片手の郵便配達人

  • みすず書房
4.00
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感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622079637

作品紹介・あらすじ

ロシア戦線で左手を失い、故郷の山あいの村で郵便配達人として働く17歳のヨハンを主人公に、同じ年でドイツの敗戦を経験した作者が自分の生きてきた時代が犯した過ちを正面からみつめ、誰もが等しく経験せざるをえなかった「戦争の本当の姿」を渾身の力をこめて描く。

感想・レビュー・書評

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  • 雑な終わり方を強いるなよと身体の中で声が出た。そして嗚呼これが戦争の不条理と諭してるのだと息を吐く。七つの村を廻る配達人と村人は人間味と四季に溢れてた。一瞬で変わり果てる残酷さ。思考不能の戦争よ無くなれ。

  • 「ロシア戦線で左手を失い、故郷の山あいの村で郵便配達人として働く17歳のヨハンを主人公に、同じ年でドイツの敗戦を経験した作者が自分の生きてきた時代が犯した過ちを正面からみつめ、誰もが等しく経験せざるをえなかった「戦争の本当の姿」を渾身の力をこめて描く。」

    戦時下で教育を受けたヨハンは、「年長の少年たちが祖国を守るのは当然の義務だ」という先生の話を信じ、入隊を心待ちにしていた。ところが戦地について二日目に左手を失い、除隊。今では郵便配達人の仕事をしている。郵便の中には、「黒い手紙」と名付けられている戦死通知の手紙がある。国は英雄的な死というが、家族にとっては身内・家族の死。それを届けるのは重い仕事で・・。

    「戦争は、個々人の気持ちより、国家を優先するのです。国民は国家が勝つための道具にすぎない。それが戦争です。」(『10代のためのYAブックガイド150!2』の紹介文より抜粋)

  • 翻訳の問題なのか読み慣れないだけなのか、地名と人名が多くて登場人物を把握し切らない&街の描写が少なくてイマイチイメージが掴みにくい&何故か小説の起伏を数カ所に纏める(なぜこの起伏とこの起伏を被せた?!が読み終わっても理解できないものが多い)のがうーん...というポイント。

  • 4.15/180
    『ナチス・ドイツのポーランド侵攻によって始まった第二次大戦。その終盤、間に合わせの訓練を受けただけでロシア戦線に送り込まれた17歳のヨハンは、左手を失って故郷の山あいの村へ戻り、郵便配達人として働いている。
    ある時は戦地の夫や息子、兄弟と彼らの帰りを待ちわびる家族をつなぎ、ある時は〈黒い手紙〉によって彼らの死を知らせるヨハン。臨月のおなかをかかえて夫を待つ妻、意気揚々と出征していった十代の息子を案じる母、総統が最終勝利をもたらしてくれると熱狂的に信じる娘。戦争に、ヒトラーに批判的な者もいる。ヨハンとおなじく傷病兵として帰郷した若者、ポーランドやウクライナからの強制労働者。そして、ヒトラー・ユーゲントのリーダーからSS隊員になった孫の戦死を受け入れられず、訪れてくるヨハンを孫オットーだと思い込むようになる老女……
    若いヨハンの誠実さ、温かさは人びとの心を開かせる。みながヨハンに不安、悲しみをあずけ、それをヨハンは受け止める。恋人イルメラとのつかの間の幸福、ドイツ降伏に続くささやかな平和。その後にヨハンを待っていたものは……
    自分の生きてきた時代が犯した過ちを正面からみつめ、戦後生まれの世代、21世紀に生まれた若い世代に向けて書きつづけてきたパウゼヴァングの最新作。』
    (「みすず書房」サイトより)


    原書名:『DER EINHÄNDIGE BRIEFTRÄGER』
    著者:グードルン・パウゼヴァング(Gudrun Pausewang)
    訳者:高田 ゆみ子
    出版社 ‏: ‎みすず書房
    単行本 ‏: ‎248ページ
    発売日 ‏: ‎2015/12/22

  • 結末に思わず声が…。しかしながら、この結末がまさに戦争の深い哀しみ、不条理を表しているかのようで、かなりこたえた…

  • あ~~なんてこと!!

    タイトルにわしずかみされ
    表紙に惹かれ

    1年ほどの期間
    厳しい冷たい激しい冬を超え
    驚きも
    喜びもあり
    これからって時に

    まさか、なんてこと!!!!

  • 〈ただ「理不尽」を感じ、涙するだけでよいのか〉繁内理恵『戦争と児童文学』 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/news/topics/09066/

    「片手の郵便配達人」 | eiko hanamura (2016.7.19)
    http://www.eiko-hanamura.com/essay/1914/

    片手の郵便配達人 | みすず書房
    https://www.msz.co.jp/book/detail/07963/

  • 見事に「静謐な文学の内に秘められた戦争の不条理さを訴える文学」だと感銘を覚えた。古今東西問わず、声高に訴える文学はあまたあるが女性でありながら「恒久平和」を死ぬまで己が勤めと思い続けている魂に打たれる。

    フィクション故、万人に受け入れられるような普遍性のあるストーリー・・心現れるような美しい文体、アダルト文学と言ってもいいような平易な文章が好ましい。
    17歳という人生の出発点で受けたダメージに挫けることなく立ち上がり、すがる母の愛も失い、最後には愛するひとすら去って行った彼。余りにもというような惨い運命の選択肢すら、受け入れようもない出来事。
    パウゼヴァングはここまで厳しい事実を彼につきつけることにより、戦争の惨さ、降り注ぐ雨つぶの如きものとして後世に伝えたかったのだろうか。

    郵便配達人と言えば『イル・ポスティーノ』の彼、中国映画の「山の郵便配達夫」を思い出す。どの人物も「定点観測」に立つ自身の任務を果たすことで人々の日常を見つめ、伝えてくれている。

    70年かけて伝えてくれている筆者の熱い言葉に私は首をたれた~日本も独と同じように周辺諸国に非礼な数々をなして来た。その事実とどう向き合ってきたのでしょうかと・・向き合ってきていないと、私は思います。

    これが真実の姿だと。

  • 第二次大戦末期のロシア戦線で左腕を失い、故郷ドイツの山あいの村で郵便配達人として働く17歳の青年ヨハンの物語です。ヨハンの郵便物には「死亡通知書<黒い手紙>」の配達があり、戦地からの帰りを待ちわびる村人たちの慟哭の叫びがこだます、逃れようのない戦争の悪夢の日々が描かれていきます。熱狂的なヒトラ-支持者、SS隊員の孫の戦死を受け入れずにいる老婆、ポーランドやウクライナからの強制労働者など戦時下に生きる人々のエピソ-ドと衝撃的な結末は、敗戦国ドイツが背負った贖罪の物語として、胸が締め付けられる物語です。

  • 本屋で見つけて気になっていた。
    戦争中の日常が静かに描かれる。
    みんな普通そうに見えるが、普通じゃない。
    いや、普通だと思っているだけだ。
    普通に人を殺すし、傷つけるし、
    人は傷つけられるし、殺される。
    読みなおした文字列になんともいえない気分になった。

     

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