- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784622076919
作品紹介・あらすじ
グローバリゼーションで世界は不平等になったのか?ローマ帝国の所得格差はどれ程なのか?数々の思い込みを数字で覆し、精確に理解するための必修知識。
感想・レビュー・書評
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2017.10―読了
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不平等というテーマを非常に簡潔にわかりやすく分析した一冊である。序盤は文学作品の登場人物についての考察もあり、面白さもある。しかし庶民向けの本であり、内容は深くない。
国家間格差と国家内格差についての現状を非常にわかりやすく伝えている。国家間格差ゆえに増加する移民は増加の一途をたどり非常に深刻な社会問題となっている。ラテンアメリカ、アメリカ、中国とインドの2大国家、アフリカにEU、グローバリズムでの世界格差拡大と9年前に出版された本でありながら、今日の格差についての世界情勢を的確に描写しており、とても発見の多い本だったと感じた。 -
込み入った「不平等」というテーマを大変読み易く纏めているのが素晴らしい。歴史や文学、そして現代的な諸課題を例に出しつつ26のストーリーで様々な考察がなされる。第一章ではもしアンナ・カレーニナがアンナ・ブロンスカヤになったらという仮定で不平等について考えていてとても興味深い。EUやアメリカ、アジアなどでどのような地域差があるのかといった視座も示唆に富んでいる。総じて、個人間と国家間で次元の異なる不平等が存在すること、グローバル経済の文脈の中で国家間の不平等が重要視されない傾向があることを軸に話が展開していた。
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社会
歴史
経済 -
世界銀行のエコノミストによる、経済格差について書かれた本。短い紙面の中で歴史を含めた事実を簡潔にまとめ、わかりやすく説明している。参考になる表現が多かった。
「第一の目的は、読者に楽しい読書の時間を過ごしてもらい、読書の喜びを通じて新しい事実を知り、新たな視点から物事を見てもらうことである」p9
「今日では一般に「80対20の法則」と呼ばれているこの法則によると、20%の人々は結果の80%に責任があり、逆に80%の人々は結果の20%にしか責任がない」p16
「(一次大戦前のブルジョワ)富裕層は貯蓄の「担い手」としても有望な投資家としても、不可欠な存在ではないと思われる。むしろ寄生虫のようなもので、何もしなくても利子で暮らしていけたのだ」p24
「(社会主義)均一化は、より懸命に働き、より多く学ぼうとするインセンティブをすべて、あるいはほとんどすべて奪ってしまう。もちろん、起業家精神など論外だった」p60
「所得の均一化は、個人の生産性を高めるインセンティブをすべて奪い取ってしまう。何の見返りもないなら、より一生懸命働く理由があるだろうか」p60
「不平等の研究は、特に裕福な人々からは歓迎されない。著者はかつて、首都ワシントンの名門シンクタンクの幹部に言われたことがある。シンクタンクの理事会が、所得や富の不平等をテーマに掲げた研究に資金提供する可能性はまずないだろう、と」p84
「1820年頃、英国とオランダは世界で最も裕福な国だったが、当時最も人口が多くて最も貧しかったインドや中国の3倍ほど豊かなだけだった。ところが今日、最も豊かな国と最も貧しい国を比較すると、100対1ほどの比率となる。もはや世界で最も豊かではない英国と、過去30年間にすばらしい経済成長を遂げている中国を比べてみても6対1、つまり2世紀前の2倍にまで差が開いている」p96
「(貧しい国の有利さ)(貧しい国は、)豊かな国々で成熟した技術を貧しい国々は比較的低いコストで取り入れて、必要とあれば模倣し、技術的に追いついていくプロセスを開始することができる。対照的に、豊かな国々は技術的な障壁を新たに突破しなければ成長することはできない。すでにあるものを模倣するのは簡単だが、新たに発明することはより難しい。だから貧しい国々の成長率は、豊かな国々の成長率よりも高いのである」p100
「移民の流入は一般的には反動をもたらす。なぜなら移民流入は受入国の国民の仕事を奪い、賃金を引き下げ、そして何より重大なことに、異なる文化的規範を持ち込むことになると考えられているし、実際にそうなるからだ」p119
「1820年のグローバルな不平等はジニ係数50だったが、1910年は61に上昇し、1950年は64、1992年には66に達した。産業革命以来、グローバルな不平等は常に拡大してきたが、その拡大率は縮小傾向にあった。ところが過去20数年間、不平等は上昇に転じ、極めて高い値を保っている」p146
「世界の人口の1.75%にすぎない最も豊かな人々の所得が、最も貧しい77%の人々の所得と同じである」p148
「(グローバリゼーションのトリレンマ)①グローバリゼーションが継続する ②平均所得の国家間格差が巨大で、かつ拡大する ③労働力の国際間移動が厳しく制限されたままである、これら3つの条件を永久に維持することは不可能である」p150
(「トリレンマ」は、元々ハーバード大学 ダニ・ロドリックが唱えたもの)
「世の中には3つの嘘がある、嘘、真っ赤な嘘、そして統計だ。(マーク・トウェイン)」p157
「同盟が存続するためには、加盟各国の生活状況に幅広い類似性が存在していなければならない」p169
「国家を最も高い富裕度に至らしめるためには、平和、簡潔な税制、寛容な司法制度、以外はほとんどない(アダム・スミス「国富論」)」p193 -
