夫のちんぽが入らない(扶桑社単行本版)

著者 :
  • 扶桑社
3.79
  • (182)
  • (272)
  • (194)
  • (50)
  • (13)
本棚登録 : 2602
感想 : 344
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594075897

作品紹介・あらすじ

2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自伝『夫のちんぽが入らない』だ。

同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、完全版としてついに書籍化!

いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあることですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひっそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)




こだま

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • まぁーーーー、夫婦関係に年季が入ったヒビ割れのあるストーリーを期待したのに。序盤で、あっ、これは逆のやつ。あったかい話になるのではと不安がよぎった。

    筋違いの落胆は、散々ちんぽが入らなかった結婚生活の中盤にさしかかりガッツポーズに変った。よーしきた。落ちろ落ちろ。

    …もう人としてゴミだなと自分を呪う。
    実際、歪みきっていても心暖まるストーリーだった。


    作者の言う、身近な人にほど大切なことが伝えられない病。それを私の妻も患っている。彼女の苦しみを、この夫のように泰然と受け止められない。私も渇いているし、悔しいし力不足を散々悔やんできた。そんなダメ夫100%目線で読んでしまい、100%ブーメランで返ってきてさらに落胆。お釣りも出ない。

    妻に入らず風俗で紛らわす夫に対し、それでも尽くす気持ちを捨てなかった作者はバリカンを持って夫の髪を刈る。

    ── 夫の頭は、カラスに食い荒らされた玉ネギのようにデコボコになった。



    笑ったー。油断した。
    ふと漫画家のカレー沢薫先生の夫が頭をよぎる。
    なんだよ。どうしてみんな笑えるんだよ。
    笑えない自分だけが置いて行かれた気分。渇き。

    私も身近な人ほど大切なことを伝えられない病人だからなのか。そうなのか?

    そうなのか…と1%くらい思った。
    デコボコ夫婦まで、いや出来た夫まであと何冊本を読めばなれるかわからない。

  • H30.11.17 読了。

    ・タイトルが気になって、手にとった本でした。内容は深いですね。チンポが入らない理由は・・・。でも、夫婦が紆余曲折しながら、よくぞ20年も連れ添ってきましたねと感服しました。こだまさんの夫がこの本を手にするのはいつのことやら。

    ・「『どん底』を持っているだけで、私は強い気持ちになれる。」
    ・「誰とも比べなくていい。張り合わなくていい。自分の好きなように生きていい。私たちには私たちの夫婦のかたちがある。」
    ・「私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。」

  • インパクトのあるタイトルで、読む前はほとんど下ネタの本かとおもったが、そんなことはない 夫のちんぽが入らないという悩みはそれぞれの悩みに置き換えられるし、人生はそれがすべてではなく、それ以外のところでどう前向きに生きていくか 悩み続けたからこそのこの人の言葉が、悩みを抱えている人の肩の力を無意識に抜いてくれるだろう

  • ひりひりする。
    タイトルに嘲笑い、発売当時に仲の良い先輩と「ノリで」買ったことを覚えている。

    最近、家に本を置く場所がなくなってきて、整理していたときに久しぶりに手に取った。
    「もうこんなふざけたタイトルは手放そう」と思い、最後にどんなんだっけと読み返したのがだめだった。

    ああ、ひりひりする。
    この作者の生きてきた人生。分からないようで分かる、異常なようで、誰にでもありうる普遍的な生きづらさ。「普通」という呪いにとらわれて苦しむつらさ。
    「どうしても入らない」という精神性。家族との関係。
    そして、最後の手書きの迫力。

    誰の人生もみな、「名作」になるのかもしれない。ひっそりと耐えて生きてきたこの人のように。

    読み終えた後にはやっぱり、まだ家に置いておこうと思わされた。


    (そして再読すると、あの時は知らなかった乗代雄介さんの名前があとがきに載っていて驚いた。いまや芥川賞ノミネート作家…!)

  • タイトルから色物系かと思ったが、実話であり、文学的な内容でした。
    ユーモアを交えたドラマでした。
    また、少子化問題や子供のできない方の想いが込められている作品である。


    ドラマ化決定。話題沸騰!

