- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569760452
感想・レビュー・書評
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短編集。
全体に切なさが漂う。ゆっくり楽しみました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
タイトル通り、妖しくも切ない、江戸時代だからこそのどうにもならない諦めにも似た絶望、闇のある様々な男女の恋の話。心中薄雪桜、螢沢、十六夜鏡、春禽譜、妖恋、夕紅葉、濡れ千鳥。幻想的な雰囲気。
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タイトルからして美しい言葉が並ぶ。合わせて挿絵の妖しい美しさ。
本篇を彩る言葉がまた贅を尽くした絢爛さだ・・・人物や風景、行事、召し物などの江戸模様がまた良い。
今宵はどの篇で甘美な絶望の夢をみようか・・・蛍舞い飛ぶ沢か、菊の香漂う薄もやの早朝か・・・ -
人間の醜く生臭くも狂気的な恋情が、残り香のするほど雅やかな幻想小説にばけてしまう皆川さんの筆致。タイトルといい挿絵といい更に雰囲気を盛り上げて、お見事です。今まで読んだ皆川さんの作品では、西洋を舞台にしたものや近代物が多かったので、短編ながらもこのように研ぎ澄まされ完成された時代物の引き出しを見て、その多才さに脱帽であります。
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97年に刊行された単行本の文庫化……と考えると、やっぱり『ペガサスの挽歌』や『皆川博子コレクション』のお陰だろうか。いずれにしても、古い作品の入手が容易になるのは有り難い限り。
内容は時代物の幻想短編で、『心中薄雪桜』『十六夜鏡』が良かった。特に『心中薄雪桜』のラストシーンは圧巻。 -
深いのにどこか淡々とした切なさ。
「春禽譜」が一番好きかなあ。 -
切ないです。との物語も切ない妖しさ、現代人の感覚からするとどうしようもない閉塞感、そんな空気の重さに覆われているのに、作品世界は幻想的で軽やかです。あともうちょっとで幸せをつかめそうなのに、いや、案外当人は幸せな生を全うしたと自足しているのかな、という気もします。ちょっと宮木あや子さんの『花宵道中』に似た感じを覚えますが、あちらが悲恋物語中心なのに対し、こちらはやはり幻想譚中心と言えるでしょうか?
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江戸時代を舞台にした幻想的な短編集。恋に縛られ身を滅ぼす男女の心の機微が、幽玄かつ繊細な筆致で描かれる。読んでいるうちに、夢と幻の境目が曖昧になっていくような不思議な感覚が味わえる。特に前半収録の何篇かは、語り口調が泉鏡花っぽいなと思った。