四十九日のレシピ

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591115350

感想・レビュー・書評

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  • 5歳の娘がいる男性に38歳で嫁ぎ、それから33年間家族を大切にして必死に生きてきて、そして誰からも愛された女性が亡くなってからの、残された家族の感動の再生物語です。
    女性の名前は熱田乙美、男性は熱田良平、娘は百合子。娘は大学時代の恋人で今は塾を経営する男性と結婚していて遠藤百合子という名前になっている。
    良平は乙美の葬儀後、生きる気力を無くし、百合子は離婚の危機にある。そんな二人を再生すべく、二人の若い男女が現れる。女性は乙美がボランティアで料理や家事一般を教えていた施設の生徒で井本幸恵といい、男性は近くの自動車工場で働く日系ブラジル人でカルロス矢部と言うらしい。この謎の二人が乙美の49日の法要まで関わっていき、百合子も良平も新しい生きる力を得ていく物語なんですが、どう考えてもこの二人が謎なんです。
    その謎は解明されませんが、読み終えると自分の人生に置き換えて、人生を後悔しないようにしなくてはと、あらためて思うような身につまされる物語でした。

  • 亡くなった乙美の遺言通り、四十九日には宴会を開く。
    旦那の愛人が妊娠し離婚届に判を押して東京から実家に戻った百合子。そして父と金髪の井本とブラジル人のハルミ。

    生前の乙美の周りにあった温かい人間や、暮らしのレシピ集に救われていく百合子と父の話。

    川はあの世とこの世の境目。なんかわかる気がする。

  • p.192
    テイクオフ・ボード、跳び箱の踏み切り番てあるでしょう。私たちはそれなんです。思いっきり走って、板を踏み切って箱を飛んだら、もう思い出さなくていい。
    過去を飛び越えたことに自信を持って、まっすぐに走っていけばいいんです。
    親が子を支えるように、みんな、誰かの踏切板になって、次の世代を前に飛ばしていく。

    世の中は無数の匿名のテイクオフ・ボードで成り立っている。

  • 家族を失った喪失感と、これからも前を向いて生きていく両方の感情が垣間見れた物語でした。
    乙美母さんが亡くなって突然現れた井本、そして井本が連れてきたハル。井本は生前の乙美に、四十九日まで家事の面倒と、四十九日に法要ではなく宴会をしてほしいと頼まれ、やってきたというが・・・
    最後まで謎の二人だけど、そのファンタジーさも面白い。
    四十九日に故人の年表を作成するのは、素敵なアイデアだなと思いました。
    伊吹さんらしい、温かくて、前に進んでいく物語でした。

  • 夫の良平も娘の百合子も埋められなかった乙母さんの71年の年表が
    彼女の温かい支えによって過去を飛び越えた人達の手で
    色とりどりに埋められていくシーンが
    目の前に鮮やかに浮かんで、涙が溢れた。

    乙母さんが遺した何十枚もの「暮らしのレシピ」は
    自分亡き後、家族が日々の暮らしに戸惑わないための
    ノウハウを丁寧に詰め込んだレシピであると同時に、
    四十九日に「本当に」さよならをするまでの
    遺された人々の立ち直りの処方箋でもあったのだ。

    金髪ガングロの元気娘イモと
    気は優しくて力持ちのハルミの謎に気づく時。。。

    無神経な珠子に澄ました顔で苦すぎるセンブリ茶を出すイモに
    「よくやった!」と改めて快哉を叫び、
    百合子に「キレイなねえさん」と呼びかけるハルミにホロッとし、
    「四十九日までの助っ人」と名乗って登場し
    金髪の紙人形を乗せた笹舟を手渡して去るイモに
    またしても涙が止まらない。

    ドラマ化されたらしいので、ダーリン熱田の
    「百合子、ガンバレ、ガンバレニャン」の怒鳴り声を
    ぜひぜひ聞いてみたい!
    そして、本の中の描写そのままのイラストが入った
    「乙母の暮らしのレシピカード」が
    もし発売されたら、絶対に買います♪

    • まろんさん
      円軌道の外さんも、いらっしゃいませ♪

      これ、NHKでドラマ化されたみたいです。
      百合子役が和久井映見さんだったかな?