    “夫のちんぽが入らない"衝撃の実話――彼女の生きてきたその道が物語になる。

    2014年5月に開催された「文学フリマ」では、同人誌『なし水』を求める人々が異例の大行列を成し、同書は即完売。その中に収録され、大反響を呼んだのが主婦こだまの自 伝『夫のちんぽが入らない』だ。

    同じ大学に通う自由奔放な青年と交際を始めた18歳の「私」(こだま)。初めて体を重ねようとしたある夜、事件は起きた。彼の性器が全く入らなかったのだ。その後も二人 は「入らない」一方で精神的な結びつきを強くしていき、結婚。しかし「いつか入る」という願いは叶わぬまま、「私」はさらなる悲劇の渦に飲み込まれていく……。

    交際してから約20年、「入らない」女性がこれまでの自分と向き合い、ドライかつユーモア溢れる筆致で綴った“愛と堕落"の半生。“衝撃の実話"が大幅加筆修正のうえ、 完全版としてついに書籍化!

    いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十余年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。周囲の人間 に話したことはない。こんなこと軽々しく言えやしない。
    何も知らない母は「結婚して何年も経つのに子供ができないのはおかしい。一度病院で診てもらいなさい。そういう夫婦は珍しくないし、恥ずかしいことじゃないんだから 」と言う。けれど、私は「ちんぽが入らないのです」と嘆く夫婦をいまだかつて見たことがない。医師は私に言うのだろうか。「ちんぽが入らない? 奥さん、よくあること ですよ」と。そんなことを相談するくらいなら、押し黙ったまま老いていきたい。子供もいらない。ちんぽが入らない私たちは、兄妹のように、あるいは植物のように、ひ っそりと生きていくことを選んだ。(本文より抜粋)
    商品の説明をすべて表示する

  • 学校に通って卒業して就職して、結婚して子どもを持つ、いわゆる普通の暮らしが当たり前で、それができない人は「欠陥品」。そんな価値観が21世紀の現代もどこかにまだ残っているように思うことがある。石を投げられることはなくとも、道の真ん中を堂々と歩けないような、そんな感じ。だから結婚しないんじゃなくてできない、子どもを持たないんじゃなくてできない、そういう捉え方をされてしまって苦しんでいる人がたくさんいるのだと思う。

    夫のちんぽが入らない、本当に衝撃的なタイトルで、タイトルを聞いてから手に取るまでにかなり時間がかかってしまった。でも、読んでよかった。人生は人それぞれ、価値観も、身体も心も、家族のあり方も、人それぞれ。目の前の人の考え方や生き方を否定することなく最大限尊重できる人でありたい。他人に対しても、自分に対しても。

  • ずっと気になっていましたが、やっと読めました。とても良かったです。最後まで読んで、タイトルにすごく納得しました。

    文章も読みやすく、前半は思わず笑ってしまうほど面白かったです。

  • この感想が適切かはわからないけど、すごく良かった。なぜ適切かわからないと濁すか。それは、作者はきっと自分の人生について、夫を含めて最終的には肯定的に見ているように見えるのだが、読者である私からだと主人公だけが我慢しすぎてかわいそうだと思ってしまうから。
    教員、そして家庭生活の日々の中で唯一の捌け口だった、日記を書いていたサイト。主人公はサイトを訪れた相手の欲のままに抱かれるが、ずっと後になってから最初に会った男に指摘されるまで、実はそのサイトが出会い系だと気付かない滑稽さ。たとえ主人公がその日記に日々の苦しみを綴っていても、結局はそういうキャラ作りだと思われてしまう。これってなんて酷い話なんだろう。
    酷いのは夫もだ。入らないからって自分だけ咥えさせて顔射して寝る??夫とその後一緒にお風呂に入り、顔を洗っているとかならまだ愛があるけど、そんな性行為で主人公が得るのは虚しさだけだ。
    顔射する人間は女性の尊厳を傷つけていると思う。もっとも、主人公がそれで快感を覚える性癖なら何も問題ない。しかしどうもこだまさんの文章を読むと、そこに主人公が快感を得ている描写がないのだ。だからかわいそうという感想が浮かんでしまうのかもしれない。
    主人公がセックスで存在意義を感じるのはいい。それは勝手だ。しかしなぜ主人公に関わる全ての男、そして夫は、自分だけの欲求を押し付けばかりで、主人公と共に気持ちよくなることを考えていないのだろう。どうしてそんな男に囲まれた人生でも、主人公は肯定的に捉えられてしまうのだろう。

    ここまでが、読んで悲しくなったところ。
    「良かった」というのは、多くの女性が感じるであろう心の機微を文章にしてくれたこと。私も存在意義を感じたくて、気持ちよくないセックスをしたことだってある。そのとき感じた充実感と虚しさをここまで文章にしてくれた作品は今まであまり出会ったことがない。
    そしてその二つの感情を私が抱いていたのは若かりし頃の話だ。この主人公で言えば、処女を捨てた頃合いか。決して結婚してからではない。過去には自暴自棄なり、教員になってからも傷つき辞めた私も、今では人並みの幸せを夫と得ている。
    そう、これがすべてフィクションであるなら、私は問答無用で☆5を付けた。痒いところに手が届く最高の文学だから。ただ、実際にこの日本を生きる女性の随筆だからこそ、☆5は付けられなかった。

