(009)夜 (百年文庫)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (155ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591118917

作品紹介・あらすじ

凍てつくような冬の夜、汽車に乗り込んだ若い娘は同席した客の荒んだ気配にたじろぐ。車中の会話に人生の悲哀がのぞくカポーティの『夜の樹』。戦後の安酒場、暗い背中をした男の哀しい出来事(吉行淳之介『曲った背中』)。家族に災難がつづき自立を余儀なくされたペンキ屋の息子ウィルは、就職口を見つけようと故郷を旅立つ。大人社会に飛びこんだ少年の覚悟と出会いの物語(アンダスン『悲しいホルン吹きたち』)。心の奥に流れるブルースのような三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 全部好きでした。
    『悲しいホルン吹きたち』では、大人にも子どもにもなりきれない青年のふわふわした部分に共感が持てました。
    "生活は広漠で空虚なもの"
    大学時代から一人暮らしを続けている私にとって、それは時折訪れる感覚です。

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    ◆収録作品◆
    カポーティ 『夜の樹』
    吉行 淳之介 『曲がった背中』
    アンダスン 『悲しいホルン吹きたち』
    -------------------------------

  • 吉行淳之介、どこかで読んだと思ったら「鞄の中身」に収録されてた短編だった。
    アンダスンは「ワイズンバーグオハイオ」の風味。カポーティの「夜の樹」は後味が不思議。

  • 『どこか物哀しい、夜の帳の情景、夜の静寂のブルース』

    列車内での不気味な夜を描いた「夜の樹」
    戦後の安酒場で出会った暗い男の告白「曲った背中」
    大人社会への旅立ち(夜明け)「悲しいホルン吹きたち」

    夜の物語は、物哀しい雰囲気が似合いますね…

  • 短編の中ではアンダスン!ただ訳はもっと違うトーンで書けたのではなかったか。

  • 一冊に、日本と世界の文豪3人の短編が収録されたアンソロジーシリーズの中の一冊。
    どの作家も初読み。どの作品も少し暗く恐い「夜」が描かれています。
    アンダスンの「悲しいホルン吹きたち」は、大人になる不安感の表現が巧みだなと思いました。

  • 「夜の樹」
    まだ若く未熟なケイが、暗く醜く愚かで理不尽な世の中にさらされる。
    生きるということも、死ぬということも、まだ理解しきれていないケイが、生きるということに必死で、苦しみや悪をもその背中にしょっている、そんな存在に出くわす瞬間の物語。
    私には、そのように読めた。
    バッグは勝手に手にされ、レインコートをかぶされたことを意識しても、なにもできないケイ。
    実に暗く危険な人生の夜を感じる。

    「曲がった背中」
    曲がるほど、その背中には何がのっているのか。
    罪悪感か。責任感か。哀れみか。後悔か。
    みんなの行くほうへ行きたがらなかった女。
    彼にもその気持ちはわかったらしいが、私にもわかる。
    そして、女は、確実に彼には一緒に来てほしかったのだ。
    関係があらわになることを恐れるより、自分を選んでほしい。
    たとえ火に襲われることになったとしても、自分とともにあることを選んでほしい。
    この状況で、自分を一人にするという選択肢など、ないという姿勢を見せてほしい。
    人垣を突き破って、空き地で振り返った女は、一瞬でそれらを問うたのではないか。
    その夜から、ずっと夜は明けない。

    「悲しいホルン吹きたち」
    少し読みにくい作品だった。
    大人はみんなホルン吹きなのかもしれない。
    品よくなんて、生きてられないのかもしれない。
    下手くそな生き方でも、みじめで馬鹿な生き方でも。
    守られた、それなりにあたたかい家庭から、一人ぼっちで放り出される不安。
    それでも、自分に与えられた部屋に安らぎを見出して、日々を重ねていく。
    最期の老人の言葉は、独りで歩き始めたウィルの人生への激励の言葉だ。
    くだらない人生を背負った男のように見える老人が、実は人生の芯をつかんだ言葉を持っている。
    そこに、この小説の深みを感じた。

  • 『夜の樹』カポーティ
    初期の作品。暗くて汚いようなものの、尋常な世間との接点を描くのは『冷血』にも通じるか。ラストはなんなんだろう。一服盛られたのか。

    『曲がった背中』吉行淳之介
    この人ってたしか宮城まり子と関係があったような。こういうテイストは日本のちょっと昔の小説には多い気がする。

    『悲しいホルン吹きたち』アンダスン
    アメリカではそこそこ有名な人だとか。この作品は中途半端な感じがしてしまうのだが。

  • 『夜の樹』は列車に乗り合わせた女性と男女二人連れの奇妙な遣り取り。二人連れが気味が悪く、読んでいて気分が悪くなってしまいました。雰囲気の作り方はさすがだと思いますが…。
    『曲った背中』は戦後の薄暗さが漂っていました。
    『悲しいホルン吹きたち』は家を出て大人になりかかった少年の話。家族と言う単位から一人外れる足元の不安定さが書かれていました。
    テーマが夜だから仕方がないのですがどれも薄暗くて重いです。

  • いくつか百年文庫を読みましたが、キーワードが無理からに感じる中、これはあらすじ紹介にある「心の奥に流れるブルースのような三篇」というのがなかなか上手いかなと思います。

    装画 / 安井 寿磨子
    装幀・題字 / 緒方 修一
    底本 / 『吉行淳之介全集』第三巻(新潮社)、『アンダスン短編集』(新潮文庫)、カポーティ「夜の樹」は新訳

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