([い]4-2)四十九日のレシピ (ポプラ文庫 い 4-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591126653

感想・レビュー・書評

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  • 温かくて、優しくて、切なくて…とても良質な物語だった。
    良平の妻である乙美がある日突然亡くなり(乙美は後妻)娘の百合子も同時期に夫の不倫と不倫相手の妊娠が発覚して実家に戻ってきた。傷心の父娘の元に、金髪のド派手な女の子・井本が突然現れて…という始まり。
    井本は見た目はギャルだけど、きっとこの父娘にとっては天使というか救世主のような存在で、彼女ともう1人現れた外国人のハルミという男の子と関わっていくうちに、だんだんと心が救われていく。
    そこには亡くなった乙美が残した様々な「レシピ」が存在している。

    作中の百合子がまさしく真っ只中であるように、人生には自分ではどうしようも出来ない辛いことがたくさんある。願い通りに進むことの方が少ないし、理不尽な目に遭うこともある。
    乙美もまた若いうちに避けようのない辛さを乗り越えてきた人で、良平と一緒になれたことがきっと彼女にとって最大の幸福だった。
    人がこの世に残せるものはそんなに多くはないと思うし、歴史に名を残せる人なんてほんの一握りだけど、目立たない小さな営みが誰かを救うことはたくさんあるのだと思う。乙美の存在や彼女が残したレシピがそうであるように。

    余韻の残るファンタジックな終わりも良かった。人をまっすぐに愛して大切にするって大事なことだな、と。
    映画化もドラマ化もしているらしいこの作品。キャストを確認したら、ドラマの方が原作に近そう。
    一時的に悪い行いをする人間は出てくるものの、本物の悪人は出てこない。一見悪く見えても、みんなそれなりの想いや事情があるのだな、と思える。
    読んでいて浄化されるような小説だったから、他の作品も読んでみたいと思った。

  • 今日が最後だと、知っていたなら。

    ありがとうを言いたい、
    謝りたい、
    聴きたいことがある、
    話したいことがある、
    ハグしたい、
    キスしたい。

    そんなふうに思う大切なひとを
    なぜ蔑ろにしてしまうのだろう。

    毎日忙しくて、
    頑張ったって報われなくて、
    世の中は理不尽で、
    どれだけ稼いでも何を買っても満たされない。

    心のどこかに潜む憂鬱を、つい身近な誰かに
    ぶつけてしまっているのかもしれない。

    そんな自分を見直そう。

    人生の終わりに残るものは、
    周りと築いてきた目には見えない関係性なのだと思った。

  • のめり込んで読みました。人間は不完全だからこそ様々なドラマが生まれ、お互い補完しながら生きている…そして時には大自然やご先祖様も力を貸してくれます。シビアで理不尽な内容もありながら、どこか温かい雰囲気に包まれています。
     
    人生の目的が生命の維持だけになっていないか?勇気を出して行動した結果、もしかすると悲しみと出会うかもしれないけど、そうしないと喜びにも出会えません。そんなメッセージも受け取りました。
     
    処女作『風待ち人』のキンコを彷彿させる乙美の存在感、亡くなっているのに凄いです。まさに誰かの心の中で生き続けているよう…。そして最後の河原での良平、井本やハルミの正体、とっても深く魂の震える作品です。

  • いい本だった。
    読後感もすてき。
    人が人を思う気持ち。
    正しい道を教えてくれるひと。
    困って、迷ってしまったときには、誰かが教えてくれる

  • 心優しい、
    というか心優しくあるためにといろんなことを
    消化していくたくさんの時間が必要なんだと感じた。

    家族を含めていろんな人のくれた
    当たり前のような優しさを貯めて
    その人は作られるのだと思った。

    浩之だけは許せん!!

    レシピを残すっていうのは存外にズルイというか
    やられるよなぁ。
    私は残せるレシピあるのかなぁ、
    いや、もう残しておかないと。

  • 母の手料理が食べたくなる。

  • 妻を亡くして気力を失った良平と、夫との問題で出戻ってきた娘の百合子。
    そんな家に突然やってきた妻の教え子井本によって妻のレシピが明らかになり、家族が元気を取り戻していく。
    読み終えて温かな気持ちになりました。
    こんなふうに、家族を幸せにしてあげられる妻、母になれる自信は全くないけれど…それでも心地良い作品でした。

  • 伊吹有喜さん「四十九日のレシピ」読了。亡くなった妻の四十九日を前に、崩壊しそうな家族の再生を描いた心温まる物語。妻に先立たれ牛乳生活を送っていた夫の良平の前に現れたのは、金髪で真っ黒な顔をしたギャル。。とても良かった。読みやすく、あっと言う間に読み終わりました。昔ながらの不器用な良平と傷心を抱えた娘の百合子の前に、妻の教え子が世話役に訪れ、妻(乙美)の一面を知る。また乙美が書き留めていたレシピから家族が少しずつ明るさと活力を取り戻していく過程が心地よい。ラストも納得の展開で気持ち良く読めた。オススメ♪

  • 生きていくことは難しい。時には、矛盾や淋しさを感じながら生きていかなきゃいけない時もある。

    血が繋がらない関係でも、血の繋がりより濃い関係があり、愛がある。それを幸せと呼ばずに、何が幸せなんだろう?

    拘る必要があるほどの不幸に、淋しさにとらわれている必要なんてないのだ。とにかく、前に進め。

  • (2018/5/23読了)
    ずっと前の、王様のブランチで泣ける本として紹介されて、チェックしていた本。
    プロローグ、第1章から第7章まで、エピローグで構成されている書き下ろし。目次は何故かない。
    妻を失った年老いた夫と、その娘の話がメインだけど、主人公は、すでに亡くなっている妻であり娘にとっては継母の乙美。生前は我が身の不幸を口にすることもなく、皆の幸せへのお手伝いをし、死んでもなお皆を幸せに導いていく。聖人君子のような人。
    悪者をとことん悪く落として最後に改心させてるところや、ファンタジーを念押しする部分(ハルミと呼んでとか、井本に最後に良平さんと呼ばせたり)があったことに、出来過ぎ感が否めない。文章の終わり方が曖昧だったり、切られていたりで、リズムが合わず、スムーズに読めなかったのも残念。星はおまけして4つ。

    (内容)
    妻の乙美を亡くし気力を失ってしまった良平のもとへ、娘の百合子もまた傷心を抱え出戻ってきた。そこにやってきたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だったという彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を伝えにきたのだった。

    • ねるねる (旧shaadi)さん
      以前、NHKでドラマ化されていて見ていたのですが、まだ原作を読んでいないので読みたいです!
      以前、NHKでドラマ化されていて見ていたのですが、まだ原作を読んでいないので読みたいです!
      2018/05/25
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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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