([に]1-1)ゆれる (ポプラ文庫 に 1-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591104347

感想・レビュー・書評

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  • うーん。暗いお話でした。。。最初はなかなか読み進められなかった。最後も唐突だった。映画を見たほうがいいのかな。

  • 映画のノベライズと言ったら妙に安っぽい話になってしまいがちだけれど、これは監督自らペンを取っていて、小説としてもとても完成度の高い一冊になっている。

    家族を捨て田舎町から飛び出しカメラマンになった、自分勝手で破天荒な弟。
    実家のガソリンスタンドを継いだ穏やかで実直な兄。

    母の一周忌に久しぶりに実家へ戻ってきた弟は、幼馴染の智恵子と兄の3人で山奥の吊橋へ向かう。
    吊橋から智恵子が転落死し、兄は自分が殺したと自白する。

    兄弟の微妙な関係を絡めながら、
    兄はなぜ智恵子を殺したのか、殺意があったのかを、語り手を変えながら探っていくミステリテイストのお話。

    文章にとても雰囲気があり、ぱっと似ている作品が思い当たらないくらい目新しい感覚だった。
    特に前半のテンションがよかった。裁判に入ってから少々崩れてしまったけれど。

    兄の本性は最後までよく分からなかったけれど、どんな人間にも極端にかけ離れた二面性があるもので、ありがちな表現で言えば魔が差したのかなあと。

    映画版の配役は弟がオダギリジョー、兄が香川さん。
    かなりいけてると思います。

    観ていないけど、裁判以降は映画のほうが勝っているのではないかなあと勝手な想像。

    田舎から出てきた、特にきょうだいを持つ人にはもっと深い感想が生まれそうな物語だった。

  • 傑作だと思う映画版を観てから数年を経て、
    今さら小説版を読んでみました。
    通常、本と映画のどちらも手を出してしまうと
    精度に大きな差が生じていてげんなりするものですが
    この作品は見事にそれを覆してくれました。
    映画、小説、それぞれが補完し合って完成品になっています。

    原作者であり監督である西川氏は、
    そもそも脚本にパワーをかけるタイプの方。
    文章自体は平易ですが、構成がよく終始緊迫感を纏わせた作品です。

    ある兄弟と幼馴染との間に起きた出来事を、
    登場人物6人の独白というかたりによって
    淡々と、客観的にあぶり出していくのです。
    映画では無駄な台詞が一切なく、観客へ思考を求めるのですが、
    小説の個々人はやけに饒舌。感情のゆれを感じることができるはず。

    事件か事故か、そんな事の真相はたいして重要でなく、
    浮き彫りにされる登場人物の心の機微から目が離せない。

    血縁からは逃れられない、と思うわたしもまた極端ですが、
    愛情と支配、羨望と嫉妬、怒り・・・
    どれもとてもリアルで、ひやりとさせられました。

    もう一度映画を観たくなりますね。

  • 人の心の奥の、覗くには重すぎる話。一気に読んでしまったけれど飲み込むのに多少の労力が必要で、読後も気持ちが重い。
    でもとても面白かった。
    解説が映画で稔を演じた香川さん。
    おそらく、感じることと見える世界が違うだろうし、映画も観てみたいと思いつつ。
    なぜ、という疑問はいつまでも持ち続けるんだろうし、説明されて納得できるかはまた別だろうなと。

  • 映画を小説化した作品。映画の方が印象に残っており、小説だけでの評価が難しい。改めて映画の素晴らしさを思い出してばかり。
    映画を見た後では読みやすすぎるが、小説だけでは情景描写が物足りないのではないかと思う。
    どちらを勧めるかと言えば、映画を勧める。

  • 再読。
    前読んだ時のこと全然覚えてなかった。
    映画見なくては。

  • 【登場人物】
    ・その人の悶々とした思考が文章に表れて,理解しにくい部分  が多い

    【ストーリー】
    ・それぞれの登場人物の目線で描かれている
    ・阪急電車に似ている
    ・結局,何がしたいのかいまいち伝わらなかった

  • 感情表現が秀逸。兄弟の絆が事件をきっかけに揺れていくことを兄、弟、その周辺人物のそれぞれの心理描写を通じて浮き彫りにしていく。
    映画も非常に再現度が高く本と共に楽しめる作品だった。

  • 映画を観てから。
    こちらの小説版は視点別に章が分かれています。そして映画の空気、世界観はそのまんま。

    解説という名の香川さんの書き下ろし「ゆれる」もあります。

  • 「この人は、私だ。大人しい驢馬のような顔をして、心に鬼を飼って居る。
    この人が、私だったのだ。そう思いました。
    足元のはるか下には、水の流れが煮え立つようにあぶくを湧かせていました。」

    ――ミステリでは無い、謎は解かれる事は無い。
    面白かったです。薄いのに、読み応えがありました。
    惹かれて仕舞うのは、兄弟をテーマにして居るからだと思う。
    親でも恋人でも無い、血の繋がった兄弟というもの。
    其れを取り扱ったテーマは星の数ほど有る。
    最近のもので例えるなら、『宇宙兄弟』。六太と日々人のような、劣等感と競争感。
    ただ、本作は『宇宙兄弟』のように前向きで、澄んだ其れではない。どちらかといえば、『SIREN』の宮田と牧野のような、歪んだ羨望と嫉妬が存在していると思う。