  • 夫婦のあれこれを楽しく買いてある本かな?と思って購入。
    ぜんぜん…重〜い気持ちになりました。

    夫婦はできればSEXやボディコミュニケーション(寄り添って眠るでも良いし手を繋いで歩くでも)がある方が仲良く暮らしていけると考える私にとって(もちろん、絶対ではないし、違っても仲の良い夫婦はたくさんいると思う)、この夫婦の、『入れる』『入らない』『他の人と』という行為に、とても気持ちが悪くなった。

    精神的な事で入らないのなら、なおのこと、違う形で寄り添える夫婦でいられなかったのか…な。

    けれど、本には表せない、私には分かり得ない、いろんなことがあるんだろうな…

  • すごい、すごい、すごい小説を読んでしまいました。この題名を見た時、官能小説かと思ってしまった。違います。もうこれは純文学です。学校の先生を目指し、そして先生になってからの主人公の悪戦苦闘の日々を心苦しく読んでしまいました。こだまするほど言いたい、一気読み間違い無しの鳥肌小説、題名だけで判断してはいけない大傑作でした。

  • この作者は面白い。
    オイルを塗り続けることの健康被害について考えたり
    大仁田こそ流血すべきという筆記には
    密かにファンになりそうなほどだった。笑笑

    読み進めていくと、意外な展開だった。
    まじか、と思った

    個人的に、グッときたのは
    自殺してしまいたい人の考え方に触れることができた気がするからだ

    自殺したいと思う作者とが書いた本を
    自殺しないでと思いながら読むわたし。
    とても勉強になった。

    子供を産むってなんだろう。
    産むことが当たり前だと思っちゃいけない。
    いままでの人生で起きてきたことが当たり前だと思っちゃいけないと、学びました。

  • 2019/12/08

    ほんと初見のひとはタイトルで引いちゃうだろうと思う。わたしもそうだったんだけど、ほんと内容が良かった、大号泣。なりたい自分になれなくて、それに近づこうと努力してそれを諦めざるを得ない状況になって、諦めたくなかった思いがあったのに、それでも諦めてしまった上での後書きを読んだらほんとにつらい。ただアレが入らないってだけの安直な話じゃなくて、読んで良かった。

  • こんないい意味でタイトルに裏切られた本は初めてだ。タイトルで敬遠されてしまうのがもったいない。すごい衝撃。最高!この本に出会えて良かった!!

  • しかしインパクトのあるタイトルだ。読後感としては、色々考えさせられる予想外に重みのある作品だった。
    タイトル的に図書館にないかもと思ったが、ちゃんとあったw
    「されど私の可愛い檸檬」の書評から、この作品を知り、これからそちらも読む。

  • 図書館で借りました。
    タイトルが忘れられなかったので(笑)
    しかし、私の想像力が足りなかったのか、人生観の問題か共感まではいかなかったです。
    ただ、物理的に、心理的に、本当にどうする事も出来ずに夫婦二人の穏やかな生活を選択する家庭も、夫婦の数だけあると思う。
    そこで、別れるのもよし、このままもよし。
    それは他人が口に出す事ではない。
    当たり前だけど、案外難しい事なんだよなぁ、と私も気を付けようと思いました。

  • この本が出版されてから、本屋さんには
    若い女性の店員にこの本のタイトルをわざわざ言わせようとする男性客が押し寄せたり、
    冷やかしの電話がたくさんかかってきたそうです(アホか)
    そんな話を先に聞いてしまっていたため
    売るためならどんなタイトルだってつけてしまう出版社にあまり良い印象を持てずにいました。
    もともと同人誌に掲載されたと言うこのお話。
    このタイトルをつける必要性はどこにもない内容だったけれど
    このタイトルでなければ売れなかっただろう。

    実際ここに書かれているのは『入らない』ことなんて
    たいしたことではないと笑えてくるくらい
    生きることに苦労を重ねる夫婦の話だ。
    とても読みやすくユーモアのある文章なので
    うっかりすると何か感動的な話を読んだ気になってしまうが
    夫婦が流した血と涙の重さはズシンと心に響いた。