原題:THE HAVES AND THE HAVE-NOTS: A Brief and Ideosyncratic History of Global Inequality (2010)
著者:Branko Milanović
訳者:村上彩
【書誌情報など】
四六判 タテ188mm×ヨコ128mm/240頁
定価 3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-622-07691-9 C1033
2012年11月22日発行
史上最高のお金持ちはだれか? グローバリゼーションで世界は不平等になったのか? 現代のアメリカと古代ローマ帝国の所得格差はどれほど違うのか? などなど、数多くの思い込みを数字で覆し、精確に理解するための必修知識を与えてくれる一冊。
「あなたは世界の所得分布のどの辺りにいるのだろうか。J・オースティン『高慢と偏見』のダーシーや、アンナ・カレーニナはどうだろうか。アウグストゥスはビル・ゲイツよりも金持ちなのだろうか。中国が、ソヴィエトやユーゴスラヴィアのようにバラバラになるかもしれないのはなぜだろうか。所得と富の偏在になぜ注目すべきなのだろうか。著者は25年にわたって世界の不平等を研究してきた。本書は不平等の『アラビアン・ナイト』であり、歴史、文学、世界各地の事例が満載だ。持てる者にとっても、持たざる者にとっても、必読、発見の一冊」
――アンガス・ディートン(プリンストン大学 経済学・国際関係学教授)
「全世界をまたにかけ、時間を越えて旅をする、楽しみ満載のこの本で、経済的不平等という深刻な主題について学んでみよう! 著者は数々の魅力的なお話を通して、所得と富の不平等――そして、その概念、計測、変化、生活における役割を、正確さを失わずに、バランスよく説明している。旅先にも持っていけるし、教室でも使える、とてもすばらしい一冊」
――トマス・ポッゲ(イェール大学 哲学・国際関係学教授)
[http://www.msz.co.jp/book/detail/07691.html]
【目次】
献辞 [001]
題辞 [002]
目次 [003-006]
はじめに 007
第1章 不平等な人々――国家内の個人の不平等 013
社会の所得水準に応じて、不平等はどのように変化するのか 不平等は経済効率にどのような影響を及ぼすのか 不平等と経済的正義 不平等の測定
1の1 ロマンスと富
1の2 アンナ・カレーニナはアンナ・ヴロンスカヤになれたのか
1の3 史上最高のお金持ちは誰か
1の4 ローマ帝国はどれほど不平等だったのか
1の5 社会主義は平等主義だったのか
1の6 パリに住むなら、どの区に住む? 13世紀なら? 現代なら?
1の7 財政再分配で恩恵を受けるのは誰か
1の8 複数の国はひとつにまとまれるか
1の9 中国は2048年まで生きのびるか
1の10 2人の不平等研究者、ヴィルフレド・パレートとサイモン・クズネッツ
第2章 不平等な国々――世界の国家間の不平等 092
2の1 なぜ、マルクスは道を間違えたのか
2の2 今日の世界はいかに不平等か
2の3 「生まれ」は所得の決め手か
2の4 世界は要塞都市になるのか
2の5 ハラガとは何者か
2の6 オバマ家3代
2の7 脱グローバリゼーションで世界は不平等になったのか
第3章 不平等な世界――世界の市民の不平等 136
グローバリゼーションとグローバルな不平等
世界を背負うクジラたち
長時間かけて変容してきたグローバルな不平等
グローバルな不平等は問題なのか
グローバリゼーションのトリレンマ
3の1 あなたは世界の所得分布のどこにいるのか
3の2 世界に中間層は存在するか
3の3 アメリカ合衆国とEUの違いは何か
3の4 アジアとラテンアメリカが鏡像関係にある理由
3の5 試合が始まる前に、勝者を知るには
3の6 所得格差と世界金融危機
3の7 植民地支配者は搾取の限りを尽したのか
3の8 なぜ、ロールズはグローバルな不平等に無関心だったのか
3の9 グローバル経済と地政学
参考文献 [xxvi-xxxvii]
原注 [vii-xxv]
索引 [i-vi] -
170114 中央図書館
わずか数年前の本だが、格差の問題は現在さらに注目を集めるようになってきている。 -
人間心理と統計は、不平等論を見誤る。人間心理とはすなわち資本論が典型的な例。人は何に対して平等価値観を持つかを正しく読み切れなかったために、マルクス主義は衰退した。統計については本書の中間層について言及した部分がすべてを語る。すなわち、「粗末な小屋に不衛生な状態で住み、所得は不安定で必要最低限の生活をするのがやっと、子どもを学校にやることはできないし、家族に適切な医療サービスを受けさせることもできない。そんな人を、携帯電話を持っているという理由だけで、想像上のグローバルな中間層に分類したところで何の意味もないのである。」まったくその通り。
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読み応え十分。国と国との不平等、国内の不平等はなぜ解消されないのか、10年前、100年前、1000年前と比べて、格差は小さくなったのか、大きくなったのか。世界の格差はどんなものなのかなど、経済学的解説と、事例紹介を織り交ぜたとても分かりやすい本。「格差是正」とか「我々は99%だ」等の発言についても自分の考えで評価できるようになるとても良い本。「年収は住む所で決まる」を次ぎに読む予定で楽しみ。
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第1章 不平等な人々―国家内の個人の不平等
第2章 不平等な国々―世界の国家間の不平等
第3章 不平等な世界―世界の市民の不平等