茗荷谷の猫

著者 :
  • 平凡社
3.56
  • (33)
  • (81)
  • (74)
  • (19)
  • (5)
本棚登録 : 430
感想 : 116
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582834062

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 短篇集。それぞれの作品が微妙に繋がっている。江戸の末期から戦後の昭和の時代までのお話。悲しかったり、寂しかったり、ほんの少し微笑ましかったりする。

  • 「ぽけっとの、深く」と「てのひら」が好き。「てのひら」は、過去の高3進研模試で出ていたような?

  • 東京の町々を舞台に、江戸末期から第二次大戦後までの時代を背景として、庶民を主人公にした連作短編集。連作とは言ってもそれぞれの短編のかかわりは薄い。でもかえってそれによって、私とも薄いつながりがあるであろう、過去に生きた人達の人生のことをなんとなく想うことができた。特に浅草六区の映画館を舞台にした一編が気になった。

  • 江戸時代から戦後まで、江戸の巣から始まり、品川、本郷、市ヶ谷、渋谷などのそれぞれの地名に絡んだお話が連なった連作短編集『茗荷谷の猫』を読了。9つの話で構成されているが、ぞれぞれが独立してあるのではなくけれど同じ話が続いて行く訳ではなく、著者がわずかながらの話をつなげる手がかりをうまく隠し味のように埋め込んであるので、読み手はそれらに少しばかり助けられながら描かれた市井の人々の思いを追いかけて行く事が出来る。描かれている人たちは江戸や東京と言った大都市の中でつつましく暮らす目立たない人たちで、けれど目立たない人たちにも暮らしがあり、人に話せない思いがあったりするという千差万別の人の生き様への著者の愛情が感じられる小説だ。

  • なんとか時代って、いっぱいあって、
    むかーしのなんとかの時代から時代へ、
    それで今まで、やっぱ
    人で繋がってるんだよなぁー
    って、今さらのようにおもえた。

    読んでて、辛くて、さみしくて、おかしくて
    きれいに、スマートに繋がってないんだけど
    いろんな人が何かしらやってきて
    この時にも、なんらかしら
    繋がっているのかも。
    って想う。

    こんなカンジの読み物って初めて。

  • 東京のその当時の様子を書いているような小説。ザクロの話、千駄ヶ谷のタイルの話が印象に残った。多少は知っている町の知らない時代の物語。

  • 江戸から戦後までの短編連作集。その時代を生きてく人々がとても丁寧に描かれる。粋であったり自堕落だったり様々な人々。そして漂う人情感。
    いままで使ったことのない表現や言葉たちにはたと目をみはってしまった。
    町も人も映像になって、こちらに訴えかけてくるような作品だった。
    「隠れる」が特に面白かった!

  • 2014暮れから読んでいました。

  • 江戸時代から戦後まで、東京で暮らした市井の人々の身に起きた不思議な出来事を紡いだ連作短篇集です。
    武士の身を捨て、変わり咲きの桜作りに精魂注いだ植木職人。
    世の人々を幸福にするために、究極の黒焼きを生み出すことに没頭した男。
    戦争の気配が立ち込める中、輝く目で映画監督の夢を語る青年。
    そんな人々の物語がどこかで緩いつながりを持ちながら流れていきます。
    私たちが生きている時代は、連綿と続く一人一人の人生の積み重ねなのだということを意識させる物語でした。

    本作の中によく知られる文豪が登場しますが、各連作短篇はその文豪の作品を意識して書かれたのかも…と思いました。
    醸し出されるぞっとした怖さ、気配だけを残して終わる物語…。
    結末がはっきりと見えない分、自分の中で増幅される不気味さと不思議さが本作の味わいを深めているように感じるのです。

  • 9つの短編が収められた本。それぞれの短編は一つの作品として独立してますが、舞台はいずれも東京。とはいえ時代はかなりずれていて、江戸から戦後まで時間軸は広がっています。

    同じ場所で違う時代に生きた登場人物たちが間接的に、あるいは一部については直接的に関わり合い、触れ合いながら物語が作られています。メインのキーワードは染井吉野、表題にもなっている茗荷谷の古い小さな一軒家、漱石と内田百閒、といったところでしょうか。漱石の『吾輩は猫である』や内田百閒の著作のいくつかを読んでおくと、この本に仕込まれたネタに気づけて面白いのではないかと思います。

    最初のうちはちょっと読みにくかったですが、3つ目あたりから一気に面白くなり、一日半ぐらいで読了。終いには、各作品の登場人物が別の作品でどのようにかかわっていったかが知りたくなって人物相関図まで書いてしまいました(笑)

    世界観も文体も違うけど、伊坂幸太郎の『死神の精度』が好きだった人ならストライクだと思います。こういう緻密で繊細な世界を作れる作家さんって凄いですね。著者の別の作品も読みたくなりました。9作品のうち、いくつか終わり方が物足りなかったものがあるので☆は4つとしてますが、オススメです。

全116件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1967年生まれ。出版社勤務を経て、2004年『新選組 幕末の青嵐』で小説家デビュー。08年『茗荷谷の猫』が話題となり、09年回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で直木賞、14年『櫛挽道守』で中央公論文芸賞、柴田錬三郎賞、親鸞賞を受賞。他の小説作品に『浮世女房洒落日記』『笑い三年、泣き三月。』『ある男』『よこまち余話』、エッセイに『みちくさ道中』などがある。

「2019年 『光炎の人 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木内昇の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×