  • 話題の本なので図書館でかなり待って借りた。

    一気に読めたけど後味すっきりしない終わり方。
    教師って大変なんだなって思った。教師だって1人の人間。それぞれの背景があるんだなぁと思った。

    生まれた環境は選べないことの残酷さを感じる。毒親や閉ざされた集落。荒れているこどもたち。

  • このストレートなタイトルもあり、話題になっていることは知っていましたが、ひょんなことから手に入り、読み始めたら一気に終了。
    タイトルから想起されるイメージとは裏腹(どんなイメージなんだ)に、内容はとても真面目。
    母娘関係、男女・夫婦関係、性愛について、学校教育の問題、教師のおかれた現状など、ずっしりと重い問題なのだが、軽妙な筆致でずんずんと読ませてくれる。
    タイトルに臆することなくぜひ手にとってみて頂きたい一冊。

  • 仕事のできる彼は家庭の事で人に言えない悩みを持っているかもしれず、いつも明るくて優しい彼女は自分の性別に違和を感じているかもしれず、責任感が強く、いつも人に優しくありたいと願っている担任の先生は、ちんぽが入らないのかもしれない。
    いつだって人を傷つけるのは、想像力の無さから生まれる悪意の無い一言で、そんな言葉で傷ついた人を救ってくれるのは、世の中のふつうを押し付けず、ありのままを受け入れてくれる人の存在なんだと思う。
    話の内容は重いが、軽妙な語り口でとても読みやすい作品。タイトルで忌避せず、是非多くの人に読んでほしい。きっと明日から少し人に優しくなれる。

  • 世の中には色々な夫婦がいる
    その中でもかなり稀なちんぽが入らないという現象
    それをきっかけに伝えたい言葉が積み重なる
    当たり前が当たり前でない人はたくさんいて、当たり前と思っている人はそれを難なく口にする
    それを受け止める側の気持ちはわからない
    私にもある
    そして逆に言ってしまっていることもある
    言葉も人も難しい
    何事からも逃げて、関わりたくないと思う日もある
    それでも、どんな風になっても一緒にいるという選択ができる夫婦は強いなと思った
    うちはそんな夫婦になるのだろうか
    なりたいと思うのか
    色々考えさせられた

    • QAZさん
      書き口は柔らかくて、面白い感じなのに、胸が苦しくなりました。
      ほんと、夫婦って、誰でも何かしら抱えているのかもしれません。
      書き口は柔らかくて、面白い感じなのに、胸が苦しくなりました。
      ほんと、夫婦って、誰でも何かしら抱えているのかもしれません。
      2017/09/14
  • 確かにちんぽが入らないある夫婦の、性生活が成り立たない話でもあるが、いわゆる普通に働くとか普通な家族に「入らない」、いや「入れない」話でもある。
    「普通」なんてものはないのだがみんなのその共同幻想みたいな形があると勝手に思い込んでいる。僕らはそこから逸脱することに外れることを恐れている。主人公であるこだまさんとその夫はそのことからある意味では逃避する。できないことはできる人やことへ代替行為に転換するしかない、そういうふたりの二十年にわたる話なのだが、読むことでなにかに悩んでたり病んでしまった、病んでいる人たちの癒しというか救いになるだろうし、その側面は間違いなくあると思う。
    雪だるま式にもっと広がり売れていく一冊になると思う。読みながら『統合失調症がやってきた』を思い出したりした。

    ぼくらはこうならねばいけない、世の中はそうなっているみたいなことに惑い踊らされて、冷たいナイフが知らぬまに背中に突きつけられている。だから、その枠からはみ出さないようにして自己保全に向かう。しかし、その刃先は背中に当たってるだけで差す気はないのかもしれないし、駆け出してしまえば刃先は届かないかもしれないし、やっぱり追い付かれて突き刺されるのかもしれない。それはすべてのことが関わるのでみんな同じ結果にはならないのだが。
    しかし月日が経って笑える話になってもその当時は笑えないからなんとか生き延びるしかない。このタイトルが今年前半の出版界での大きなトピックになるんだろうな、普通の私小説は今年これにはもう勝てないと思う。

  • 驚きのタイトルですよね。独特なネーミングセンスだと思います。ただ、そのおセンスのおかげで、年頃の娘がいる我が家の本棚には並べる事が出来ず、電子書籍にて購入しました。

    夫のちんぽが入らないのは、この夫婦にとっての1つの問題・・・というか1つの”事実”であって、その他に様々なことが起こります。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/01/12/075658

