグメントにターゲットを定め、無競争状態において、そこに対応できるシステムを用意し、高い価値を提供する戦略をフォーカス戦略と呼ぶ。

    実際のビジネスでは多くのことを求めてしまいがち。
    ただ、限られたリソースをどのように配分していけばよいかは、どこにフォーカスすれば最も効率が良いのかを検討することが近道であるだろう。

  • 良い戦略に備わっている第一の価値は、新たな強みを生み出すことである。他の組織はどこもそれを持っておらず、かつあなたが持っているとは予想もしていないだけに、その価値は圧倒的である。
    良い戦略は重要な一つの結果を出すためのまとを絞った方針を示し、リソースを投入し、行動を組織する。

    良い戦略は以下の3つで構成されている
    1. 診断
    - 状況を診断し、取り組むべき課題を見極める。良い診断は死活的に重要な問題点をよりわけ
    複雑に絡み合った状況を明解にときほぐす。

    2. 基本方針
    - 診断で見つかった課題にどう取り組むか。大きな方向性と総合的な方針を示す。

    3. 行動
    - ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動である。
    悪い戦略の特徴
    1. 空疎である
    - わかり切ったことを必要以上に複雑に見せかける、中身のないことを厚化粧で覆い隠している。

    2. 重大な問題にと取り組まない
    - 見ないふりをするか、軽度あるいは一時的にといった誤った定義をする。
    問題そのものの認識が誤っていたら適切な戦略は立てることができない

    3. 目標を戦略を取り違えている
    - 悪い戦略の多くは、困難な問題を乗り越える道筋を示さずに単に願望や希望的観測を語っている

    4. 間違った戦略目標を掲げている
    戦略目標とは、戦略を実現する手段として設定されるべきもの。
    これが重大な問題と無関係だったり単純に実行不能だったりすれば、間違った目標と言わざるを得ない。

    この辺りがとても良かった

  • マーケティング初心者には難しいところも多かったが、
    軍隊での事例、実際の経営での事例も多くあり
    分かりやすく説明している。

    いい戦略とは
    なぜやるのかという事が述べられており
    理念だけではなく、どういった行動をすればいいか
    具体性があるもの。

    また読み直したい本。

  • 経営戦略の大家であるルメルト氏の代表的な著作です。非常に実践に即した解説がなされており、経営戦略を学ぶ上で必ず読んでおきたい一冊です。

    【23/5/20再読メモ】
    ・戦略を立てるときには「何をするか」と同じくらい「何をしないか」が重要
    ・悪い戦略の4つの特徴
    ①空疎である
    ②重大な問題に取り組まない
    ③目標を戦略ととりちがえている
    ④まちがった戦略目標を掲げている
    ・良い戦略は十分な根拠に立脚したしっかりした基本構造を持っており、一貫した行動に直結する。この基本構造を「カーネル(核)」と呼ぶ。カーネルは以下から構成される
    ①診断
    ②基本方針
    ③行動
    ・戦略策定で基本的な要素の一つは、敵の考えや行動を予測することである
    ・競争優位を持っているだけでは高収益に直結するとは期待できない。つまり競争優位と富の関係は変動する。競争優位が高まれば、あるいは競争優位を形成する要素への需要が高まれば、より多くの価値がもたらされる。そのためには少なくとも次の4つのうち、どれかを目指す戦略が有効
    ①競争優位を深める
    ②競争優位を拡げる
    ③有意な製品またはサービスに対する需要を増やす
    ④競争相手による模倣を阻むような隔離メカニズムを強化する
    ・戦略思考のテクニック
    ①カーネルに立ち帰る
    ②問題点を正確に見極める
    ③最初の案を破壊する

  • ”「戦略もどき」の化けの皮をはぐのを第一の目的として書かれたルメルト氏の骨太戦略本。カーネル(診断、基本方針、行動)を明確にして、最も効果の上がりそうなところに強みを活かした最強の武器を投じることを説く。
    気になったキーワードは、強み、調査&発見、なぜそれをするのか、仮説、バーチャル賢人会議。

    シントピック・リーディングで読んだ6冊の戦略本・マーケ本の1冊。

    <読書メモ>
    ★戦略とは、そうした重大な課題に取り組むための分析や構想や行動指針の集合体と考えればよい。
     (略)良い戦略には、とるべき行動の指針がすでに含まれている。こまかい実行手順が示されているわけではないが、やるべきことが明確になっている。(p.10)

    ★私からアドバイスしたいのは、まず会社にとって最も有望な機会は何かを、見つけることだ。(略)機会を発見するためには、少人数のチームを編成し、一ヶ月ほど時間をかけて調査するといいだろう。会社のサービスの買い手は誰なのか、競合相手は誰で、どんな強みを持っているのか、どんな新しいサービスが可能か、開拓可能な見込み客は誰か、そういうことを調べるんだ。自分の業界にどんな変化が起きているか、くわしく調査することはどんなときにも役に立つ。(p.72)
     #これをチームでやって、共有していきたいな。

    ・良い戦略は、十分な根拠に立脚したしっかりとした基本構造を持っており、一貫した行動に直結する。この基本構造を「カーネル(核)」と呼ぶ(略)
     カーネルは、次の三つの要素から構成される。
     1.診断 ? 状況を診断し、取り組むべき課題をみきわめる。良い診断は死活的に重要な問題点を選り分け、複雑に絡み合った状況を明快に解きほぐす。
     2.基本方針 ? 診断で見つかった課題にどう取り組むか、大きな方向性と総合的な方針を示す。
     3.行動 ? ここで行動と呼ぶのは、基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動のことである。すべての行動をコーディネートして方針を実行する。(p.108-109)

