インド夜想曲 (白水Uブックス 99 海外小説の誘惑)

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  • Amazon.co.jp ・本 (163ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560070994

感想・レビュー・書評

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  • 何と言うか不思議な感じの物語。途中までは全体的に意味がよく分からない感じなんだけど不思議とそれが苦痛には感じられず、読み進めていくうちに「ん?あれはそういう意味なのか??」みたいな感じでまた読みたくなるような感じの不思議な作品でした☆特に何が正解とかは無さそうなので読書会の課題本とかにしても面白そう♪

  • 失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公の前に現れる幻想と瞑想に充ちた世界。ホテルとは名ばかりのスラム街の宿。すえた汗の匂いで息のつまりそうな夜の病院。不妊の女たちにあがめられた巨根の老人。夜中のバス停留所で出会う、うつくしい目の少年。インドの深層をなす事物や人物にふれる内面の旅行記とも言うべき、このミステリー仕立ての小説は読者をインドの夜の帳の中に誘い込む。イタリア文学の鬼才が描く十二の夜の物語。

  • インドでの抒情的なエッセイのようなタイトルであるが
    非常に企みの上手い作家らしく、あれよあれよという間に
    抜き差しならない場所に連れ込まれてしまう。

    それにしても
    「抜粋集(アンソロジー)には御用心」とか言われるし、
    そもそも訳者の須賀敦子が解題をしてくれているので
    ほとんど僕が何かを言えることなんかないのである。
    困った本だ。

    だから物語について話すことは諦めて旅について話したい。
    一人旅、それも目的もあるようでないような旅というのは
    それを好む人と好まない人がはっきり分かれる。

    (僕はとても好きです。場所についてから観光案内所の看板から面白そうなところを探したり
    駅についてから裏口に進んでみたり、不思議な看板を見ればとりあえず中に入ろうとしたり)

    しかし好むと好まざるとに拘らず、
    目的を失って放り出されることがある。
    それは達成したから、というわけではない。
    目的にしていたものが、
    今そうする必要がないと分かってしまうような不安定な状態のことをイメージしている。
    (目的設定の適切さ故に、こうなることすらあるはずだ)

    宙ぶらりんの隙間のような時間、
    眠りに落ちる寸前の時間あるいは眠りに落ちている時間。
    無作為な瞬間には予感が詰まっている。
    トランスと呼ばれるような大仰なものでなくても、
    初夢ですら未来への予知や期待をもたらす。

    目的のない旅はそのような予感によって作動する。
    予感がなければないで、雲を見ながら本でも読めばいい。
    何か意味のあるものでなくてもいい。旅は旅であることで十分なのだ。

    また、この本の最初には
    現れるホテルなどのスポットが実在のものであることを示す
    簡単な註がついている。
    だから、この本を読むことは旅行ガイドとして機能する。

    旅で得られるものは断片でしかないが、
    私自身のサイズより少し持て余すような断片である。

    >>
    「それでも、その人は旅に出たんでしょう」医者は言った。
    「そのようです、結果的にはね」(p.33)
    <<

    何気なく差し挟まれるメタっぽい会話。
    しかし、それを超えて状況がどんどん転がり込んでくるのが
    この物語の面白いところだ。

    >>
    「気にすることはない」、老人はまるで僕の考えを読みとったように言った。「わしにはたくさん情報員がいる」(p.103)
    <<

    12の断章で構成されているが、
    各章ごとに映画の予告編が作れそうなシーンがある。
    こうしてまんまと最後まで連れ去られてしまうというわけだ。

    ないようについて話すことは無いけれど、旅が好きな人もそうでない人もぜひ。

    それと、この本について書きながら別の本を思い出していたので
    それも紹介しておく。

    『空気の名前』
    著:アルベルト・ルイ=サンチェス
    訳:斎藤文子


    こちらもエキゾチックな旅で
    さらに細い路地を通り、ウェットである。

  • 旅をテーマにした書評で知った本。いくつかの書評や紹介コーナーで見かけたので有名な本なんだろう。
    インドの深い部分が垣間見えて良かったし、ミステリアスな面もあるが、インドに旅行したくなる気にはなれなかった点がマイナス。
      19年7月8日読む

  • 再読。失踪した友人を探してインド各地を旅する主人公。ホテルとは名ばかりのスラム街の宿、饐えた匂いと蒸し暑い夜の病院、夜中のバス停で出会った目の美しい少年。様々な人と出会い、交流をしながら、その旅路は何時の間にか己の裡を彷徨う旅へと変容していく。折り重なり、積み重なる暗示的な十二夜の物語は幻想的な美しさをおびて、手が届きそうでありながらするりと逃げていく蜃気楼のよう。異国情緒に溢れたミステリアスな素晴らしい作品。

  • “はじめに”不眠と旅の本である定義付けがされる。失踪した友人を追い、インドの夜を渡る物語。
    又聞きしたような異国情緒と生々しさがない交ぜになった不思議な読み味。
    夢現とは違う、どろりとした幻想との境のなさが、なまあたたかい。

  • えっ、どういうこと??

  • これは不眠の本であるのか。

    眠れない夜は空想的になる。浮遊した魂は思いもよらぬところへと連れていこうとする。

    夜の闇の断片の中で出会う人々。何かを追求しているような、また拒否してもいるような、不思議な自由さと不自由さを感じる追いかけっこのよう。

    光は消えてゆこうとしているのか。そもそも光とはなんだろう。

    エキゾチックなインドの夜のゆらめきに溶けてしまいそうです。

  • なんと素晴らしい…インド彷徨幻想曲。ハこういう、無限諸島的な、架空じみた町々の物語は大好物。ードカバーで言語版を持っておきたい…読めないけど。須賀敦子さんの翻訳がまた美しい。

  • うそだと思って読んでみるといい。その方がきっと、最後にあっとさせられる。
    詩的ながらも友人の追跡というサスペンス感もあるストーリーでなかなか眠らせてもらえなかった。インドのもつ臭いのようなものも描写に滲み出ていてそれも旅行記らしくてよかった。

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著者プロフィール

1943年イタリア生まれ。現代イタリアを代表する作家。主な作品に『インド夜想曲』『遠い水平線』『レクイエム』『逆さまゲーム』(以上、白水社)、『時は老いをいそぐ』(河出書房新社)など。2012年没。

「2018年 『島とクジラと女をめぐる断片』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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