- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582834062
感想・レビュー・書評
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短篇集。それぞれの作品が微妙に繋がっている。江戸の末期から戦後の昭和の時代までのお話。悲しかったり、寂しかったり、ほんの少し微笑ましかったりする。
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「ぽけっとの、深く」と「てのひら」が好き。「てのひら」は、過去の高3進研模試で出ていたような?
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東京の町々を舞台に、江戸末期から第二次大戦後までの時代を背景として、庶民を主人公にした連作短編集。連作とは言ってもそれぞれの短編のかかわりは薄い。でもかえってそれによって、私とも薄いつながりがあるであろう、過去に生きた人達の人生のことをなんとなく想うことができた。特に浅草六区の映画館を舞台にした一編が気になった。
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江戸時代から戦後まで、江戸の巣から始まり、品川、本郷、市ヶ谷、渋谷などのそれぞれの地名に絡んだお話が連なった連作短編集『茗荷谷の猫』を読了。9つの話で構成されているが、ぞれぞれが独立してあるのではなくけれど同じ話が続いて行く訳ではなく、著者がわずかながらの話をつなげる手がかりをうまく隠し味のように埋め込んであるので、読み手はそれらに少しばかり助けられながら描かれた市井の人々の思いを追いかけて行く事が出来る。描かれている人たちは江戸や東京と言った大都市の中でつつましく暮らす目立たない人たちで、けれど目立たない人たちにも暮らしがあり、人に話せない思いがあったりするという千差万別の人の生き様への著者の愛情が感じられる小説だ。
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なんとか時代って、いっぱいあって、
むかーしのなんとかの時代から時代へ、
それで今まで、やっぱ
人で繋がってるんだよなぁー
って、今さらのようにおもえた。
読んでて、辛くて、さみしくて、おかしくて
きれいに、スマートに繋がってないんだけど
いろんな人が何かしらやってきて
この時にも、なんらかしら
繋がっているのかも。
って想う。
こんなカンジの読み物って初めて。 -
江戸から戦後までの短編連作集。その時代を生きてく人々がとても丁寧に描かれる。粋であったり自堕落だったり様々な人々。そして漂う人情感。
いままで使ったことのない表現や言葉たちにはたと目をみはってしまった。
町も人も映像になって、こちらに訴えかけてくるような作品だった。
「隠れる」が特に面白かった! -
2014暮れから読んでいました。
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江戸時代から戦後まで、東京で暮らした市井の人々の身に起きた不思議な出来事を紡いだ連作短篇集です。
武士の身を捨て、変わり咲きの桜作りに精魂注いだ植木職人。
世の人々を幸福にするために、究極の黒焼きを生み出すことに没頭した男。
戦争の気配が立ち込める中、輝く目で映画監督の夢を語る青年。
そんな人々の物語がどこかで緩いつながりを持ちながら流れていきます。
私たちが生きている時代は、連綿と続く一人一人の人生の積み重ねなのだということを意識させる物語でした。
本作の中によく知られる文豪が登場しますが、各連作短篇はその文豪の作品を意識して書かれたのかも…と思いました。
醸し出されるぞっとした怖さ、気配だけを残して終わる物語…。
結末がはっきりと見えない分、自分の中で増幅される不気味さと不思議さが本作の味わいを深めているように感じるのです。