    殺したか、殺されたか。
    本作の真髄は其処にはないように思われる。
    稔と猛、心に鬼を飼っているのはどちらなのか、或いはどちらも、なのか。
    一見すると、二人の関係は、成功した弟と、凡庸な兄に思える。
    けれど違う。
    「心の中で賭けをした。
    あと五つ数える内に、兄が俺の方に気付き、俺に笑いかけてくれるなら。」
    「あと十。あと二十。しかし兄には、俺が見えなかった」
    十、九、八…と下がって往くなら分かるが、敢えて猛は数える数を増やして居る。兄に気付いて欲しかったからだろう。
    優秀に見得た弟の脆さ、自分を生んだ親とはまた異なる血のつながりとは何なのか、考えさせられる興味深い作品でした。

  • 子供を持つという事は素敵なことだろうけど、自分の人生に加えてまた別な人生を背負うということだ。僕は子宝に恵まれなかったが、我が子にまつわる他人のごたごたを客観的に見ていると、ほっとすることも多い。僕自身の因果は自分のことだからかろうじて受け止めて、対処していく以外ないとしても、それ以外にまた自分の業の遺伝子を引き継いだ個体が存在して、しかも僕の意思どおりには動いてくれない、海の親としての責任はある、ということを想像すると、やっぱり子供を持つということは自分の手には負えない大仕事だな、と思うのだ。

  • 東京事変の「落日」を聞くと
    この作品の空気を思い出す。

  • 一人称の使い方が面白い。

  • オダギリジョーと香川照之の映画の小説。

    吊り橋で起こった幼なじみの智恵子の転落死。
    一緒に遊びにきていた兄・稔と弟・猛が見ていた真実とは?
    事故で一件落着かと思いきや稔が急に殺害を自供…、というお話。

    映画を先に見ていたので、どうしてもオダギリさんと香川さんがちらちらと。
    でも映画の空気感はそのままで、それはとても素敵なんだけど、少し重い感じもそのままだったから、読んだ後も救われなかった。

    「勇は今たった一人で、一体どんな宇宙に生きているんだろう」
    それぞれの宇宙に生きてるって、確かに。

  • http://john615hkt.blog.fc2.com/blog-entry-31.html
    ゆれる
    西川美和
    ポプラ文庫
    233頁

     映画として高い評価を得ている『ゆれる』を西川美和監督が執筆したノベライズ本。映画の内容に関しては以前このブログで述べた通り素晴らしい作品である。本書は2007年会の第二十回三島由紀夫賞の候補作品となっている(受賞作品は「1000の小説とバックベアード」。基本的に原作を読んで映画というパターンがスタンダードだが、本書は映画の後に発売された本。順番は果たしてどっちがいいのか?


     故郷を離れ、東京で売れっ子のカメラマンとして活躍している早川猛。母親の法事のために久々に帰省し、兄の稔が切り盛りする実家のガソリンスタンドで働く幼なじみの智恵子と再会する。猛と智恵子は一夜を共にし、翌日兄弟と彼女の3人で懐かしの渓谷へと遊びに行く。猛が渓谷で写真を撮っているとき、智恵子が渓流にかかる吊り橋から落下する。吊り橋にその時いたのは稔ただ一人。落下は事故だったのか、事件だったのか?裁判が進むにつれ兄をかばう猛の心はゆれる。そしてついに証言台に立ち猛が選択した行為とは……

     最初に結論から言うと、映画を観た後にこの本を読んだ方がいい。あと映画を観たから、本を読まなくてもいいとか思わないでいただきたい。最大のポイントはやはり監督自身が執筆していることである。

     映画というのは基本的に時間に縛られている芸術作品だ。映画館のビジネスは観客単価×観客数×上映回数で決定する。基本的に2時間前後という暗黙の制約が監督につきつけられる。もちろん中には園子温監督による『愛のむきだし』のような4時間にも及ぶ大作もあるが。本という作品にすることによって、映像では表現しきれなかった、したくてもカットせざるを得なかった描写を惜しむことなく表現することができる。

     この本を読んで初めて、このシーンでこういう顔をしていたのはそういうことだったのか、という箇所がある。映像を使って表現していても、音声をゼロにすることによって想像力を掻き立てることが西川監督は上手い。情報を過不足なく私たちに伝えてくれる。

     もう一つ本書を読んで欲しい理由がある。本書の解説を映画に出演した香川照之さんが執筆している。映画の最後のシーンで香川照之演じる早川稔が弟の猛に「兄ちゃん、うちに帰ろうよ!」と叫ばれる中、通りをはさんで猛と稔の間を遮るようにバスが止まり映画が終わる。映画の中でバスに乗ったのかわからないが、解説ではバスに乗った・乗ってない両方のパターンで独自の視点で描いている。これだけでも読む価値は十分ある。最後に本稿は、映画『ゆれる』で早川稔を演じた香川照之氏が独自の視点から書いており、西川美和氏の意向と関係はありませんと書かれているところがまた良い。

  • 表現する、というのはこういうことなんだと思い知らされる。それは持って生まれたセンス。言葉のセレクトが絶妙です。

  • 映画をみるべき。香川照之の考えるもうひとつの結末はイマイチ。

  • 初めての西川美和。
    作家さんかと思ったら、映画監督さんらしい。

    タイトルの付け方が絶妙だなあと思った。
    本当に「ゆれる」心がたくさん出てくる。
    兄弟でもこういう気持ちになるものなのかなあ。。。

    映画をもとにした小説なので
    心理描写もたくさん出てきて、楽しめた。
    映画のほうもおもしろそう。

  • これは再読。最初読んだ時のような感動は無かった。
    映画を見たからイメージがすっかり映画のキャストになってしまっている。
    なんとなくもう一度映画を見たくなった。

  • 人の心の伝わらなさ 対する面とその内 面白かった 映画観たくなった。あとがきは最後に読むべき

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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