  • 現代版「人間失格」とでも言えるような1冊でした。面白かったです。人に言えないことを抱えて、それでもなんとか人間のかたちを保ちながら生きている。そんな素敵な夫婦だと思います。

  • 悲しいとも、切ないとも、愛しいともちがう
    わからないけど、著者が目の前にいたら、
    抱きしめたかったかもしれない

    無邪気に何かを聞くこと、
    話すことが、
    すこしこわくなった。

  • あるいはこれが小説なら、「救いがない」の一言で片付けてしまうかもしれない。しかしこれは1組の夫婦の人生であって、他人がどうこうと批評したり、まして結論づけたりできるものではないと思った。

  • タイトルからは想像できない、苦難の人生。でも、共感

  • いわゆる普通に生きていくことの奇跡とか困難さ。大体普通ってなんなんだっていう•••

  • すごかった。読んでよかった。
    言葉にするのを躊躇うようなタイトルだけど、内容はさらに衝撃的。

    性交渉できない夫婦関係に加えて、あこがれだった教員としても上手く行かず、精神病を煩いながら、親や世間に普通を押し付けられながら生きていく筆者の、重たい人生が綴られます。
    重いだけではなく、自虐的なユーモアもあるので、クスッと笑えてしまうところも多い。真面目に読んでるタイミングでズルイと思いました。
    癖になる文章でした。

    以前読んだコンビニ人間を思い起こさせるような感覚がありました。
    語る人もズレているかもしれないけれど、その人に「普通」を押し付けて追い詰めていく構図がそう感じさせたのかも。

    結婚や子育ては人を成長させるし、とても貴いものではあるけれど、この世の中には様々な事情を抱えた人たちがいて、それが出来ない人もいる。
    歪みがあったり、健全ではなかったり、そういうことがあると正常化しようとする人は多いのだけど、歪むことでバランスをとっている人もいるし、そのあり方でないと生きていけない人だっている。
    ここまで壮絶ではないにしろ、この人の辛さは共感できる部分もあったし、自分ごとで気づくことも多い本だった。

    兄妹のように寄り添う夫婦のあり方に、惰性ではなく、切れない繋がりがあって一緒にいるのを感じた。
    愛だの思いやりだのとも少しちがった寄り添い方で、お互いを尊敬している部分も確かに感じて…本人たちにしかわからない感覚もあるんだろうけど、こういった夫婦のあり方は新鮮に感じました。

    胃にくるような重たい話です。
    こんな夫婦もいるんだという事実を知れてよかったと思うし、世の中の「普通」から外れて苦しむ人や、人に言えないことを抱える全ての人にとっても読む価値のある本だと思う。

  • 本屋に平置きされていた時題名が気になり図書館に予約しました。もっと軽くHなお話かと思いきや、とても重たいお話でした。とはいえこだまさんの書き方がそれを感じさせなく、たとえもとても面白くあっという間に読み終えました。夫婦とも教師といえど教師と思えないような私生活で、また教育者の厳しさ大変さがよくわかりました。子供のころ友達がまったくいない方がこんな風になるものなんだということにも驚かされましたが、生き方や考え方がとても爽やかなかんじがして、本当に自分の価値観だけで語ることの無意味さを感じましたし、人に押し付けることはせず自分の大事なものに正直にまっすぐでいたいなと思いました。

  • ''でも私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。
    人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから。''
    (本文引用)

    著者は自分の育ちや背景全部をさらけ出した上で、問いかけたかったのだと、これが言いたかったのだと、最後まで読んでわかった。
    夫婦はセックスをする。
    夫婦は子どもを産む。
    それって当たり前なの?
    それができない/しない夫婦は変なの?可愛そうなの?と。

    たぶん「夫婦が子どもを産む」ことだけじゃない。世の中には「それが自然」というどこか強制力をはらんだ空気が様々な場面でそこかしこにある。
    少なくとも私はそんな空気に当てはめられたくないし、無条件に当てはめることもしない人間でありたいと思った。著者のいう通り、人には人の考えや事情があるのだから。

    あと思ったのは、
    大多数の人ができることが、自分にはできない。
    それってその行為ができないことによる実害を被るだけじゃない。自尊心まで傷つけられるのだということ。
    そしてそこから自分に入った亀裂のような傷は、関係ないことのダメージでも深くなり、膿んでいく。時に自分で自分を攻撃しながら。
    そんな私自身にも身に覚えがあることを改めて突きつけられた気がする。

    途中、読んでいて正直しんどかった。
    でも読んで良かったと思う。
    自分たち夫婦のあり方は時間をかけて自分たちで見つけていこう。そう思った。

全344件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

こだまの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×