モリのアサガオ 4: 新人刑務官と或る死刑囚の物語 (アクションコミックス)

著者 :
  • 双葉社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (218ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575832037

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  • 第31〜40話収録。
    4巻は被害者にスポットライト。渡瀬満と同様に仇討ちをした笹野武と、被害者である少年の両親。好きな女性とその恋人を殺害した粂野秀雄と、ある日行方不明となった息子を探し求める母。死刑囚に冷たく当たる刑務官・里中和明の過去。迫仁志に焼き殺された福田将吾の両親と弟。全ての被害者が加害者に極刑を求めるとは限らない。加害者を死刑にしたからと言って、被害者が帰ってくるものではないんだよね。でも加害者を恨まずにはいられなくて……。難しい問題。一方、直樹にいつの間にか関心を抱いている渡瀬満。何があった?

  •  死刑制度の矛盾と逆説が更に加速していく4巻です。

     いじめで子供を殺された復讐で三人の子を殺した死刑囚・笹野は、息子がいじめで殺されたことの決着をつけてくれなかったことに対する疑義の念として再審請求をすることに。これを呉智房風に言うとすれば、「国家による復讐権の代理行使」が不作為だったことに対する責任追及、ということになりそうです。
     物語の中では、死刑制度の歪みのようにも描かれていますが、これって行政の不作為の問題だと思うんです。いじめ問題をちゃんと解決できなかったから、被害者による復讐を誘発してしまったという話ですから、死刑はあんまり関係ないように思うところです。(もちろん、刑事政策の問題としてこの問題が極めて重要であることに異論はありません)

     続く粂野の事例も、問題設定は「死刑には犯罪抑止力があるか?」となっていますが、これも死刑マターの問題と捉えることには疑問があります。
     粂野は、犯罪が発覚して死刑になることをおそれて罪を重ねます。ただ、「逆は必ずしも真ならず」で、これを以て「死刑が無ければ更なる犯罪はなされなかった」ということはできません。死刑以外にも、犯罪の露見をおそれて罪を重ねることはあり得るわけですから。
     例えば、横領や窃盗の事実を知られた犯人が、それが露見することで人生が破綻してしまうことをおそれて、知られた者を殺す、という刑事ドラマにありがちな設定がありますが、このとき「横領罪や窃盗罪で刑罰を加えることは、その露見を防ごうとする犯人によって更なる犯罪がなされる虞がある。この意味で横領罪や窃盗罪はむしろ犯罪を誘発することもあり、犯罪抑止効果が無い」と主張する人がいれば、やはり首をかしげざるを得ません。
     死刑賛成・反対は措いといて、とりあえずこの筋での死刑反対論はあまり筋の良い議論ではないように思うところです。

     他にも、死刑囚に冷淡な刑務官・里中の過去や、被害そのものを忘れて幸せな生活をやり直そうとする被害者家族の話など、切ない話の目白押しです。が、そんな人たちが心を開くのも、主人公・及川の優しさと必死さが伝わったから。北風と太陽ではないですが、厳しく対処するだけではお互いの心を閉ざしてしまうだけ、というのはわかるような気がします。(勿論、厳しさも必要なのは言うまでもありません)
     それにしても及川君、ちょっと一々泣きすぎです!(笑)

     ここに来て少しフェイド・アウトしている渡瀬と及川の交流も気になりますが、あちこちの伏線を回収すべく本巻の最後で及川自身の秘密について言及されます。死刑制度や被害者・加害者の心情といった謎の「森」に迷い込んでいる及川が、更なる謎により「樹海」入りしそうな次巻が気になります。

  • 図書館の本

    刑務官若林の物語。
    そして犯罪被害にあった家族の犯罪の捕らえ方、犯人への感情。
    そんなものの問題提起だったように思います。

    復讐はありかなしか?
    死刑はありかなしか?
    だんだん論理が煮詰まってきています。

  • 心には、方程式のような答えはないから、反省のしかたも、恐怖の感じ方も、かかわった人物の心の持ち方も決しては同じではない。

  • それにしても及川君はよく泣くなぁ。

  • 読みながらダーダー泣いてたのに、バイト先の本屋でアダルト漫画と並んでたのを見て哀しくなった。

  • 死刑を執行する側とされる側…死刑とは本当に必要なのか…考えさせてくれる本です☆彡

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