- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569843889
感想・レビュー・書評
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下巻はちょっと期待したほどではなかった。京の扇屋の息子が恵まれた画才の縁であの天正遣欧少年使節に随行してヴァチカンを目指すくだりの上巻では登場人物がみな生き生きと書かれていてワクワク出来た。しかし当巻では目的地を目指し遂行する過程が主になりドキドキ感が薄くなってしまった。宗達とカラバッジョの運命的な遭遇も少し無理ヤッコ感がありますね。日本の風神雷神とかの国のユピテル アイオレスを終盤のテーマにする着想もやや強引な感じが残りました。ともあれぼんやりイメージだった遣欧少年使節を再認識する機会になりました♪
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もう下巻は読むのを止められなかった、そして天正少年使節の話は日本にたどり着くことはなかった、待ち受けるのは過酷な運命だけだもの、このあたりは遠藤周作の「沈黙」等を読んでもらうしか仕方なさそうだ。それにしても実際の歴史上の人物を使いここまでホラ話をされると逆に気持ちいい、前作のモネの睡蓮は実物が実際に発見されたこともあってこれが創作なのか実話なのか混同しかけたが、今作の「ユピテル アイオロス」は実物がないだけに流石に苦しい。それに古文書解読なら磯田道史に頼みそうなものだとちょっと感じてしまった。しかし読み物としては非常に面白かった、それと雷神が白いのも確かに不思議だ。
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織田信長、狩野永徳、俵屋宗達に天正遣欧少年使節の少年たち、さらにカラバッジョ。
これだけ有名な駒を動かしながら、誰にも思い付かないような壮大な物語を作り上げちゃう。さすが原田マハさん!
またまたおもしろい魅力的なアートファンタジーを読ませてもらった。
カラバッジョの『ユピテル、アイオロス』観てみたい! -
もし俵屋宗達が天正遣欧少年使節と共にヨーロッパに渡り、ミケランジェロやダ・ビンチの絵画に触れていたら・・・
と言う何とも夢のある物語。
その生涯が謎に包まれている宗達だったからこそ、このような物語が描くことが出来る訳で、フィクションであっても、夢があって、ワクワクする内容だった。
織田信長が天下統一を目指す日本で、九州を中心に栄えたキリスト教の布教。そんな時代にローマ法王に謁見する為に海を渡った原マルティノを始めとする4人の少年たち。
ヨーロッパに行くまでに3年、そして帰国するまでにさらに7年。日本は帰国した彼らには不遇な時代になっていたが、ヨーロッパに行くまでの航海や、スペインからバチカンに向かうまでの道中、パレスティナ聖堂でのローマ法王との謁見・・・どのシーンも生き生きと描かれていて、時代小説とはとても思えない。
そんな彼らに信長にヨーロッパの印刷技術を盗んで来いと命じられた宗達が同行する。
ヨーロッパに着いても、西欧に合わせず、飄々としている宗達が何ともいい。
そして、ラストに描かれたカラヴァッジョとの出会い。
西欧と日本とで描く絵は全く異なる二人だが、心で通じたことが手に取るように分かるシーンだった。
実際にもう何年も前に宗達の「風神雷神図屛風」を見たことがあるが、この作品を読んで、もう一度京都に絵を見に行きたくなってしまった。 -
前半のワクワクする展開から後半も期待したのだが、思ったほどの感動を得ることができなかった。しかしながら、遣欧使節を迎える当時のイタリアの様子や、派遣された少年たちの生き生きとした感情描写は読んでいて心地が良かった。また、作者の並々ならぬ絵画への愛着が良くわかる作品だった。
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原田マハさんの小説の中で一番好きかもしれない。とてつもない発想。歴史の偶然。事実ならばどんなに興味深いことだろう。何度か見た俵屋宗達の「風神雷神図屏風」。次に目にすることがあれば泣いてしまいそうだ。
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宗達がスペイン国王と謁見し、父の扇を王へ差し出したシーンが印象的でした。
万感の思いが込められた扇ー.
とある場所で読んでいましたが、ウルっとしてしまいました。人前だったのに危ない。
冒険記のようで弾むように読み進め、あっという間でした。
合掌。 -
下巻読了。
命がけの航海を経て、ヨーロッパにたどり着いた宗達と天正遣欧使節団達の一行。
この巻では、ヨーロッパでの滞在中の彼らが描かれています。
初めて東洋人を迎える欧州の人々の様子や、スペイン国王、ローマ教皇への拝謁。そして圧倒的な西洋美術との邂逅・・。
そう、あくまでこれは壮大なフィクションです。そもそも“小説を読む”という事は“創作(フィクション)を楽しむ”ものだと、“私は”思いますので、本書の展開は個人的に凄く夢があって好きだなぁと、存分に楽しませて頂きました。
そして、ミラノのサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院の食堂に描かれている、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の前で、東西の若き天才芸術家が“運命的な出会い”をする場面は、何ともドラマチックで最高のシチュエーションですよね。
本当に、洋の東西を問わず美しいものを愛でる心は共通しているのだな、としみじみ思います。
本文中にあった“美術(アート)は、歴史という大河が過去から現在へと運んでくれたタイムカプセルのようなもの・・”という記述は、まさに言い得て妙だと思いました。
因みに史実では、“天正遣欧使節団”の少年達のその後はキリシタン弾圧の真っ只中への帰国という事もあり、かなり過酷な末路になってしまうようなのですが、
本書では明るいラストになっていて、読後感が爽やかで良かったです。 -
初めて星⭐️マックスにしたかも。
2022年、私の中でベストオブベスト。
楽しませていただきました!
まさか、あの時代のあの使節団の中に、あの絵師がいて、イタリアでそんな出会いがあったとは!
想像妄想夢膨らむ一大ストーリーに拍手しました。
河北新報にも連載されたんですね。
楽しいひととき、ありがとう