    ★良い戦略とは「何をやるか」を示すだけでなく、「なぜやるのか」「どうやるのか」を示すものであるべきだ。
     良い基本方針は、埋もれていた強みを引き出し、あるいは新たな優位性の源泉を開発して南極を打開する。いやむしろ、こうした優位性を見つけることこそが戦略の要諦と言えよう。(p.118)

    ★今日でも、有能なストラテジストがやっていることは決定ではなく設計であり、選択肢の中から選ぶのではなく自らデザインしている。戦略立案は、どの車を買うか決めたり、新工場の広さを決めたりする作業よりも、高性能の飛行機を設計する作業に似ている。マネジャーが意思決定者だとすれば、ストラテジストはデザイナーだと言えよう。(p.176)

    ★要するに良い戦略とは、こうすればうまくいくはずだ、という仮説にほかならない。理論的裏づけはないが、知識と知恵に裏づけられた判断に基づいている。そして、みなさんのビジネスについて、みなさん以上に知識と知恵を持ち合わせている人は誰もいない。(p.321)
     #ヒューズ・エレクトロニクスの衛星ビジネスについて、ルメルト氏が経営陣たちに語った言葉。「確たる理論がない」という批判への回答。

    ・戦略思考のテクニック (p.355-362)
     テクニック1 カーネルに立ち帰る
     テクニック2 問題点を正確にみきわめる 
     テクニック3 最初の案を破壊する

    ★とは言え自分のアイデアを破壊するのは容易なことではないし、楽しい作業でもない。(略)私はそんなとき、他人に助けを求める??と言っても生身の人間ではない。じつは頭の中に「バーチャル賢人会議」を用意してあるのだ。これは、私が師匠と仰ぐ人たちの集まりである。自分のアイデアを批判してもらいたいとき、あるいは新しいアイデアの刺激を与えてもらいたいときに、私は賢人を呼び出してバーチャル対話をする。(p.359)
     #これ、いいね!


    <きっかけ>
     たまたま書店で見かけ、骨太そうな内容に興味をもったので購入。”

  • 現状把握・分析をとにかく大事にする
    キャッチーな思いつきやビジョナリーなリーダーだけで戦略はできないということを丁寧に教えてくれる良書

  • 良い戦略、悪い戦略とは何かについて述べた本。
    少し冗長に感じてしまう部分もあったが、戦略というものについての示唆が盛り込まれた良著。

    <メモ>
    ・戦略策定の肝は直面する状況の中から、死活的に重要な要素を見つけること
    ・どんな戦略をとっているかと聞くと、需要動向の変化や新たな技術に対して他者に先駆けてそれを活用し、優位に至ったという回答が多い。機械の窓が開いたのを逃さないということ。必ずしも最初に行動を起こす必要はないが、最初に有効活用しなければ優位には立てない。
    ・悪い戦略の4つの特徴
    1空疎である。中身がない。華美な言葉や不必要に難解な表現で高度な戦略思考のような幻想を与える
    2重大な問題に取り組まない。見ないふりか、軽度あるいは一時的と行った誤った定義をする。
    3目標を戦略と取り違えている。単に願望や希望的観測を語っている。
    4間違った戦略目標を掲げている。

    ・良い戦略とは一つか二つの決定的な目標にエネルギーとリソースを集中投下し、その達成によって次々と新しい展開へとつなげていく。悪い戦略ではいろいろなことを詰め込みすぎてごった煮状態の目標が掲げられていることが多い。
    ・基本方針は漠然としたビジョンとは異なり、道筋をはっきりと示すもの。ただし、それだけで戦略と言えるものではない。診断によりどのような方針が可能か、比較検討して選び始めて構築される。良い戦略とは何をやるかを示すだけでなく、何をやらないか、なぜやるか、どうやるのかを示すものであるべき。
    良い基本方針は埋もれていた強みを引き出し、新たな優位性の源泉を開発して難局を打開する。優位性を見つけることが戦略の要諦。
    ・全社一丸となるような戦略は、得られるメリットが大きい時に限るべき。優れた組織は使い分けをわきまえる。何をやるにも全部門の行動を統率すると行った愚は犯さない。通常の活動はそれぞれの部門に委ね、ここぞという時に行動を一点集中するのが賢い戦略であり、賢い組織。
    ☆価値の創造。次の4つのどれかを目指す戦略が有効である
    1競争優位を深める
    2競争優位を広げる
    3優位な製品またはサービスに対する需要を増やす
    4競争相手による模倣を阻むような隔離メカニズムを強化する。
    ・経験知識があれば良い戦略を立てられるわけではない。目先や最初の思いつきに迷わされずに自分の考えを導いていくための三つの習慣
    1 近視眼的な見方を断ち切り、広い視野を持つための手段を持つこと。例えばリスト化して考える
    2 自分の判断に疑義を提出する習慣をつけること。自分からの攻撃に耐えられない論拠は現実の競争に直面したらあっさり崩壊してしまうだろう。
    3 重要な判断を下したら記録に残す習慣をつけること。事後評価をして反省材料として活用できる。

  • 戦略と戦略もどきの違いを明快に説明した名著だと思います。取り組む課題に関して、なぜやるのか、どうやるのか、なにをやるのか、の3つを示したものが戦略であり、多くの重要な課題から最重要な課題を選択してそこにリソースを集中することがリーダーの役目。

  • Vol.366 何度も繰り返し読みたい書。戦略思考の神髄ここにあり。http://www.shirayu.com/letter/2016/000741.html

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