      お父さんの詩や文章...
      円軌道の外さんも、いらっしゃいませ♪

      これ、NHKでドラマ化されたみたいです。
      百合子役が和久井映見さんだったかな?

      お父さんの詩や文章が、ノートとして遺されているなんて、素敵ですね!
      私もまねして、娘にノートを書いておこうかな。。。
      でも、本を読まない子だから、ちゃんと呼んでくれるか、かなり不安です(笑)
      2012/06/28
    • 円軌道の外さん

      ああ〜ん
      和久井映見めっちゃ好きな女優なんですよね〜♪

      つかいつの間に…

      う〜む
      NHK侮れんなぁ〜(>_<)

      ...

      ああ〜ん
      和久井映見めっちゃ好きな女優なんですよね〜♪

      つかいつの間に…

      う〜む
      NHK侮れんなぁ〜(>_<)




      ああ〜
      娘さん、本読まへんのかぁ〜(^_^;)

      あっ、それなら
      宝探しゲームの要領で
      楽しみながら誘導すると
      いけるんちゃうかな(笑)


      まずは絶対に見つかる場所に
      自分がいなくなる直前に
      ノートを隠します。

      そのノートを開くと
      娘さんの大好きな
      食べ物の在処が(笑)
      (まぁ何でもいいんですけどね)


      娘さんは食べ物につられて
      ノートに書いていた戸棚を開けると
      そこにはまたノートがあって
      今度は
      『二階のテレビの棚』
      って書いてあるんです(笑)


      次々と食べ物につられて
      家中を探し回る娘さん(笑)


      ほんで最後の最後に
      ベランダの植木の土の中から

      まろんさんが書いたノートと
      娘さんのために作った手作りのお菓子の『引き換え券』が発見されるんです(笑)
      (引き換えは事前に近所のおばちゃんか親戚の家に頼んでおきます笑)


      これならバッチリですよ〜(^_^)v
      (こういうアホな遊び好きで、よく弟に指示だしてました♪)


      2012/07/04
    • まろんさん
      宝探しゲーム☆いいかもしれない!
      お菓子には、絶対釣られてくれそうだし、
      準備をしてる間も楽しそうだし(*'-')フフ♪

      本を読まない娘の...
      宝探しゲーム☆いいかもしれない!
      お菓子には、絶対釣られてくれそうだし、
      準備をしてる間も楽しそうだし(*'-')フフ♪

      本を読まない娘のために
      親身になって考えてくださって、ありがとうございます♪
      そんな風に遊んでもらえた弟さん、幸せですね。
      きっと忘れられない思い出になってることでしょう(*^_^*)
      2012/07/05
  • 家族を題材に書かれている伊吹さんの作品の中で一押し。
    だれかのテイクオフボードになるための人生、それにほこりを持つことの価値に触れて、これから倒れそうな時の支えとなりました。

    レシピとは処方箋との意味もある。その最後のレシピを読んだ時、涙がこぼれてきました。永遠の別れは悲しいに決まっているけど、故人の偲び方をこんなカタチで文学に昇華してくださった伊吹さんに感謝です。読んでよかった。

  • 以前から読んでみたかった本です。
    妻 乙美が亡くなる前に、ひどいことを言ってしまって悔やむ夫 熱田。日々一緒に暮らしていると、優しい言葉をかけれなかったり、感謝も忘れてしまいます。
    私もついつい家族には暴言はいたりしてしまって…。こうして暮らせていることに感謝しなければと思いますがなかなか上手くいきません。
    悔やんで落ち込む夫 熱田。娘の百合は離婚になりそうで辛い状態。乙美さんの49日のレシピが、2人を助け、それぞれの道へ。
    ちょっと辛いけど面白かったです。

