犬がいた季節

著者 :
  • 双葉社
4.21
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感想 : 673
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575243253

感想・レビュー・書評

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  • 「ハチコウ」こと八稜高校で拾われた白い迷い犬がいた。
    その犬はコーシローと呼ばれ、その世話をする生徒会や有志によるコーシロー会ができる。

    そんなコーシロー会の代々の生徒たちの青春時代が、時々コーシローの目線になりながら、短編集のように描かれていく。

    犬が出てくる小説が好きなのだが、この作品はコーシローの存在が濃すぎず、ハチコウでの所々に顔を出す感じが、可愛らしくてまた良い塩梅だった。

    甘酸っぱさや爽やかさだけでなく、苦さも含まれているのに、読んでいて心地よい作品。
    そして、昭和の終わりから平成の時代を表すキーワードがちょこちょこ出てきて、懐かしくクスッと笑ってしまった。

  • 文句なし星5つ!
    読後の心がとても温まる良本。

    四日市市の八稜高校で飼い始めた白い犬、コーシローの成長と共にその時代を生きた生徒達の5話。
    S63〜R元年 当時流行った曲が所々に出てくる。セナと走った日、のF1の話もとても懐かしい。
    最終話で、其々の章で出てきた生徒が大人になり学校の式典で集まる。そして素晴らしいラスト!サイコー!

    塩の満ち引きが人の生死に関係している、と思った高校生、祖父の介護を巡って家族が争う、未来を夢見て自分を削ってお金を貯める…震災での辛い思い…切実な現状もすごくリアルで心動かされる。
    そんな中にコーシローがいる事で温まる何かがある。

    2021年 おススメの良本の1冊

  • 会いたい人を待つ健気にコーシローに、何度も心揺さぶられる。
    そして、季節が巡って、在学生が代わっていく切なさ。何度も涙させられました…!
    素敵なハッピーエンドで、温かい気持ちが残る最高の1冊。

  • 舞台は四日市。子供の頃四日市と鈴鹿でとにかくよく遊ばせてもらった。サーキットや駅の様子、自分で運転免許も取りそこの親戚の家に自分でも行けるようになり走った懐かしい風景も描かれてた。

    時代設定がドンピシャ(笑)

    とにかくキュンキュンするストーリー。
    それだけでは無い、子供でもない大人でもない繊細な心の動き、共感や懐かしさがこみ上げる。

    青春真っ只中の高校生たちの素直な感情、それを見守るコーシロー。

    温かい気持ちになれる一冊。

    • さてさてさん
      みきっちさん、こんにちは!
      フォローありがとうございます。
      私もこの作品を読みましたが、みきっちさんの
      > 青春真っ只中の高校生たちの...
      みきっちさん、こんにちは!
      フォローありがとうございます。
      私もこの作品を読みましたが、みきっちさんの
      > 青春真っ只中の高校生たちの素直な感情、それを見守るコーシロー。
      という一文まさしくその通りでした。今年上半期のベスト本と思っていますが、年間で考えても素晴らしい作品でした。
      温かい気持ちが蘇りました!
      2021/12/18
  • 四日市近辺を舞台とした青春物語。
    その辺りの地理がわかれば、イメージが膨らむかも。
    昭和から平成の時代の流れを感じさせます。
    具体的な人物や出来事などがところどころ出てくるので、その時代を知っていれば懐かしくなるかもしれませんが、たとえ知らなくても物語の良さは変わらないと思います。
    ラストが良かった。

  • 冒頭、犬が捨てられるシーンからまず切ない。所々出てくる犬の気持ちもすごーく愛おしい。

    その犬のいる高校で家庭環境に苦しんだり、経験したことのない大切な友人関係に出会う高校生たちのお話。
    大人になる前の高校生ゆえ伝えきれない想いや、上手くいかない親子関係、ままならないことが多く、読んでいてもどかしくて切なくなります。

    最後まで読むと、また読み直したくなる一冊です。

  • 八陵高校、通称ハチコーに捨て犬が迷い込み、高校で育てられ、看取られるところまでを中心に描いた物語。捨て犬「コータロー」の視点から物語は始まっていく。

    「18才」という大人でも子供でもない多感な時期を切り取り描いた作品。その時代に起こった出来事も彼彼女らに大きな影響を与えていく。

    第一章に出てくるユウカとコータローの二人のことがずっと根底にあった気がする。二人のことが読んでいて離れなくて。
    でも、大人の青春もいいよね、と嬉しくなる一冊。

    カバーを外した仕掛けが、この物語をますます胸に沁みる作品にしてくれた。

  • 高校に迷い込んできた犬を学校で飼うことにする。その生徒たちの思いが何代も繋がっていきながら、お互いの友情や恋愛、先生への憧れや将来への期待や不安でストーリーが紡がれていく青春小説というところ。特にその時から時間の経った大人には懐かしい思いもすることがあって、しみじみといいお話だなぁとは思う。
    けどもう一つ入り込めなかった理由がある。一つ一つのエピソードに纏わる心情や裏話が軽くて掘り下げが足りないような気がしたこと、もう一つは人間の言葉がわかる犬の描き方。物足りなさと作り物感がちょっとだなあと思いながらも、最後の場面は心温まるエンディングにはよかったかな、というところだった。

  • この小説は私の琴線に触れるものでした。


    なんの取り柄も才能もない。だから勉強を頑張ってみたけど、やっぱり怖くなる。本当に普通で凡庸で。


    中学では学年で1番勉強ができました。
    憧れの県内トップの進学校に入学して、どれだけ狭い世界しか見えていなかったか思い知らされました。

    勉強はもちろんのこと、物事の考え方の次元が違う、人間としての器が違う。
    尊敬できる人ばかりで、そんな中に何でもない私がいていいのだろうかと苦しみました。
    でも諦めたくなくて、勉強に3年間を捧げ、もがきました。

    あんなに必死に勉強をする高校生って今考えるとそんなに多くないことに気付きます。
    もっと違う3年間も選ぶことができたと思います。
    それでもあの時間は自分にとって必要なものだったと信じたいです。


    桜の花を見ると、ああまた1年経ってしまったのだなと切ない気持ちになります。


    What kind of high school life did you spend?
    I know that there is a narrative for each person.
    I haven't given up believing in my possibility.

  • コーシローの目を通して移り変わる八校生の青春がとても心に染みいって心地よい気分。読んでよかったぁ。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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