  • 残された家族へ
    亡くなった乙美が残した
    四十九日の暮らしのレシピ。

    そのレシピで残された家族は
    少しずつ立ち直り、前を向いてゆく。

    何気ない暮らしの中で、
    いつまでも続いてゆくと信じて疑わない
    何気ない暮らしの中で、
    些細な喧嘩がその人と交わした最後の会話
    になってしまうこともある。

    どんなに忙しくても
    どんなに感情的になっても
    笑顔で『いってきます』『いってらっしゃい』と
    送り出すことは大切なんだろうなあ。

    自分の配偶者や母親が亡くなったらー、
    その時が来てしまったらー、
    私自身も抜け殻のようになってしまうんだろう。

    しかし、残された人々は前を向いて
    歩いていかねばならない。
    なんだか最近見ている妻が小学生に
    なって夫と娘の元に現れる、あのドラマと
    伝わってくるものが似ている気がする。

    自分がいなくなっても
    これから先、残された家族が
    しっかりと生きていけるように
    前を向きなさいと
    背中を押してくれる物語。

  • 継母の乙美が急死して二週間後、百合子は夫の愛人が妊娠をし離婚を決意し憔悴して実家に戻って
    来る。
    妻に先立たれた熱田良平は食事をする元気すら無くしてした。
    そんな二人の前に現れたのが、乙美がボランティアで絵手紙を教えていた福祉施設の生徒だと言う
    『井本』

    生前の乙美から頼まれていたという『四十九日のレシピ』を実行する事にする。
    乙美は自分が亡くなった後、困らない様にと様々な沢山のレシピを残していたのだった。
    それから、良平と百合子と井本とハルミの奇妙な生活が始まる……。


    大切な人を亡くした家族が、生きる事の辛さを乗り越えて再生に向かう
    あったかいストーリー
    ほんわかし、優しく、細やかな心情を上手に描いている。
    とっても良い本だと思いました。
    素敵な言葉、考えさせられる言葉が散りばめられていました。
    でも、泣けなかった…


     ●心に響いた言葉
      ◎ 自分の年表は自分で埋めるもの
      ◎ 世の中は無数の匿名のテイクオフ・ボードで成り立っている
      ◎ 太陽に背を向け、生きる事を捨てかけた時虹は現れる。
        そして、生きる気力を養い、人が再び太陽に向かって歩き出したら、
        その背を押してはかなく光に溶けていく。

    私も、誰かのテイクオフ・ボードになっているといいな

    自分の年表は色鮮やかな楽しい年表になるといいな

  • 感想
    最初の2ページを読んだだけで、これは感動しすぎてアカンやつや、と思った。

    亡くなった継母の乙美は、夫の良平と娘の百合子を残して突然逝ってしまった。乙美は太陽のように明るい人だった。その乙美が残した49日までのレシピ。それに支えられ、残された夫や家族が生きる希望を見出す。

    最後に疑問だったのが、良平と百合子が絶望している時に、突然現れた救世主ギャルの井本とブラジル人のハルミの正体である。最後らへんで筆者が匂わせているが、実は天国からやってきた乙美と亡くなった二人目の子供だったのではないかという点。

    何はともあれ、身近にいる人を改めて大切にしなければと感じさせる温かい物語だった。

    あらすじ
    良平の後妻の乙美が七十一歳でこの世を去った。突然亡くなった妻にショックを受け、世界が彩りを失ったように良平は生きる気力を無くしていた。

    そこに乙美が手伝っていた支援施設の生徒だったというギャルの井本が現れて、乙美の遺言で49日まで良平の世話をするという。井本が現れたと同時に娘の百合子が夫と離婚すると突然、実家に帰ってくる。自分に子供ができないこと、夫が外で子供を作ったことに絶望し、生きる気力を無くしていた。

    そんな二人を乙美が残した家事レシピ、乙美の生徒の井本と、ブラジル人のハルミが温かく支え、良平と百合子が、乙美との生活を思い出しつつ、自分の人生も見つめ直し、次第に生きる気力を漲らせていく。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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